54マギーも一緒
帝国暦82年にルドルド・ラギストア皇帝陛下が御退位為され、タリス・ラギストア・ルトアニアが皇帝として御即位為された。
ラギストアは領と為り管理はルドルド上皇の第一皇男子トロスト・ラギストアがグランストア大公家を拝命し執政の任を仕ること成った。
ルトアニアは元々、国の規模としては帝国より大国であったが為、周囲から戦争を仕掛けられる事も無く、他国の様に戦争や小競り合いで疲弊為る事も無かった。
其れでも他国は戦う技術や戦闘経験はルトアニアより豊富であるという自負が在った。だが、タリス皇帝陛下がルトアニアに嫁いでから15年に至る改革に依って、其の差は殆ど無いといえる。
いや、実際には飛翔板の親衛隊や飛翔艇、飛翔機を見せる事に由って圧倒的武力と技術力を誇示した。
そして、武闘大会はクラウト・デンバンサーが飛翔板を使って終始圧倒し優勝を果たした。が、其の頃には第一騎士団の殆どに飛翔板や飛翔機が齎され其程目立たなかった印象だ。結局一番の見処は唯一拮抗したラクス・ラクトールとの試合であったと云う。
何よりタリス皇帝陛下は皇子の中でも一番の才能と成す力が有ると裏では有名だったのだ。ラギストアという国の倨傲よりも帝国という基盤の磐石化を優先させたのだろう。
帝国としての首都はルトアニア領の首都トルレイスと為って遷都したが、其れ意外は大きな変化は無かった。
アリア殿下は第一皇女子となってからも変わらずに友好を深めて頂き、度重なるティロットの差し押さえに依り見事【剣技】を得て順風満帆の学園生活を送り卒業を迎えた。
ああ、5年目の武闘大会はアリア殿下の優勝で幕を閉じた。勿論、アリア殿下以外にも強豪たちが犇めいていた。が、チェロルは目立つのが嫌いだし、ティロットは一番の優勝候補ながら【酒】の御業を使わなかった。そして、リーシャ・グラダードはベイミィ・ハイストスと戦った。
「[岩よ在れ、其を射抜け]」
「[水晶よ礫と成りて其を穿て]」
共に飛翔板を駆りて交差する。本来なら同じ威力だろうがベイミィには【強化付与】がある。ぶつかり合うと岩の方が砕ける。
「[石灰よ其に在れ]」
石灰の粒により煙幕が張られ視界を塞がれる。だがリーシャは此の様な時のために防風防塵眼鏡をベイミィに頼んで用意していた。ちゃんと失敗を以て糧としたのだ。チェロルにいけずと思った事は後で謝っておこう。
だが展開していた大半の水粒系因子が石灰粉塵に吸われてしまった。というか一部石灰水と成って発熱してるよ! 迫りくるベイミィになけなしの水粒系因子で防御を築くが、チェロル切りされた飛翔板の尾で難なく反転に使われる。
「[水よ其に在れ]」
「[石灰よ其に在れ]」
上空から降り注ぐ石灰はベイミィから繋がれた気力の線が途絶えても、掌握圏を越えリーシャの頭上へと降り注ぎ、防壁として張られた水と混じって土泥と成った。然う、リーシャは【土】の御業を持つ。石灰水ではなく土泥と思い込めば僅かにリーシャの支配権が上回るのだ。例え発熱していても……。
土泥を制御下に置き直し、大波を作ってベイミィに向かい滑り降りる。
「[土水よ大波と成れ]」
リーシャは勝ったとと確信した。其処に音楽が聴こえてくる。見ればアリア殿下が例の箱に金属の花を突き刺した物体を、又もや持ち込んで来たようだ。
ベイミィの飛翔板が薄らと光に包まれ螺旋を描き土泥の大波を削り破って、其の上で勝ち誇って波に乗っていたリーシャの飛翔板を吹き飛ばした。破壊したわけじゃない。お互いの気力が充満した板だそう簡単には壊れないが、取り上げる事はできる。
足場を無くしたリーシャは何時かのルグスを殿下と同じだ。ただ防具は全て精密磁器を模倣して【岩】で創ったものである。御業任せに無理やり体勢を整えるものの華麗に宙を切り返して高速で舞迫るベイミィの飛翔板に対抗できる訳ではない。
何とか長刀の柄で飛翔板の先頭部を抑えるもベイミィの剣が首元に突きつけられた。
「参りました」
そして、負けた。油断しなければ結果は又違ったかもしれない。いや最初から音楽が掛かっていたならば明らかにベイミィが有利であったであろう。此処ぞという時に有効に使われたということである。
其れでも武闘大会の代表8人の1人に選ばれ戦ったのだから誇るべきだろう。全身真っ白の石灰水がやばそうなので慌てて洗い流してほっこりするリーシャであった。
ミルストイ学園の卒業後、帝国暦84年にリーシャたちはラギストア第二騎士団に所属した。リーシャとティロット念願の騎士である。他の2人は知らないが4人揃って居れば満足なのだろう。
武道大会で其れなりに活躍した御蔭か、第二騎士団には高待遇で迎えられた。入団当初は5人一組で小隊を組み行動する。リーシャたち5人は望むなら、ばらばらにせず其の儘小隊を組んで構わないと優遇された。5人? マギーも一緒である。いや意味分かんないし。




