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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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66飛翔機では?

「姫様、チェロル様からお手紙が届いております」

「チェロル様から? 何かしら珍しいわね。今読ませて(もら)いますわ。……成る程、(たし)かに金属の選定、加工次第では推進機関の調整だけで可能性は十分に()りますわね。2枚目は設計図ですね……。エミリア、()れに描かれているものが実現するのであれば、此方(こちら)の土地柄から考えても何かと有用に役立てるのではなくて?」

「拝読(いた)します。……御意にございます」

「相変わらず御業(みわざ)頼りに考えられて()ますが、実現できる着想は素晴らしいものですわ。()の部分を適性素質が無いものたちでも使えるよう、此方(こちら)が勝手に工夫すれば()き事。手掛かりさえ用意して渡せば、するすると組み立てて仕舞いますわ、屹度(きっと)。ではメアリー、魔気動機関開発主任のリザエルさんに親書を(したた)めますから……既に準備していたのですね。――今(まで)の手際は教育の一環という訳ですか……リザエルさん、兼任の肩書が増えそうですわ。リーファ様にも()れの情報を綿密に上げるようにして(もら)おうかしら」


 アリア殿下は少し口を(とが)らし気味に何やら(つぶや)(なが)ら親書を(したた)め始めた。


---


「じゃあ、上げるよー! メルペイク、ゆっくりだよ!」


 チェロルの掛け声と共に()れは静かに浮き上がる。全長10m、(いや)12mは()りそうな鉄の固まりは中が空洞であり、()れでいて(しっか)りとした躯体(くたい)で内側から補強されている。更にいえば幾つかの仕切りで区切られた部屋が存在するとの事だから、飛翔板に使っている六角多孔と似たような考え方だろうか。


「良し! 此方(こちら)側、予定の高さに()ったから止めて()れ。マリオンは軽く支える感じだ」

「チュバ」

「了解!」

「じゃあ此方(こっち)だけ上げて行くよー!。(みんな)ー気をつけてねー!」


 前と後ろには今日顔を見せたら捕まったマリオン先生とリーシャが、六角多孔の支え岩を(つく)り出して両端からがっしりと包み抑え込んでいる。()れだけ長くて()れなりに質量も()るのだから、一寸(ちょっと)した制御の狂いが惨事に()り兼ねない綿密さなのだ。


『リーシャ様、其処(そこ)で一旦止めましょう。前方部が下がったら丁度(ちょうど)良い角度に()(はず)です』

「はーい!」


 リーファ様はマリオンを飛翔板に乗せて石祠(せきし)退()けられた階段の入口へゆっくりと入っていく。

 石祠(せきし)の入口は最早隠す意味など無い(ため)、周りの土を()けて大きく広げられていた。其処(そこ)へ少しずつ慎重に、鉄で(つく)られた何かの胴体部分前方を動かし近付けて行く。

 ()れは最大横幅2.9m、高さ3.3m程の大きさであった。()の階段を通ることを想定して()()りで(つく)られたのだろう。


「おー! 真っ暗だよ!」

「チュチチ」


 リーシャたちは()れを飛翔機の一種だと思っている。何しろリーシャが支える部分には飛翔機の垂直尾翼らしきもの付いているのだから、縦令(たとえ)少し小さめだと感じても否定する根拠としては少し薄いのである。


『メルペイク、マリオン様()めて下さいませ。後方部の高さと横位置を調整します』

「了解」

「チュバ」

『リーシャ様5cm程右斜下に移動して(もら)えますか』

「はーい!」


 主翼や水平尾翼は付いていないとはいえ階段は少し弧を描いているのだ。12mも()れば緩やかな曲がりと(いえど)も影響が顕著に現れる。後方部の(ほとん)どが細く()っていた(ため)何とか通れた感じだ。結構厳しい()()り過ぎの作業なのである。

 ()の綿密な作業をマギーは【遠見】【念話】の御業を使い、角度や隙間の違いを精査し支持を出して(こな)して行く。そして前方、階段の最奥で指示しているリーファ様とは、常に念話を繋いで連携を測っているのだ。


 ()()う、ティロットは先に地底湖へ降りて安全を確保していて、ベイミィはリーシャを飛翔板に乗せて移動を手伝っている。まあ他に比べたら随分と楽だ。(いや)、一番楽なのはチェロルだった。

 先程からチェロルとメルペイクの声だけ()こえて姿が見えないのだが、【気隠(きいん)】で隠れている訳ではなくて、鉄で(つく)られた何かの胴体部内側に入って制御しているのだ。勿論、周りは全く見えないのだからマギーの念話でしか状況を把握する術が無い。メルペイクを安心させるという意味では役に立って()るのかもしれない。

 (ちな)みに()の胴体部の中央上部には、ぽっかりと穴が開いていて此処(ここ)から入り込んだ訳だ。後で其処(そこ)に取り付ける部品が()るようだが少し出っ張る形だ。()し最初から()の部品が付けられていたら、石祠(せきし)の階段から地底湖に降ろす事はできなかっただろう。


「マギーさん、前方部が地底湖の入口を通過した。後10m程、進めば地底湖の水面に着水する感じだな」

『分かりました。皆様、着水1m前で一度止めます』


 一度止めてから一息ついて更に慎重に降ろして行く。左右の超()()り状態からは解放されたが、後方部には垂直尾翼が何故か上下に()る。着水の衝撃で揺れても困ると本当に最後の最後まで、天井と階段擦れ擦れで通しきった後には皆ぐったりと疲れ切っていた。


 底が六角多孔の岩で包まれている所為(せい)でもあるが、船の様にぷかりぷかりと水面に浮いている。()の姿は少し離れて見()ると、魚や(なまず)などの(たぐ)いを模した様である。


「おー! (みんな)有難(ありがと)ー!」

「チュン」

「ああ、お腹空いたのね」

「今更だが()れは飛翔機では無いのか? 地底湖の水面に降りてみると、改めて()ばす事は無さそうだと感じるのだが」

「水の中に潜るんだよ! ()のでっかい(やつ)みたいに! ()れに()の地底湖は場所に()って必ずしも空から行けるとは限らないでしょ!」

「あっ!」×6




---

修正記録 2017-05-02 10:34


「拝読(いた)します。……」追加


素晴らしいですわ。 → 素晴らしいものですわ。


幾つかのルビを追加


……今(まで) → ――今(まで)


それでいて → ()れでいて


惨事に為り兼ねないのだ。 → 惨事に()り兼ねない綿密さなのだ。


前部 → 前方部

後部 → 後方部


広げられている。 → 広げられていた。


()()り → ()()りで


幾つかの句点を追加


いないが階段は → いないとはいえ階段は


常にを繋いで → 常に念話を繋いで


ている → て()


地底湖に着水 → 地底湖の水面に着水


「底が」追加


()の姿は少し離れて見()ると、魚や(なまず)などの類を模した様である。」追加


降りてみて改めて → 地底湖の水面に降りてみると、改めて

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