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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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80地下室の管理人は望む

 バルパル食べ過ぎだろうという2人の非難めいた目が刺さるが当の(かわうそ)はきょとんとする(ばかり)であった。


「もう()れ【胃強】辺りの後天御業を得て()ませんか?」


()うなのですかねえ。だけど食べ過ぎたらちゃんと苦しそうにして()ますよ」


「うーん、まあ此処(ここ)で話して()ても何ですので、彼方(あちら)の水路を(くぐ)った奥に部屋を(こしら)えて()ます。其処(そこ)へ行きましょう。先程のリーシャが新式飛翔板(ひしょうばん)の開発者ですから、彼女に飛翔板の事を習えば良いですね。()の分野では最上位の技術と知識を兼ね備えて()ます」


「分かりました。では()うさせて(もら)いますね。バルパル、()の水路へ行くよ」


「ぴゃあ」


 リーファ様はゆっくりと飛翔板を進め始め、()れに続きふわふわと浮くメイリア神官長とぴちゃぴちゃと泳ぐバルパルが付いて行き殿(しんがり)をハンナ様が務める。

 【浮遊】だと()べはするけれども余り速度が出ない。()れもメイリア神官長が単独で()べるのに飛翔板を望んだ理由の一つだが、何より飛翔板であれば何もしなくても水に浮けるのだ。

 ()の広大な地底湖と繋がる聖堂地下を管理する立場に()るものとしては、消費も少なく速度が出せて休憩もできる飛翔板というより水浮板だが、必要と望むのも無理からぬ事なのである。


 キュッと(えぐ)られた水路の口を(くぐ)り入り飛翔板を船の様にして「シャー」と(かす)かな音を立て(なが)ら水を()き分けて水路の奥へと進み行く。

 作業場の中ではチェロルが蓄魔(ちくま)器から伸ばした魔気道管を、マリオン先生とリーシャたちや近衛騎士様たち総出で手伝って(もら)(なが)ら天井へと()わせて行き、何やら取付けて()る様である。

 皆、メイリア神官長に気付くと作業を止めて礼を()り、過ぎ去ると作業を再開して行く。


 リーファ様は水路の終端で地に降りて飛翔板を壁に立て掛けてから振り向いた。見遣(みや)るのはバルパルである。


「ぴぁ」


「バルパルも御出(おい)で」


 バルパルが水路から出て来ると水が(したた)り落ちて行く。リーファ様は(おもむろ)に近付いて行き断りを入れる。


「バルパル、少し御業を使うぞ」


 手を近付け器用に毛に(まと)わる気を相殺し(なが)ら水を消して行く。


「あっ、リーファ様、有難(ありがと)御座(ござ)います」


(いや)此方(こちら)の都合だから。では行きましょう」


 少しどたばたとして()(ため)、取り()えずマリオン作の休憩室に行こうという寸法である。


「――よし! ティロット()けて()いよー!――」


 突然に作業場は昼間の様な明かりに(とも)された。今日運び込んだ(ばか)りの大型気灯が、作業場の天井中央で光を放っているのだ。

 (ただ)でさえ強い光を放つ大型気灯の周りには、鏡の様な銀色の囲いがくるりと覆って()り、光は()()に乱反射して数倍大きく()って見える。


「――おー! 皆様の御協力に! 感謝しまーす!――」


「ぴゃぁ……」


「先程使っていらっしゃった懐中気灯も、遠くに居た私たちに(まで)届き照らすぐらい(すご)いものでしたが、()れも(また)宮殿に無いくらい(すご)いものですね」


 ハンナ様の片眉が(わず)かに上る。


「余り他で(しゃべ)らないで下さいね。取上げられると此方(こちら)の作業が(とどこお)りますからね。()()はタリス皇帝陛下やアリア殿下から支援(いただ)いて()るものです」


 ()()(なが)ら休憩室に入るとリーシャが配管の作業を(おこな)って()た。


「ああ、リーシャ其処(そこ)()たのか丁度良かった。作業が終わってからで良いのでメイリア神官長殿に飛翔板の(つく)り方と飛び方を教えて(もら)いたいのだよ。では作業に戻って()れ」


「はい、分かりました。あっ! 座られる前に天井の作業を()らせて下さい」


「ああ、構わないよ。邪魔して()るのは此方(こっち)だからね」


 飛翔板に片膝立ちで乗ったリーシャは「上を失礼(いた)します」と言いつつ魔気道管に繋がった中型気灯を持ち抱え、すうっと天井(まで)浮上がる。


「[岩よ()から()ね]」


 天井にぽっかり空いた穴へ中型気灯を差入れて残った隙間に岩を詰めて行き、瞬く間に違和感なく仕上げらる光景は見て()て楽しく()るくらいだ。

 続けて天井には溝が掘られ其処(そこ)に魔気道管を収めて同時に岩で塞いで行き、飛翔板がすうっと水平移動した後には少し前と変わらない天井に戻って()た。そしてリーシャは「失礼(いた)しました」と言いつつ()(まま)階段へと降りて行く。


()れも(また)(すご)いですね。職人さんですか?」


(いや)、色々(こな)すことが多いけれども、(れっき)とした騎士ですよ……」


「失礼(いた)します。お茶を()れさせて(もら)います」


「ええ、マギーさん気遣いさせて悪いね」


「――マギー此処(ここ)の配管終わったよー!――」


「明かりが(とも)る様です」


 旧型の懐中気灯で(ほの)かな明かりを(とも)していた部屋は慣れるまで少し(まぶ)しいぐらいの明かりと()り書類仕事が(はかど)りそうである。


「ぴゃぁ……」


「……聖堂の地下室にも付けて欲しいです」


「……私に()われても」



---

修正記録 2017-05-17 09:23


びゃあ → ぴゃあ


広げられた → (えぐ)られた


バルパル水路 → バルパルが水路


句点を追加


付けて → ()けて


一部句点位置を変更


居りて → 降りて


ルビのズレを調整

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