ホロウ - 第17話
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思うに、兄・国明は、多分に『構いたがり』な性分だったのだろう。
国明は自身の友達と遊びに行く際、必ずと言っていいほど卓明も誘った。卓明が自身の友達と遊ぶ用事があればそちらを優先させ、そうでなければ彼の友人との遊びに卓明を連れていく。それは歳の離れた弟への気遣いなどではなく、「どうせなら一緒に行こうぜ」という非常に軽いノリだった。そして、特に友人たちとの予定がなくとも、国明は卓明を積極的に誘った。裏山を散策するにしろ、海で泳ぐにしろ、家でゲームするにしろ、だ。お陰で、卓明は『孤独』というものに切実に悩まされたことはない。
祖母・ナヲ子は、そんな孫の気性を見抜いていたのかも知れない。
兄のその気安い性分は、多分に宇苑にも発揮された。その年の夏休み、国明は都度都度卓明を連れ立って、例の原っぱに行った。そこで宇苑に会えることもあれば会えないこともあったし、会えたとしても宇苑は延々と鞘に納められた剣で素振りをしていたり、太い樹木の枝で懸垂をしていたりと、こちらの会話に返事をすることはおろか見向きもしないことの方が多かった。
それでも、いつか見た充血した目で宇苑が卓明らを睨むようなことは無くなっていった。相変わらず家には来なかったけど、握り飯を持っていくと、いつの間にかそれらは消えていた。





