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――誰かの声がする



とても優しく、語りかけるかのような落ち着く低い声で誰かが自分に声を掛けてくれている。

早くその声の持ち主を見たいが、身体が重く瞼も開きそうにない。


体の節々がやたら痛い。

床の上ででも寝ているのかもしれない、もしかしたら具合が悪くて自分は何処かで倒れたのかもしれない。そうだとしたら早く起きて自分は大丈夫だと、声の持ち主に言わなければ、


焦る気持ちとは裏腹に意識は遠退いていく。

――とても眠い。まぁ、いいか

その眠気に抗う事をやめ深い眠りについた。



夢を見た、かつて自分が大切にしてきた人達を。

愛しいような、悲しいような、なんとも言えぬ気持ちになった。

だが、一人とて名前を思い出せなかった。

自分の大切な人達が一人、目の前に現れては背中を向けさっていく、とっさに呼び止めようと名を叫ぼうとするが肝心なその人達の名前が分からない。

呼び止めたいのに呼び止めれないもどかしさの中、皆が皆、穏やかな笑顔で自分の元からさって行く。

ここで、呼び止めなければ二度と会えないのではないか?激しい焦燥感と今にも押し潰されそうな寂しさが押し寄せてくる。


――行かないで!置いてかないで!


出ない声で叫ぶが誰も振り返らずに去って行く。

追いかけようとするが自分の足は動かない。


一人残された絶望に堪えきれず涙を流すが、誰もその涙をぬぐってくれる人はいなかった。

ただ絶望の中にただずむしかなかった。



瞼を開けるとそこは、古い家の一室のようだった。

どこだろう?と部屋を見渡すが検討もつかない。

部屋は古く壁は少し黄ばんでいるが、とても清潔に掃除が行き届いているようであった。

なんとか、重い身体を起こそうとするが上手くいかず、またベッドに横になってしまう。

どうにか身を起こそうと一人唸っていると扉が開いた。


「目が覚めたのですね、無理に身を起こそうとしないで大人しく横になっていてください。」


扉をあけ部屋に入ってきた青年は優しげにそう言ってベッド横にあった椅子に腰を掛けた。


「聞きたいことがあるでしょうが、まずは、これを飲んでください。」


男は水の入った木のコップを差し出して水を飲むように促した。

素直に受け取り水を一気に飲み干した。


「あんたは誰?」


「僕はツィバード、好きなように呼んでくれて構いませんよ。」


「ここはどこだ?何も思い出せない!」


捲し立てるような口調で問いただすが男は落ち着いた態度で何食わぬ顔をしていた。


「まずは、落ち着いていただけますか?」


その態度にますますイライラさせられた。


「いいから!ここはどこで、何故ここに私はいる?!そして私はの名は!?知らないなら知らないと、知ってるなら答えろ!」


ベットから身をのりだしツィバードに掴みかかろうとするが肩を押さえられベッドに戻されてしまった。


「ここはカヒッツの外れにある深緑の森です。そして残念ながら貴方の名前はわかりません。」


「質問に明確に答えろ!何故私はここにいる!?誰かに連れて来られたのか!?」


「それにお答えすることは今はまだできません。」


男はあからさまに悲しげな表情で答え、からになった器を引っ込めた。


「ただ、貴方がここにいるのは貴方を必要としている人達がいるからです。」


「…必要?何の事だ?何故私を必要とする!?」


「申し訳ございませんが、それもまだお答え出来かねます。」


口では謝っているが全く申し訳そうな顔ではなく口元がニヤついている。


「ですが、貴方様のお名前が分からないとあれば少々不便ですから思い出すまで仮の名を名乗られてはいかがでしょうか?」









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