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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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50通話機

 帰還の途に就く寸前に呼び止められた。何事(なにごと)かとメアリーさんも若干険しい面持ちであった。運び込まれたのは2台、15kgはありそうな遠隔気力通話器なるものだそうで、通称を遠気話器だとか実に呼びにくい遠話器とか通話器とかで良いだろと。

 何でも飛翔機は蓄魔(ちくま)器を積んでいて2機の其々(それぞれ)がルトアニアを治める皇族専用機と()れば、開発された(ばか)りの軍事規制が付いた超小型遠隔気力通話器を、()れに載せるのも(やぶさ)かではないそうだ。


 今回は色々と積んで帰る荷物は()ったが、3機と増えた(ため)に多少は余裕があるし、チェロルは()(かく)メアリーさんと別れて乗り込み、帰路を進むのだから有難(ありがた)い。

 先頭はメアリーさんだが【遠見】が使えるリーシャが航路を指示すれば、効率の良い巡航ができるので大変都合が良いのだ。

 少しチェロルが寂しそうな目をしていた。ああ、帰りは1人な上にメルペイクとも引き離されているんだね。だが(これ)(ばか)りは仕方ない、リーシャもベイミィも鉄や空気系統の御業を持っていないのだから。

 そんなチェロルを見かねたメアリーさんが、遠隔気力通話器を運んできた技師とごにょごにょと話しをすると、書類を受け取りさらさらと記載して何処(どこ)ぞに転送する。そしてメアリーさんの頷きに、予備で()ったのか運んできた工具箱からもう1台取り出した。


()れをチェロル様の飛翔機に取り付けて下さいませ」

()いのですか!」

此度(こたび)の遠征は姫様の我儘(わがまま)とはいえ、チェロル様の()した功績は計り知れません。ルトアニアが()れに(むく)いず苦痛を()いるのは(もっ)ての(ほか)です」

「ですが、アリア殿下には既に数々の部品を提供して(もら)ってます!」

()れは姫さまの依頼を遂行する(ため)の道具であって報酬ではありませんよ。受け取って(もら)わないと、私が姫さまやタリス皇帝陛下に叱られてしまいます」

「こ、心より感謝します!」


 軍事規制対象じゃなかったのかと、皇族専用機とならば特別に卸した最新鋭のものじゃなかったのかと、こっそり我儘(わがまま)って言っちゃたよね。まあ、チェロルの作り出す数々のものが今や規制対象なのだから、其処(そこ)に今回の遠隔気力通話器が加わった(ところ)で見るものに()っては何も変わらないのかもしれない。


 (ちな)みに、リーシャの【遠見】が頼られる一番の理由は帰りがリーシャンハイスへ向けてと、航路が若干変わっている(ため)だ。帰りもやはりオーエンス大森林を避け一旦北上し、旋回後はリーシャンハイスへ真っ直ぐ向かう進路を取る。

 本来ならば行きと同じように街道を目印に沿って進んでも良いのだが、リーシャの【遠見】を使えばというか【遠見】で来しなに周辺の(ほとん)どの地理を覚えた(ため)に、最適な進路を熟知できていた。

 ならばリーシャが先頭にと()るのだろうが、タリス皇帝陛下に専用機の移送を指名されている上に、御璽(みしるし)を掲げる機体を先頭にして進むのも周りの目が(はばか)れるのだ。


 ()()う、謎の現象を調査してきたというタリス皇帝陛下とアリア殿下は速度計700の制限規制を解かなかった。だが実際に()の現象を確認できたという。()る程度は現象の予測も立てているらしいが、後は技術者や研究者に(まと)めさせるとのことだ。

 (ただ)、止むを得ない時は()れを超えても構わないが、()の時は一気に超える事と注意があった。リーシャたちはよく(わか)らない(まで)も、()れを超える瞬間の領域に留まれば振動が蓄積されていき、最後には機体が崩壊する(おそれ)があるという警告は(わか)った。


此方(こちら)皇帝専用飛翔機の移送の任を拝命したリーシャ・グラダードです。間も無くリーシャンハイス西門に着きます」

此方(こちら)第二騎士団西門警邏(けいら)隊です。報告は受けております。()(まま)お通り下さい』

「了解しました」

『おおー()れ凄い便利だね! 門で止まらないなんて本当に凄いよ!』

「帰りのチェロルは何時(いつ)もの3倍喋ってますわね」

()(まま)宮殿の一角、皇太后の住まう区画にある離宮の1つに降ります。前に来た時と同じ場所です』

『日が暮れる前に帰って来られたのは良いけど、暗くなると地上は()(かく)飛翔機同士の位置確認が難しく()るよね! 何か明かりが灯せればお互いの場所が確認しやすいかも!』

『姫さまと相談して部品の手配を検討(いた)します』

『おおー部品が()るんだね! うん! (よろ)しくね! じゃあ、後ね、必ずしも皆が()の通話器を使えるわけじゃないと思うんだ! だから光の点滅を使った(すた)れた伝達手段を復活させてはと思うんだよ!』

『良い提案と思います。エミリア様にも相談してみます』

「遠気話器じゃなかった?」

「通話器で良いと思いますわ。此方(こっち)の方が覚えやすいと思いますわよ」

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