表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コードレス~対決除霊怪奇譚~  作者: DrawingWriting
コーダー
27/212

コーダー - 第4話

「入れねえ」


「参ったな。『開いているのに入れない部屋』か。厄介なことを」


「引き籠るのに最適だな。……あーへいへい、悪かったよボス、真面目にやるっての」


 磐鷲は一つ溜息をついた。それから、暖簾の向こうに見える女性の足に向けて声を掛ける。


「解除してくれませんかね。あんたの仕業でしょう」


 女性は何も返さない。晶穂は数歩後ろに下がった。そして「ちょっと退いてくれ」と磐鷲に告げるや否や、軽やかに前方へジャンプする。


 磐鷲はその光景をじっと見つめていた。白衣と金の髪をたなびかせてリビングルームへ跳ぶ彼女の体躯は、暖簾をくぐる辺りで完全に床から離れていた。言い換えると、彼女はその瞬間、間違いなく宙空に居た。


 にもかかわらず。


 次の瞬間、晶穂の体は百八十度反転していた。


 着地したのは、元居た廊下。磐鷲のすぐ傍だ。彼女は暫く無言だった。無言のまま姿勢を正し、やがてまた、磐鷲の腹をポンと叩いた。


「何で俺の腹を叩く」


「日常を確かめるためさ」


 無視しよう、と磐鷲は決意した。そのうち飽きるだろう。


「それはともかくとして、だ。ボス、これどう思う?」


「これ、とは?」


「分かり切ったこと聞き返すなや面倒くせえ。『他者を部屋に入れない』ってコレ、魔術なのか? 魔術にしちゃあ、やけにスケール小さえ気がするんだが」


「案件前の下準備は入念にしろ、といつも言ってる筈だが」


 つまり、魔術ではない。確かに似てはいる。しかし、その呼称は正確ではない。


「これは『陰陽術』だ」


「せいかーい」


 気の抜けたような陰陽師の声が、リビングルームから響いた。




 これが、昼下がりのマンションの一室で行われた、地味というより他にない、小さな戦いの幕開けだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ