プリディクション - 第20話
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「――お前を創ったクソ魔術師は、今、どこに居る?」
喧嘩腰にウィジャ盤へ告げる雷瑚先生に、あたしも、そして大井さんも、暫く何も言えなかった。口を開いたのは、数秒後……何の反応もないウィジャ盤、およびプランシェットに耐えかねたらしい大井さんだ。
「あの、雷瑚先生。そんなこと聞いても――」
「――見つけた」
返事するわけないと思います、と大井さんは言おうとしたのだろう。だが、その言葉を遮るように、先生は小さく呟いた。その声は鋭く、しかしその顔には小さな笑みが浮かんでいて、あたしはその横顔を、まるで犬のようだと思った。
獲物の臭いを嗅ぎ取った、大型の、獰猛な狩猟犬。
「怖い思いさせちまって悪かったな、遥。だけど、安心しろ。もう大丈夫だ。
……そうだな、約束してやるぜ。あと三十分もしない内に片は着いて、お前の呪いはぶっ壊せる筈だ」
先生は、低く、尚も鋭い声で、大井さんにそう告げた。直後だった。
先生の掌から、眩い青紫色の輝きが放たれた。ガン、という強い衝撃音と共に、先生が押さえつけていたプランシェットの欠片は、そしてその下にあったウィジャ盤は、バラバラに砕け散る。
「えっ、えっ? い、いま何したんですか?」
「ああ……承諾なしにやっちまったな、すまねえ。見ての通り、お前に予言――っつう下らねえ触れ込みで呪いを掛けた装置を、ちょっくらぶっ壊した。これで『向こう』もバッチリ察しただろ……敵がうーちゃんだけじゃねえってな」
ふらり、と、先生が立ち上がった。脇腹を押さえている。プランシェットの欠片が貫通したのだから、当然だ。重傷であることに疑いの余地なんて無くて――だからあたしは、半ば怒り気味に立ち上がった。
「先生、やっぱり駄目です。坂田先生が大変なのかもしれないけど、その体でこれ以上動くのは――」
「遥、確認してくれ。部屋の隅に居た女の子ってのはまだ居るか? 手の中のプランシェットはまだ動くか?」
「先生!」
あたしの言葉を無視するように、大井さんへ視線を移す雷瑚先生へ、あたしは批難の声を上げた。だが、先生はポンポンとあたしの頭を叩くだけだ。あたしは尚更、頭にきた。無視はあんまりだ、無視は!
「先生! 今すぐ病院に行くべきです!!」
「頼む遥、栄絵がお怒りだ」
「ええっ、えっと、あー、その……お、女の子! 居ません! プランシェット! 動かないです!」
「大井さんも! 答えてる場合!?」
「ご、ごめんなさいごめんなさい! もうわたしどうしたら――」
「あー喧嘩すんな喧嘩すんな。それから栄絵、お前に頼みたいことがある」
誰のせいで、と言いかけたところで、先生の体がぐらりと揺れた。慌ててその体を支えようとしたあたしだったが、先生はそれを狙っていたらしい。
先生はあたしの両肩を持って、くるりとあたしの体を半回転させた。それから。
「あたしを背負ってくれ」
一切の遠慮なく、あたしの背中に覆い被さった。
「……はい?」
「真面目にすまん。巻き込みたくないのはヤマヤマなんだが、何せちょっち体が言う事を聞かなくてな。方向は背中から指示するから、何とかあたしを敵のところへ連れてってくれ。なぁに大丈夫だ、代わりと言っちゃなんだが、何があっても、あたしはお前を護る」
真面目に動けないのに? 守る? いやいや。
あたしは思った。それは『無茶』というものだ。そんな火中の栗、井戸の底の亡霊を拾いに行くような真似を、誰が好き好んでするだろう? 例えそれが、大恩ある先生の頼みであったとしても、だ。
「少しの間でいいんだ。あたしゃ頑丈だし、多少は治療術の心得もある。少し休めば、まだ暫くは動ける筈だ。だから、少しだけ――」
「行きましょうか、先生! どこへでも!」
あたしは力強く言い放ち、先生を背負った。背中越しに感じる先生の柔らかな体躯! 無茶を言ってもらえる関係で良かった! この感触を味わえるのであれば、あたしは地獄の大将とだってランバダを踊ってみせる!
「じゃ、しっかり掴まっててくださいね! まずはどこに行きますか!? 教会ですか!?」
「あー、いや、うん、悪いな、だがノリが良くて助かる。じゃあとりあえず校舎の外に――」
「承知しました!!」





