65何を創ってる?
御業の建築は効率的だ。現場監督の後天御業【統率】に依る指示で建築作業を着々と進めて行く。
建物に必要な材料は力自慢の身体強化系を持つ御業使いたちに次々と運び込まれて来る。【土】の御業使いが基礎用の穴を堀り【岩】の御業使いたちが基礎と為る岩を運び込んでは敷き詰める。【鉄】の御業使いが傍らに積み上げられた鉄の材料で建物の躯体を構築して行き、其の端から【錫】の御業使いが同じく傍らに積み上げられた錫の材料で覆っていく。チェロルが目を輝かせ熱い視線を浴びせているが、其の作業に揺るぎ無く進めていくのである。
気付けば、継ぎ目が一切見当たらない岩素材の外壁に覆われた立派な建物ができていた。横には第二騎士団の派出所がちんまりと建っている為か威厳すら漂ってくるようであった。
「……早いな」
「はい、早かったです。然し随分と急ぎ造られたのですね」
「仕方在るまいて、調査や管理を此方に任せると拝命給わったが、彼方とて実地調査をしない訳には行かないからな」
「あ、はい」
「其れに聖堂の方は今迄立ち入り禁止だった領域に在る地下通路へ、縦令宮殿の上位者とはいえ、近衛騎士がおいそれずかずかと立ち入るものでは無いのだからな。」
「ああ、其れも然うですね」
「然う為れば必然と此方の石祠に通うことには為るが、……」
「目立ちますよね。皇太后陛下の近衛騎士が何をしているのかって」
「……今日のチェロルはやけに積極的なのだな」
「えっ!」
リーシャがリーファ様に促されチェロルの声が聴こえる方を見てみれば、石祠を囲う様に聳え立つ建物の工事に来ていたものの1人に声を掛けている。
「然う言うが嬢ちゃん、おいちゃん斯う見えても高給取りの【錫】使いさん何だよ。嬢ちゃんのお小遣いぐらいじゃ、ちょっとだけでも大変な額に為っちまうんだよ」
「チェロルどうしたの?」
「此の人がね! 錫と云う金属で鉄を覆うと錆び難く為るんだって! だから今、私が創ってる鉄の部品を錫で覆って呉れないかなって交渉してるんだよ!」
「ああ、手間を掛けるが此の子の言う通りにして遣って呉れ。賃金は上乗せして貰えるように伝えておく」
「は、はい侯爵様、畏まりました」
「宜しかったのですか?」
「うむ、タリス皇帝陛下やアリア殿下、ああ皇太后陛下からもだな。チェロルが何か創り始めたら邪魔せず逆に手助けして遣って欲しいと頼まれている」
「チェロルへの周りの待遇が度を越して良いと思って居ましたが、其んな畏れ多い事に為って居りましたのですか?」
「はは、何を言っている。お前も同じだぞ飛翔板の改良者」
「は、はあ。其れも畏れ多い事です。ああ又何か創って居るようですね」
「おおー! 後、此方も錫で覆って下さいです!」
「チェロル! 塗料持って来たんだけど……要る?」
気の利くティロットは今日も日課の訓練をしていると、チェロルが作業をして居るのを見咎めて、塗料を用意して持ってきたのだ。決して暇だった訳では無い! 後ろ姿が寂しそうだ。
「ティロット、有難う! うん、要るよー! 此の後で上から塗装したら更に強そう!」
「チュバチチチ」
「何だか塗装も為る様だし手伝って来ます」
「ああ、行って御出で。然し今度のは随分と大きい胴体だが、乗せる人数を増やす積りなのか……彼は翼の部品か、やけに小さくないか……と言うか! 何処に鉄があんなに在ったのだ。あっ!」
どうやら余分で持込んだ鉄を現場監督と交渉して、余るのであれば買い取る約束を取り付けて居た様だ。うん何時にも況して積極的だ、余程に心を奪われる事を遣って居るのだろう。
リーファ様は現場監督の許へ行き、先程の【錫】使いへの追加賃金とチェロルの鉄購入代金を、全て自分へと請求するよう託けていた。
「どうぞリーシャ様、此れが最後です」
「はいっと、何とか日が暮れる前に塗り終わったね。アリア殿下の有難味が十分理解できた感じだよ」
「アリア殿下が塗装を為さるとあっと言う間に、終わらしてしまいますものね」
「チェロルー! 此れ何処に片付けるの?」
「石祠の周りに置いておいて!」
「えっ! 良いの? 今日建てた凄い屋敷の中だよね」
「ああ、良いぞ。チェロルが創るものは大方秘匿辞令ものに為りそうだからな。彼処の周りで作業して貰った方が此方も都合が良い。其れから明日は早速、近衛騎士の選抜組が確認に来るから、宮殿迄の道程を案内為る予定だ」
「あっ! リーファ様! 分かりました!」
「ん? 違うよ! 下で組み立てるんだよ!」
「何でっ!」
「何処でっ!」×3
---
修正記録 2017-05-02 10:28
皇太后 → 皇太后陛下
「然う言うが嬢ちゃん、おいちゃん斯う見えても高給取りの【錫】使いさん何だよ。嬢ちゃんのお小遣いぐらいじゃ、ちょっとだけでも大変な額に為っちまうんだよ」追加
幾つかの句点と感嘆符を追加
全て自分へ → 全て自分へと




