77それは助かります?
朝の巡回を終え今日も日課の稽古を始める派出所の騎士たち、其の中でもこっそりと皆の注目を集める人物はティロット・スウェインなのであるが、本人は特に気にしていない様である。
「リーシャ様、岩を創って貰えますか?」
「ええ、構わないですよ。今日の硬さは何の様にしますか?」
「うーん、少し金属が混じって居る感じで偶に結晶系も在る混在系が良いかな」
「うん、じゃあちょっと待っててね」
ティロットは石祠の両断事件から、稽古の折に何か遣らかしはしないかと見張られて居るのだ。
試し切りがしたく為れば岩を用意するよと細かく注文を訊き届け、満足させる事で滅多矢鱈と其処らのものを斬付けない様にと、まるで腫れもの扱いであるのだが、本人は嬉しいそうだし他の者たちにも良い訓練に為って居る様だ。
「其れでしたら私が適当な大きさで水晶を幾つか創り致しまして、チェロルの溜め込んで居る砂鉄を混ぜ込んでは如何でしょう」
「えっ!」
「ああ、チェロル大丈夫だと思うよ。終わったら岩を消して砂鉄に戻すから」
「本当に? 鉄鉱石と認識して消したら駄目だよ!」
「ええ、心がけますよ……」
「お早う諸君、今日も朝から稽古に精が出て宜しいことだ」
「リーファ様、マリオン様、お早う御座います」
「お早う御座います」×4
「チィチッチィ」
「ええ、皆さん、お早う御座います。」
「扨、稽古を見て遣る前に今日の予定だな。昨日は近衛騎士の皆さんに思い掛けずとは言え、失礼をしてしまった許りだから、今日は前以て主立った予定を言って置く。半刻程後に施設の侍女という建前の管理人が来るそうだ。まあ色々兼任して貰う事と為るだろうがな」
「はい! ルトアニアから来た荷物は何時受取に行けば良いですか?」
「管理人は多分住込みと為るから其れなりに荷物が在るだろうし、荷卸しを手伝って遣りたいから其れが終わってからだな。受取には私が連れて行くよ。何せ皇太后陛下の所に一旦届けて貰う予定に為って居るから、荷物が早く届く分彼方に行くのに手続きが少々ややこしい、私が行けば事が早く済むんだよ」
「了解です!」
「ところで、荷物は何れ位に為るのだ。量に拠って方針を決めたいのだが」
「うーん! 中型蓄魔器2台と新しく飛翔機用に提案した反射板に覆われた中型気灯8個と大型気灯3個に、後は幾つかの小型動力機関かな! あっ、反射板付き懐中気灯も8個用意して貰ってる」
「結構数が多いな。此の際、チェロルの飛翔機と飛翔板数名で宮殿に向かった方良いかも知れんな。ところで其の反射板付きとは何だ?」
「ん! 今迄の気灯だと明かりが全体に拡散してたから、其れを成る可く一箇所に集められないかと試みたものなんだよ! アリア殿下は早速魔動車に搭載されたとかで皆から好評を貰ったそうなんだよ! 此れが在れば地底湖での行動が楽に為ると思って多めにお願いしたんだよ!」
「ああ、其れは確かに助かる。流石はチェロルだな偉いぞ!」
「えへへ」
「くっ、悔しいですわ! 此れは私も助かりますから流石に茶々を入れられませんわ」
「ベイミィ……まだ其れ遣って居るんだね。と言うか茶々って自覚して遣って居るんだ……」
「扨、そろそろ稽古見てあげようか、先ずはティロットとベイミィ前に出て打合い稽古だ」
「はい!」
「はい。あっ! リーファ様、私たちの侍女は今日来て貰って居りますから、荷物整理を手伝う事ができますわ」
「おっ、其れは助かるな」
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其れは全長40mは有るのだろうか、ゆっくりと宮殿区画方面から近付いてくる。両翼には大型の空気推進機関が付いて居り垂直に近い状態で稼働している。
若干後部が下がって見えるので通常の飛翔機と同じ理論で低速飛行をして居る事は分かる。だが巨大であるが故か、其れ共荷物を積んでいる為か、将又操舵者の腕が良いのか略水平を保ちつつの移動であり、もう派出所区画の目の前迄迫って居た。
其の大型貨物飛翔機前方で誘導する様に飛翔板を翔る数名の近衛騎士と一般的な侍女服を着たものが先だって降りて来る。
騎士たちは地に降り立つと素早く飛翔機の着陸地へと誘導指示を開始しする。勿論、エミリア様が基礎を作り上げ提唱した誘導方式だ。リーシャは自分の意見が通った事で胸を撫で下ろしている事だろう。
否、リーシャたちは口が半分開いた状態でぽかんとして居る。リーファ様やマリオン先生は苦笑いであろうか微妙な顔だ。
そして、ハンナ隊長と侍女の2人が飛翔板を抱えてゆっくりと歩いて来る。
「どうも。リーファ様、此方行きの荷物が在ると聞きまして序でですから下ろさずに荷物を逆に載せて此方に来させて貰いました」
「否、流石に目立ち過ぎだろう」
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修正記録 2017-05-14 10:37
今日は硬さは → 今日の硬さは
幾つかのルビを追加
誘導 → 着陸地へと誘導指示
「どうも。リーファ様、」追加




