66飛翔機では?
「姫様、チェロル様からお手紙が届いております」
「チェロル様から? 何かしら珍しいわね。今読ませて貰いますわ。……成る程、確かに金属の選定、加工次第では推進機関の調整だけで可能性は十分に有りますわね。2枚目は設計図ですね……。エミリア、此れに描かれているものが実現するのであれば、此方の土地柄から考えても何かと有用に役立てるのではなくて?」
「拝読致します。……御意にございます」
「相変わらず御業頼りに考えられて居ますが、実現できる着想は素晴らしいものですわ。其の部分を適性素質が無いものたちでも使えるよう、此方が勝手に工夫すれば良き事。手掛かりさえ用意して渡せば、するすると組み立てて仕舞いますわ、屹度。ではメアリー、魔気動機関開発主任のリザエルさんに親書を認めますから……既に準備していたのですね。――今迄の手際は教育の一環という訳ですか……リザエルさん、兼任の肩書が増えそうですわ。リーファ様にも此れの情報を綿密に上げるようにして貰おうかしら」
アリア殿下は少し口を尖らし気味に何やら呟き乍ら親書を認め始めた。
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「じゃあ、上げるよー! メルペイク、ゆっくりだよ!」
チェロルの掛け声と共に其れは静かに浮き上がる。全長10m、否12mは有りそうな鉄の固まりは中が空洞であり、其れでいて確りとした躯体で内側から補強されている。更にいえば幾つかの仕切りで区切られた部屋が存在するとの事だから、飛翔板に使っている六角多孔と似たような考え方だろうか。
「良し! 此方側、予定の高さに為ったから止めて呉れ。マリオンは軽く支える感じだ」
「チュバ」
「了解!」
「じゃあ此方だけ上げて行くよー!。皆ー気をつけてねー!」
前と後ろには今日顔を見せたら捕まったマリオン先生とリーシャが、六角多孔の支え岩を創り出して両端からがっしりと包み抑え込んでいる。此れだけ長くて其れなりに質量も在るのだから、一寸した制御の狂いが惨事に為り兼ねない綿密さなのだ。
『リーシャ様、其処で一旦止めましょう。前方部が下がったら丁度良い角度に為る筈です』
「はーい!」
リーファ様はマリオンを飛翔板に乗せて石祠を退けられた階段の入口へゆっくりと入っていく。
石祠の入口は最早隠す意味など無い為、周りの土を避けて大きく広げられていた。其処へ少しずつ慎重に、鉄で創られた何かの胴体部分前方を動かし近付けて行く。
其れは最大横幅2.9m、高さ3.3m程の大きさであった。此の階段を通ることを想定して限り限りで創られたのだろう。
「おー! 真っ暗だよ!」
「チュチチ」
リーシャたちは此れを飛翔機の一種だと思っている。何しろリーシャが支える部分には飛翔機の垂直尾翼らしきもの付いているのだから、縦令少し小さめだと感じても否定する根拠としては少し薄いのである。
『メルペイク、マリオン様止めて下さいませ。後方部の高さと横位置を調整します』
「了解」
「チュバ」
『リーシャ様5cm程右斜下に移動して貰えますか』
「はーい!」
主翼や水平尾翼は付いていないとはいえ階段は少し弧を描いているのだ。12mも在れば緩やかな曲がりと雖も影響が顕著に現れる。後方部の殆どが細く成っていた為何とか通れた感じだ。結構厳しい限り限り過ぎの作業なのである。
此の綿密な作業をマギーは【遠見】【念話】の御業を使い、角度や隙間の違いを精査し支持を出して熟して行く。そして前方、階段の最奥で指示しているリーファ様とは、常に念話を繋いで連携を測っているのだ。
然う然う、ティロットは先に地底湖へ降りて安全を確保していて、ベイミィはリーシャを飛翔板に乗せて移動を手伝っている。まあ他に比べたら随分と楽だ。否、一番楽なのはチェロルだった。
先程からチェロルとメルペイクの声だけ聴こえて姿が見えないのだが、【気隠】で隠れている訳ではなくて、鉄で創られた何かの胴体部内側に入って制御しているのだ。勿論、周りは全く見えないのだからマギーの念話でしか状況を把握する術が無い。メルペイクを安心させるという意味では役に立って居るのかもしれない。
因みに其の胴体部の中央上部には、ぽっかりと穴が開いていて此処から入り込んだ訳だ。後で其処に取り付ける部品が在るようだが少し出っ張る形だ。若し最初から其の部品が付けられていたら、石祠の階段から地底湖に降ろす事はできなかっただろう。
「マギーさん、前方部が地底湖の入口を通過した。後10m程、進めば地底湖の水面に着水する感じだな」
『分かりました。皆様、着水1m前で一度止めます』
一度止めてから一息ついて更に慎重に降ろして行く。左右の超限り限り状態からは解放されたが、後方部には垂直尾翼が何故か上下に在る。着水の衝撃で揺れても困ると本当に最後の最後まで、天井と階段擦れ擦れで通しきった後には皆ぐったりと疲れ切っていた。
底が六角多孔の岩で包まれている所為でもあるが、船の様にぷかりぷかりと水面に浮いている。其の姿は少し離れて見遣ると、魚や鯰などの類いを模した様である。
「おー! 皆有難ー!」
「チュン」
「ああ、お腹空いたのね」
「今更だが此れは飛翔機では無いのか? 地底湖の水面に降りてみると、改めて翔ばす事は無さそうだと感じるのだが」
「水の中に潜るんだよ! 彼のでっかい奴みたいに! 其れに此の地底湖は場所に依って必ずしも空から行けるとは限らないでしょ!」
「あっ!」×6
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修正記録 2017-05-02 10:34
「拝読致します。……」追加
素晴らしいですわ。 → 素晴らしいものですわ。
幾つかのルビを追加
……今迄 → ――今迄
それでいて → 其れでいて
惨事に為り兼ねないのだ。 → 惨事に為り兼ねない綿密さなのだ。
前部 → 前方部
後部 → 後方部
広げられている。 → 広げられていた。
限り限り → 限り限りで
幾つかの句点を追加
いないが階段は → いないとはいえ階段は
常にを繋いで → 常に念話を繋いで
ている → て居る
地底湖に着水 → 地底湖の水面に着水
「底が」追加
「其の姿は少し離れて見遣ると、魚や鯰などの類を模した様である。」追加
降りてみて改めて → 地底湖の水面に降りてみると、改めて




