ホロウ - インターミッション
数百年前、この地に一艘の船が流れ着いた。
船は複数の鳥居を載せた奇妙な形状をしており、船室には一人の動かない尼僧が横たわっていた。飢饉に喘いでいた付近の村民たちは、その肉で飢えを凌いだ。
十二年前、この地に住まう織田国明・卓明の兄弟に、新たな家族が増えた。名は渡辺宇苑。
兄弟の祖母であり除霊師である織田ナヲ子は、家族を喪った宇苑を引き取り、修行と愛情を与えた。家族の復讐に燃えていた宇苑の心は、織田家との交流により少しずつ癒されていく。
ある夏の日、宇苑と二人の兄弟は、探検に訪れた海食洞の奥にて『人食い徳吉』と遭遇する。重傷を負う国明を救うべく、『常世遺物』を用いて徳吉を斃す宇苑。しかしその副作用により、卓明には霊を見る力が宿ることとなる。
数時間前、十八歳となった織田卓明は、幼馴染の少女に淡泊な別れを告げられた。
高校をやめて働くことになったというその少女・渚那奈の事情を知るべく向かった先で、卓明は悪徳金融会社の息子・内海多昭と出会う。那奈を連れ去ろうとする多昭に追いすがるが、逆に手痛い暴行を受ける卓明。そんな彼の前に現れたのは、十二年前にも卓明を救った宇苑だった。
再会も束の間、この地は巨大な闇に覆われる。カイ・ウカイなる漆黒の化け物が蔓延り、地震と地盤の崩落が相次ぐ地獄と化した故郷を進む卓明。声を失ってしまった少女・濱野真由との出逢いを経ながら、那奈を探して進む卓明は、その最中で宇苑と別行動を取ることになる。
やがて多昭と那奈のもとに辿り着いた卓明と真由。彼らの肌に真っ黒な『何か』が侵食していることを見て取った多昭は「お前たちは化け物へと変わりつつある」と卓明らに暴言をぶつける。その直後、卓明は真由と共に地盤の崩落によって海へと転落してしまった。
本性を表した那奈により、自身も海に突き落とされる多昭。避難所となっている小学校を目指して歩き出す那奈。この地の異常事態を目の当たりにし、五年前に亡くなった織田継一の遺言を思い出す卓明の叔父・織田栄二。所在も安否も分からないナヲ子と国明、そして宇苑。
多くの人物の運命が流転する中、卓明と真由は、自分たちと同じように海から打ち上げられた男性・碓井磐鷲と出会う。彼は宇苑の上司であり、この地に来る途中で広がった闇に遭遇してしまった除霊師だった。
そして現在――「夜に海を見るな」という禁忌の伝わるこの地・飾荷ヶ浜にて。
墨色の夜が更けていく。





