未視感
エルディーダは何もかも分からず混乱していた。
何故、思い出せることが何もないのか、読めもしない文字を使う土地に自分が身を置いていること、一月も寝たきりであったこた、疑問は疑問を呼び頭の中で整理しきれなかった。
何より不快に感じることはすべてに違和感を感じることだった。
目の前の男の服装であったり部屋のつくり、窓から見える景色、目に見えるすべてに未視感を覚えていた。
もっとも、違和感を感じたのは自分の体であった、視界に入る自分の手や足がまるで他人のものであって自分のものでは無いような感覚がしていた。
頭がグルグルと回り吐き気がした。
「気持ちが悪い…、」
エルディーダは口を手で覆い嗚咽をもらしたが、一月寝たきりで胃に何も入っていなかったため嘔吐することなくすんだ。
「大丈夫ですかっ!」
ツィバードはとっさにエルディーダの肩を支えようとしたが、肩に触れる直前で手をはたかれた。
「触らないで!」
ツィバードを睨み付け体を押し離した。
「この部屋から出ていってっ!一人にして!!」
エルディーダは纏まらない考えや思いに動揺し発作的に癇癪を起こしてしまいツィバードに当たってしまった。
一月も自分の面倒を見てもらったとはいえ、この男が自分にとって害のある人間なのか無害な人間なのか計りかねていたのだ。