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アリアは知らない  作者: taru
二章
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02階段の骨兵たち

 アリアはエミリア(模)を操り、他からどう見えようと慎重に岩の坂道を降り進めていた。勿論、アリア(模)もトテトテ後ろを付いて歩く。まだお人形遊びから卒業できていないようである。


 周囲を覆っていた(もや)(ほとん)()けてくれたようだ。だがもし視界にのみ頼っていたら気づけなかったかもしれない。

 骨兵たちである。あれほど出会い頭に襲ってきた骨兵たちが、微動だにせず(すす)を付けて崖の壁面にへばりついていた。骨の飾り置きとは思わない。


 エミリア(模)は華麗な足運びで飛び跳ね無駄に横に回転しつつ岩場にへばり付く骨兵を切り伏せていく。


「[砂よ在れ、そを射抜け]」×2×3箇所


 アリア(模)は砂を小規模に分散させて骨兵たちの胸を(えぐ)っていく。前回の強すぎた威力の反省はできている。

 そして更に周囲の認識を高めようと聞こえない音を聞こえるようにする。


「キィーーーーーーン」


『骨兵たちの動きが鈍った……。攻撃じゃないのよ?』


 音波の範囲を広げたことで知れた骨兵達の数は思いの外多く、更に別働隊が上から回り込んで展開しようとしている。いや、下からもだ。

 これは組織的な動きである。伏兵がバレたことで骨兵たちは動きが活発化し始めた。


 驚いたことに御業を使っている。言霊の補助は無いが簡単な操作が出来る事を理解しているのか、砂の攻撃に対しては水の散布により威力軽減を(はか)ってくる。水系の御業は所持者が最も多く見た感じだと10体はいる。上からも弓が放たれ、これも5体はいる。


 エミリア(模)に直接攻撃をしかける部隊は足、腕系の強化が10体以上はいる。いや全体に強化をかける【強化付与】もいるのか部分強化系とは思えない釣り合いのとれ方だ。

 周囲の大気を掌握しているから今の処、顕現は無いが危険な攻撃系の御業持ちもいるだろう。現に希少だけど微妙な【光】でエミリア(模)は目にチカチカと嫌がらせを受けている。


 物量と連携の合せ技であった。喋れない骨兵たちが示し合わせたかのように連携を取る。【念話】持ちも複数いるのだろうか、距離からいって【遠話】もいる可能性がある。

 以前であれば見境なく襲ってきた骨兵が仲間を【強頭】で守ろうとする。いや頭突きって……。

 【統率】の後天御業で指揮する統率者がいる。正規兵の部隊か。兵には農村などから徴兵する兵と常時訓練を積み統率の取れ戦闘に()けた兵とがいるが今までと比べるのも烏滸(おこ)がましい動きだ。

 上空に炭の粉が撒かれる、お母様の真似か。何となく察するが今はいい。大気を増やし上空へ拡散させる。

 壁面に液体が流される。水なのか、どちらにせよ支配圏への侵入はさせない。【熱】で液体を蒸発を試みると発火して消滅してしまう。【酒】だったのか?

 上壁の部隊から矢が放たれる。浮遊させていた砂粒を集結させて防御する。鉱物系の御業は【水晶】が多いのかと思えば【鉛】と【銀】の御業持ちがいた。何故あの戦争に参加した。希少な上に【銀】持ちはお金に困らないだろうに。

 制御を誤っても光幻達は傷付かないから落ち着いて行動できる。音響を全方向に展開している為、たとえ障害物が在っても死角は無いに等しい。そう思っていた。慢心していたのかもしれない。急に骨兵たちが後退した。真横上部に位置する壁面の岩がぐらりと傾いた。



『油断していましたわ。大気を制圧していれば、そこを越えた先へは指示出来ないでしょうと。【岩】の御業ですか……』


 岩を伝い大気を回り込んで指示をしてきたのだ。しかも側壁の岩を支えるのに必要な接続を消すだけだ。完全に地の利を得た攻撃だった。


 模造エミリアに落石から這い出る仕草をさせる。演技に抜かりはない。


『また助かりましたわね。生身の体でしたら確実に潰されていたでしょう』


 幽体、しかも異空の安全地帯であったが音波(しか)り、たまたま幽体や異空間に効かない攻撃であっただけで御業の顕現する世界である。常識など(どぶ)に捨ててしまえば良い。【木】の御業持ち達は板に乗って空を飛んでいるくらいだ。霊体に有効な攻撃をされてからでは遅いのである。



 アリアは演技に余念がない、わざわざ【念動】で岩をぐらりとどかすくらい念の入りである。よろよろと後ろを探りアリア(模)を手繰り寄せ抱きしめるエミリア(模)。やはりお人形遊びが大好きなのだろう。


 骨兵たちは一斉に動き始めた。弓兵たちですら剣を取り(ひそ)んでいた岩陰から飛び出す。先ず斬りかったのは【跳躍】1体が上空から、【俊足】3体と【豪脚】2体が同時に、それを囮に【瞬躍】1体が回り込む。エミリア(模)に直ぐ様踊り斬り捨てられる。韻律(いんりつ)どうやって合わせた! そして遅れて一群となった骨兵たちが同時に斬り掛かってきた。

 アリアは【聖】の御業を使いアリア(模)に聖光を(まと)わせる。言霊は強すぎてダメだ。失敗は繰り返さないのだ。押し寄せる骨兵たちは次々と崩れていき灰となる。


 残ったのは20体、上の岩陰に6体、下側の崖にへばりついているのが6体、聖光を発する前に飛び退いて後退したのが1体、その奥に7体。


 もう寄って来ないだろう、一気に聖光で殲滅するのが得策かと言霊を使おうとしたら【念話】が届いた。


『我はラルク・フェンバーン男爵、大尉である。貴様は此処に何をしにきた?』


 と立派な上官っぽい騎士の格好をした骨の隣りにいる方から念話が届いた。アリア(模)は首を傾げる。


『横のセバースは伝令役である』


 やはり心が残っていたかと思いつつ、アリアは素直に目的を告げる意味はない。取り敢えず直接フェンバーン男爵に【念話】を送った。


『下に何があるのかと思いまして遊びに来ましたの』


 大半は真実であろう。


『此処には貴様の求めるものは無いのである。即刻立ち去るがよい』

『つまり此の下にはおいそれと明かせないものが在ると言うことですわね』

『貴様……』


その時、突然に地響きと揺れが始まった。




何だか修正が多くなってきた……

---

修正記録 2017-02-22 0:54



「他からどう見えようと」追加


ルビ追加


死体の置き飾りとは思わない → 骨の飾り置きとは思わない


「岩場にへばり付く骨兵を」追加


言霊の詠唱を「[]」の括りに変更


×6 → 2×3箇所


「小規模に」追加


「前回の強すぎた威力の反省はできている。」追加


図る → (はか)ってくる


幾つかの改行追加


一部アリアの思考部分を『』で括る


一部語尾、接続詞を変更


「部分強化系とは思えない釣り合いのとれ方だ」追加


危険系の御業持ち → 危険な攻撃系の御業持ち


「いや頭突きって……。」追加


「が今までと比べるのも烏滸(おこ)がましい動きだ」追加


霊体 → 幽体


直ぐ様斬り捨てられる。 → 直ぐ様踊り斬り捨てられる。


「韻律どうやって合わせた! 」追加


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