76皆それぞれに
水面に背鰭だけ残して潜航? する潜泳機は特に問題も起こさずに、右や左の舵を確かめつつも一路南へと進み続けて居たのだが、30m程先行するマギーさんから【念話】に因る連絡が届いた。
『唯今、潜泳機は作業場から200m程南に位置する地点を進んで居ります。其処から50m程進むと岩壁が見えますので回避が必要と為ります』
「マギーさん! 此処から真っ直ぐ障害物無く進める方向は判るかな?」
『作業場の周りをぐるりと廻って調査した折の材料から目星を付けるとすれば、此処から北東方向に進めば600mは何も障害物が無かったと存じます』
「了解したよ! 取り舵(左舷へ)一杯! どうかなマギーさん?」
『はい、正しい方向に進めて居ります』
「よし! 其れじゃあ、次は操舵に因る潜航を開始するね! 潜舵を俯角に5°転回したよ!」
「えっ! 其れって胸鰭じゃ無かったの?」
リーシャの突っ込みは扨措き、潜泳機の胸鰭こと潜舵? は飛翔機の主翼と違い、板ごとと云うか鰭ごと動き下げられて、板面で水流を受止め掬い掻き揚げる。
潜泳機の機体は自ずと前方部が他より深く沈み機体全体を斜めに傾ける。其れは固定された潜舵の俯角を更に下げることに通じ、得てして刻々と機体全体の俯角を深めることと為る。
此の現象は飛翔機でも有るのだが潜泳機は特に振り幅が大きい様である。
勿論、此の状況に気付いたリーファ様は素早く筆を執って又、何やら書き始めるのだから実に忙しそうだ。
「胸鰭だよ! 其れは其れとして一旦潜舵を仰角に転回して0°に戻すよ!」
「流された!」
「ふむ、背鰭分の浮力が僅かに掛かっている筈なのだが……機体が水平に戻る前に底へ着きそうだな」
「じゃあ、横舵を少しの間俯角に転回して機体を水平に調整するよ!」
「腹鰭でも水平尾翼でも無く横舵ですか!」
「もう! リーシャ様はしつこいんだよ! 其れは腹鰭に決まってるじゃないですか! 今迄機体を操作して居る此れ等は操舵作業で今遣ってる此れは横舵、私は舵取りって事なんだよ!」
「? 詰まり其れは其れ、此れは此れってことで良いかな……」
「私は何方でも分かり易いから構わないのだが、操舵中は矢張り潜舵・横舵・縦舵・方向舵だな」
「だよ! 機体の水平維持を確認したよ! 潜舵はもう少し小さくても良かったかな! 機体各部異常無し、浸水も無し」
「=中央上部隔壁内の窓硝子4箇所全て潜水後も異常有りませんでしたわ。後、前方部の窓硝子を確認しに参りますわね=」
「=中央上部操舵席の方も異常無しだよ=」
「了解したよ!」
「ガチャ」
「――漸と戻って来れましたわ――」
「ガチャ」
「――ははは、御疲れ様でした――」
「よっと、前方隔壁の操舵室内に在る両操舵席用窓硝子は異常無しですわ」
「了解したよ! じゃあメルペイク潜泳機の推進を止めて貰えるかな!」
「チュビィバ」
「マギーさん! 外の様子はどんな感じかな?」
『現在、潜泳機の機体から泡などは確認して居りません。初期の段階に出ていた泡は機体表面に付着して居りました気泡だと存じます。それから、水深は目測で10m程で場所は折返した地点から約290m程北東に進み出た位置に居ります』
「了解したよ! 此の儘西を目指したら作業場に戻れるね! 結局、魔落の魚は現れないんだね!」
『はい、丁度西の方向が作業場と為って居ります。其れから、此の潜泳機は長さ12mの大きさで形も魚に似て居りますから、彼の巨大な魔落魚程ではありませんが十分警戒する対象と為って居ると推測致します』
「そっかー! おっ浮き始めてるね!」
「チェロル、水中で浮き沈み無く安定する注水量を確認しないで良いの? 遣ること在った方が嬉しいし又行って来るよ?
「うーん、じゃあ! リーシャ様、又後方部の貯水槽に水を入れて来て欲しいのです! 調節はマギーさんお願いするよ! 荷物や追加設備でどうしても上下するから大体でね!」
「了解」
『了解』
「チェロル……若しかして明日届くと云う機材や今後設備次第で今浮いてる分ぐらいの重量は埋まる算段なのかしら?」
「うん! だけど設備を載せる前に又潜航する可能性も有るから人手が在る内に記録をしておくと助かるんだよ!」
「私も計測結果の資料が増えるのは大いに結構なことだな。其れから帰りは私が操舵するからな!」
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と或る作業場の片隅で再びでんと台座に鎮座した潜泳機を眺める人影が2つ在る。
「今日は我が儘言ったりとか御免なさいね。チェロルが色々考えて段取りとかして居たのに、私ったら自分勝手で嫌な思いさせちゃったのじゃないかな?」
「ううん、ベイミィは今日少し機嫌が悪いのかなとは思ったけど大丈夫だよ! だって今日は潜泳機を進水できたんだよ! 楽しくって楽しくって其れどころじゃなかったんだよ!」
「そ、然う……其れは私も嬉しいわ」
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修正記録 2017-05-13 11:56
居たら、30m → 居たのだが、30m
ぐるりと廻て → ぐるりと廻って
幾つかの句点を追加
動き下げられた前方部の板面から水流を掬い掻き揚げる。
↓
動き下げられて、板面で水流を受止め掬い掻き揚げる。
ルビを追加
水深は目測で10m程で → それから、水深は目測で10m程で場所は
又後方部の後部貯水槽 → 又後方部の貯水槽
記録をとて → 記録をして
運転 → 操舵




