63南東宮殿
仕方無い、リーファ調査隊の一行は獺擬き改バルパルを、飛翔板4枚を横に並べてから載せて運んだ。幸いにも此処の階段や廊下も幅広く造ってある御蔭で問題なく通れ、廊下の更に置くに在る扉の無い吹き通しの部屋へと運び込むことができたようである。
バルパルお気に入りの寝床と云う木を組んだ台座の様な所に載せ替えると、ぐたりと首をだらけさせて「ぴやぁ」と一声発した後はすうすうと寝息を立て始めた。
「後は放って置けば勝手に回復するだろう」
「お手数をかけて頂いて感謝致します」
「否、此方も此の子には世話になっているから構わないよ。では戻るぞ」
「ひゃっ!」
リーファ様はニヘラと緩んだ顔をしたチェロルを立たせ乍ら皆に声を掛ける。
「了解」×5
「あっ、ちょっと待って下さい。其の板、飛翔板って奴だよね。前から気になっていたんだけど、此れって私にも教えて頂けるものなのですか?」
「然うですね……。現在の処、此の飛翔板は帝国でもラギストアとルトアニアに属する騎士たちだけに伝授を許されていますが、メイリア神官長殿であれば皇太后陛下に御許可を頂き、其の事を皇帝陛下へ伝達さえしておけば問題無くお教えできると思います。宜しければ今日の御報告の折に皇太后陛下へ御上申しておきますが?」
「はい、宜しくお願いします。重ね重ねお手間を取らせてしまい恐縮に存じます」
「ははは、まあ、此方も迷惑を掛けたからな。其れに斯ういっちゃ憚れるが序でだ。では皆、今度こそ戻るぞ」
「了解」×4
「ひゃっ!」
リーファ様は再びチェロル引き起こし号令を掛ける。皆準備はできている為、撤収も早い其々の飛翔板を手に持ち廊下へ次々と出ていく、手ぶらのティロットも後ろ髪惹かれるチェロルと其の飛翔板を抱えて出ていく。流石は【強肩】持ちである。
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リーファ調査隊の一行が石祠を封鎖した石塀から次々と飛び出してくる。皆が戻ったことに気が付いたマギーは様子を伺いに派出所から出てきた。
「マギーさん唯今無事戻ったのだが、此れから直ぐに宮殿へ皆を連れて向かう事に為った。引き続き留守番の方を頼む」
「畏まりました」
勿論、馬車なんぞ置いてきたリーファ様とマリオン先生の二人である。飛翔板で其の儘乗り付ける心積りだ。
宮殿を取囲む森、其れを更に囲むのが城壁である。高さ22m幅25mの建造物が南北に1950m東西に1550mの距離で四方に囲っているのだから途方もない大きさである。
其の城壁の中は普段から騎士が警備の駐屯として使ったり、訓練場などの施設を置いたりしている。常駐している騎士は主に第一騎士団であるが、皇太后陛下が住まう南東区画だけは近衛騎士団のみである。
城壁が貴族街の区画間際にでんと建っている訳ではなく、25m程の距離を空けているのである。但、道としては非常に便利そうであるのだが、不審なものが近付かない様に見張っているのに人が往来されては判断が付かない。此の為、剣を持って警備する騎士たちのみが巡回し通る事を許されている。
勿論、其の大通りはリーシャたちが任されている派出所の土地に、接してはいるが区画外である。
そして、リーファ様は飛翔板を駆り堂々と侵入禁止の区画へと翔び去って行く。慌てて後に続くものたちは一様に顔は引き攣り血の気は失せ唯々居た堪れない許であった。
但、城壁を直接越えて行かず宮殿の東門へ向かっているだけ増しだと謂えよう。
否、本来なら中央東区画の受付で迎えが来るまで待機し、先導役と徒歩で目的地迄向かうのが一般的な慣例なのだが、リーファ様は受付に降りて要件だけ述べて直ぐ様南の宮殿へと飛び去ったのである。
そして、降り立ったのは南東区画の皇太后陛下が住まう中央宮殿の真正面、隣に在る近衛騎士団の騎士たちが住まう宿舎から慌てて人が出てくる。素早くチェロルがティロットの後ろに隠れ身を潜める。因みに以前来た離宮は更に南に在るのだが、まあどうでも良い。
「こ、困りますリーファ様、迎えが来るまで待って頂かないと」
「ハハハ、毎度のことだ慣れろ! 武器と飛翔板を預かってくれ、皇太后陛下にお目通り願う」
「判りましたから、ちゃんと手続きが済むまで此処でお待ち下さいね!」
帰りは直接壁を越えて帰れば楽だろうとの思惑が透けて見える。わらわらと宿舎から出てきた騎士たちに武器や飛翔板を渡していく。此の辺りも見越していたのだろう。
「はい、武器を預からせて貰います……ってリーシャ様?」
「えっ? あらリルミール様って近衛騎士様に為られたのですか?」
「否、未だ見習いよ。普段は城壁で訓練か警備をしているの。今日は休みで宿舎に居たんだけど急に呼び出しが掛かって出てきた所よ」
「へ、へー……、其れは災難だったよね。はい此の長刀と剣が刃物で後は籠手と飛礫ね。靴は後で良いかな」
「……多いわね。うん靴は後で良いよ。なんか怪しい言動ね、今日はどうしたの?」
「あー……余り気軽にしゃべれない事が多いな。まあ、取り敢えずリーファ様が拝命されていた件について皇太后陛下へ御報告に来たのです」
「ふうん、……籠手に飛礫とリーシャ様はリーファ様付きに為ったの?」
「否々、城壁の向かいに在る貴族街の派出所勤務ですよ」
「向かいって、彼の無駄に広い敷地にぽつんと建物が建ってる所?」
「う、うん、何か酷くない?」
「まあまあ、其れにしても良いこと聞いたわ」
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修正記録 2017-04-30 10:39
運び込むことができた → 運び込むことができたようである
「--」追加
幾つかの改行を追加
「リーファ様とマリオン先生の」追加
増しだといえよう → 増しだと謂えよう
一般的なのだが、 → 一般的な慣例なのだが、
ルビを追加




