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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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53闘技実習2

 午後からの授業は闘技実習である。騎馬は? 何を(おっしゃ)るうさぎさん、お馬さんだって午後からの予定はびっしりなのだ。

 という訳ではなく、馬たちの状態、特に怪我や体調を崩してないかを確認したり、放牧を行って精神的負担を溜め込まないよう配慮したりと、学徒たちの(ため)に良好な馬の状態を常に保つ努力が()されているのである。


「ふふん、大分(だいぶ)飛び板を使うものが増えたな。じゃあ今日は御業と合わせての訓練を()って見ようか」


 リーファ教導官は()う言い放ち組分けを行う。


 やはり最近の流行りなのか、飛翔板を使っての戦闘を組み立てようと()るものが後を絶たない。


「[水よ()()れ]」


 リーシャが当初行っていたように、木を加工して作った板を持ち込み(ちゅう)に維持した水に浮かべる事で、空を()ける算段だろう。

 池で起こした騒ぎは()れなりに噂が広がっていたし、選抜戦を見て同じように考えるものも出てくるだろう。

 覚束無(おぼつか)い足元を見れば()だ練習が足りてないのが(わか)る。水で擬似的に波を作り滑り始める()の向かう先は、リーファ教導官がでんと構えている場所だ。


「[砂糖よ()()れ]」


 リーファ教導官の前方に砂糖の粒系因子が漂い水に飲み込まれると、ガッチリ水の制御で抑え込んでいた木板がズルリと滑る。上に乗っていた学徒はひっくり返って地面に叩きつけられた。

 (かれ)此処(ここ)に居てリーファ教導官に教わっているという事は、(いず)れ飛翔板の機密を知れる派閥だという事なのだが、()れまたリーシャと同じく先走ってしまったのだろう。


()のくらいで制御を失うなら大技を使うな! 次の学徒!」


 チェロルである。黒光りする不思議な板を大事そうに抱えての登場だ。リーファ教導官の片眉が上がる。


「[水よ()()れ]」


 リーファ教導官と同じ様に粒系因子として使う。但し、此方(こちら)は水のと付く。一気に規模が(ふく)らみ霧と()って一面を包み込む。そっと手を離すと飛翔板はするりと浮かび上がり、チェロルはゆっくりと其処(そこ)へ移動する。勿論(もちろん)、一切が周りから見えていない状態だ。

 霧はゆっくりとリーファ教導官を包もうとするが、()の周りは完全な支配下である(ため)に入り込めず周囲をぐるりと囲む形である。()まり周りの人たちには見えなくなった。

 水の粒系因子には(しっか)りとチェロルの気が張り(めぐ)らされているから、()の様な御業を使っても()の中を(うかが)い知る(よし)も無いのである。


 気の線を水粒(みずつぶ)全てに数珠(じゅず)(つな)ぎで掌握する。(これ)は適性の()る物質に気を通す事で増幅させ有効範囲を上げているのだが、一番の目的は隠れる事なので普通の霧より見え難く操作している。

 といっても一所(ひとところ)に居るわけでなく飛翔板を駆使して移動しまくっている。もし霧が掛かっていなかったとしても()の動きを(とら)えるのも難しい。

 本来なら水流で()(ため)此処(ここ)(まで)速くは移動できなかっただろう。リーシャ様からせ……(いただ)いた甲斐(かい)があるというものだ。速度に乗って死角を突く。


「ギンッ」

「よし! ()れまで、御業を工夫しての攻撃は見事だ!」


 霧が晴れて行くがリーファ教導官しか見当たらない。リーファは(おもむろ)に手を伸ばしむんずと

何かを捕まえる。


「待て、()の飛翔板誰が(つく)った?」

「ヒッ! ……上げないよ!」

「取りはしないさ、私も(つく)って(もら)いたいだけだ……リーシャだな?」

「は、はい……」


 リーファ教導官はチェロルを飛翔板ごと抱えながら、リーシャの(もと)(にこ)やかに近付いて来る。


「リーシャ、話は()き出した。私はチェロルと同じ言霊属性持つのだよ。是非(ぜひ)とも同じものを(つく)って(もら)いたい!」

「は、はあ……構いませんけど、後で(よろ)しいのでしょうか?」

「ああ、勿論(もちろん)だ」


 リーファ教導官は個人指導を再開する(ため)、戻っていく。

 成る程、(たし)かに見る人が見れば()れの質まで(わか)るらしい。混合物質なら判断しかねるが鉄だけで(つく)った飛翔板ではあからさま過ぎるのか。などとリーシャは暢気(のんき)に考えていた。



 闘技実習が終わった後、リーファ教導官に指定された学園の講義室へ入ると数名の学徒が待ち構えていた。


「済まないが優先度の高い人物には声を掛けさせて(もら)った。1つ(つく)れば此方(こちら)でも手伝えるよう【岩】持ちも連れてきている」


 ルグス殿下も居ることに気がついて礼を()る。


「【砂鉄】は役に立たないと卑下していたのですが、飛翔機や()の飛翔板の御蔭(おかげ)で、日の目を見られます。今日は2度目ですね。深謝(しんしゃ)します」


 2度目と言いつつ感謝から深謝(しんしゃ)に変わっていたが、リーシャは突っ込まない大人である。一つ(つく)れば手伝って(もら)えるらしいのでとっとと始める事にしたようだ。先は長いのである。

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