68ジュゴゴゴゴ
「ふー、じゃあ上の派出所で留守番をしているよ」
「待て待て、未だ運ぶ荷物が在るから皆の飛翔板を取りに行きたい。乗せて行って貰えないか?」
「あ、構いませんです。えっと」
「マリオンだよ、タイラスト子爵。此処の派出所にリーファ様と共に指導の任を拝命している。今後共宜しくね」
「はい、此方こそ宜しくお願い致します。リルミール・ハッシベルトです。ミグネア皇太后陛下にお使えする近衛騎士団所属、未だ騎士見習いです」
「はい了解です。では、私は貴女たちの飛翔板を取りに行くから、取り敢えずチェロルの作業を手伝って居てね」
「はい! マリオン先生」×2
「畏まりました」
マリオンは次の段取りを考えてリルミールと共に天井の階段へと昇っていく。飛翔板を其の場で創っても良いが、其れなりに時を費やすし消費もするのだから、序でが在るならばと利用して効率化を図った訳である。
「リーシャ様! 岩で作業場作って欲しいのだけど!」
「良いよ、チェロルはどんな感じで心象しているの?」
「うーん、此の鉄の潜泳機は未だ下側に胸鰭と腹鰭を付けたいんだよ! だからね! 浮かしたいのと安全な場所で作業したいの!」
「――潜泳機って名前有ったんだ……――安全な場所?」
「うん! 此処だと作業に夢中に為ってたら、ぱっくりとお魚さんに食べられちゃうよ!」
「あー、確かに不味いね」
「大掛かりに造り込む事を考えれば岩壁に横穴を空けて其れも材料に為れば何かと都合が宜しいかと思います」
「然うだねマギー、近くにはー……」
「彼何て如何でしょう?」
「うーん、彼の北北東に20~30mぐらいかな暗くて見え難いけど確かに大きい壁が見えるね。実際に見に行くとしても飛翔板を取りに行ったマリオン先生を待った方が良い? 其れ共一先ず此の潜泳機だけでも向こうに移動しちゃう?」
リーシャたち3人と1羽は水面にぷかりぷかりと浮く潜泳機の上に居るのだ。此処で作業しないのであれば遣れる事は限られてくる。
「30mであれば念話は十分届きますよ」
「うん、動かしちゃうね」
「おうー!」
「チュィチュッ」
ゆっくりと12m程は有る鉄塊の潜泳機は動き出した。慎重に動かさなければ駄目なのに怪しい動きを見せる。
「一寸待って! 誰が鉄の機体も動かしたの? と言うかチェロルは水流を操作したね!」
「チュバ」
「私も動かしたかったの!」
「怖いから止めてね。と言うかもう惰性で十分ね」
懐中気灯の明かりは周り全体を照らす作りである為、遠くを照らすのは不向きなのである。30m先を僅かにしか照らせないといっても、動かせば直ぐに着いてしまう距離に在る。
「此方で操作するからね!」
「チュバ」
「はーい」
近付くと岩壁は右と左に抜けている。詰まり目前に鋭角な壁が迫っている訳で、何方に着けるか迷う処である。
「えーっと、リーファ様戻られた折に目印に為る様、左に着けますね」
「然うですね。其れが無難と思います」
リーシャは潜泳機の機体を岩壁と平行にしてから寄せて行く。そして完全には密着せず少し隙間を空けて移動を停止した。
「[岩よ其に在れ]っと問題無さそうね。[岩よ其に在れ]」
前方部を覆っている六角多孔で創られた岩と岩壁の間に新たに岩が繋がれがっしりと固定される。そして後方部も同じように岩で繋ぎ完全に岩壁と固定された。
「取り敢えず壁に固定したけど、場所が決まれば其処に移動して固定し直すね」
「ほーい!」
飛翔板が在れば直ぐにでも翔び立ち良さげな場所探しに出る処だが、然うもいかずリーシャは唯、岩壁に手を当て気を流して岩の周りを調べる。
チェロルは水面に手を刺し入れ同じく気を流して水中の周囲を探り始める。そしてマギーは……。
「敵意です。此方を餌と認識した様ですね」
「北西30m位先で速度を上げ始めたよ! 薄く水を支配してるのかな? 私に任せて! メルペイク此の形で鉄を創って!」
「[砂鉄よ其に在れ]」
其れは三角針を槍程に大きくしたものだった。其の柄の途中には2箇所程、風車や竹とんぼの様な羽が3枚斜めにちんまりと付いていた。
「よし! 行けー!」
チェロルが手を離すと其れは「ちゃぽん」と少し水を跳ね、直ぐ様水中へと沈み行く。チェロルは其れに水流を当て此方へ近付く何ものかに向けて押し流す。
水の流れを受けて進み出した大きな三角針は6枚の斜めに付けられた羽板に因ってくるくる回転し始める。勿論、鉄自体にもチェロルの御業で気力が流され剛性と推進力が加わている。
「ジュゴゴゴゴゴゴ」
魔落の巨大泥鰌は近付くものを避けた筈だった。だが其れは避けた方に進路を変え進み出て巨大泥鰌に突き刺さる。
お互い速度が在ると行っても水中の事、空中に比べると其れ程速くもないし威力も落ちる。だが其の分操作が容易く気の繋がりを保ち易い。
大きな三角針は高速回転し乍ら魔落泥鰌の周りに張られた気力の防壁を掻き消して、チェロルの水流を受け取り続け突き刺さっても尚回り続ける凶悪な武器だった。
リーシャもマギーもメルペイクすらどん引きである。
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修正記録 2017-05-05 19:16
穴子 → 泥鰌




