73報告はどこまで
「ふむ、少し砂鉄も積込んでおくのかな?」
「うん! 推進に此方の方が力を込めやすいし、潜水の重りや接触などに因る損傷の補修とか。それで、いざという時の気力補充にも使えるんだよ!」
「成る程、色々な面から想定して考えて居るのだな。流石チェロル、偉いぞ!」
「えへへ」
「リーファ様! チェロルを調子付けては駄目ですわ!」
「チュィチチ」
「よっこいしょ、中に飛翔機用の椅子を5脚据え付けて居たけど何人乗れる想定なのかな?」
「椅子無しで立った儘で良ければー15と5で20人位は乗れるんじゃないかな!」
「5人乗りですか。リーファ様、此の儘試験潜泳に取掛り作業場の外へ出るのでしたら、私は潜泳機に乗込まずに上からの様子を確認したり緊急時に備えたりしておこう思います」
「ああ、マギーさん悪いね。確かにマギーさんが外で控えて呉て居ると安心できるよ。チェロル、此の砂鉄は何処に入れれば良いのかな?」
「はい、では外で待機して居ります」
「其れはね! 床板外して其処に敷詰めて欲しいの!」
「ああ、判った……っと、全体に外壁より小さいのかな。内壁から外壁迄30cm程の間が在って、幾つかの隔壁で完全に隔てて居るのか。おっ、此処にも水袋が入っているのか結構ややこしい作りに為って居るな。――斯ういった事の詳しい内容もアリア殿下は御所望なのだろうね。【鉄】と【水】の御業で見通せる私だからこそなのかもね――」
残念ながらと申しましょうか、アリア殿下の許には詳細な設計図が真っ先に送られて居るのです。
元々チェロルの趣味で作り始めアリア殿下に謂われる通り相談しただけである。其れを周りがあれよあれよといううちに、勝手に帝国規模の国事に迄引上げたのだ。
詰まりチェロルとしては与り知らない話で、アリア殿下に何を送ったかを報告する義務も無い。
アリア殿下としてもチェロルに最低限の報告をして貰えれば後はリーファ侯爵に経過状況と大人たちにしか分からない様な特殊なものがあれば其の視点を以て詳しく報告して貰いたかっただけである。
ああ、特殊なものっていうのは戦術的利用方法だったり開発や災害時の利用価値だったりと、今迄世に存在しなかった技術の利用もあれば、派閥や宮殿の事情が関係した想定外の介入もである。
結局、アリア殿下から図面は貰ってますとあれば良かったのだが、其処まで殿下が気を回すのもどうかと思われる処である。
何せ石祠周りの建物を建築している最中にリーファ侯爵は、其れを見守りつつ石祠へ人が近付かない様見張っていたのだが、チェロルは鉄の資材を見つけて喜び勇み交渉を以て獲得した後に邪魔にならない別の場所で、図面を広げてご機嫌宜しく潜泳機の部品を創って居たのである。
そして錫で潜泳機の部品を加工して貰う折には、飛翔機制作で秘匿云々に発展した事を思い出し、其れを踏まえて図面をさっさと仕舞えたチェロルは褒めても良いぐらいだろう。
勿論、地底湖の作業場で潜泳機を組立てて居る場にはリーファ侯爵は居なかったのだが、組立てるだけの部品群を前に設計者本人が図面を必要とするだろうか、況して濡れる可能性が高いと判って居た潜泳機の移動作業が終わってからの継続である。
全ては偶然の為せる業、仕方が無い事なのである。そしてリーファ様は唯今、必死に報告する譜を書込み中である。
「へー前方部の部屋には私が創った窓が2つ在って、其処に合わせて操舵席が2つ在るのね。後ろの2脚は普通の椅子ですわね」
「然う然う、飛翔機の2座席連動型の操舵取付けは何度も手伝って慣れてたのだけど、潜泳機のものは並列に並んでいる上に中央の部屋に在る操舵席の方も連動させないといけないから結構大変だったよ」
「ええ? 中央の部屋に操舵席何て在りましたかしら? 椅子が1脚在った位ですわ」
「うん、其れ。其れに座って横に取付けて在る把手をくるくる回して居ると、椅子ごと自分迄も昇って行くよ。上の蓋を開けて更に昇ると操舵が在る場所に着く感じだね」
「うわぁ! 本当ですわ。 此れ何だか楽しく為ってきますわ」
「よっと! 此れで最後っ! あっ、ベイミィ其処で良いよね! そろそろ試験潜泳始めるよ!」
「ちょっ! チェロル! 待ち為さいませ。此処は皆様と別の部屋でしょ! 私一人に為ってしまいますわ。って扉迄閉める事なくて!」
結局、泣きべそ気味のベイミィはマリオン先生に替わって貰ったと謂う
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修正記録 2017-05-10 12:06
何人乗りの想定 → 何人乗れる想定
ルビを追加 云々




