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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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48操舵者の誉

 天蓋の水晶硝子を「ガチャ、スー」と少し癖に為りそうな感覚を覚えつつ開けると、其処(そこ)には既に簡易階段が用意されていた。

 乱暴に飛び降りるのも(おそ)れ多いので、簡易階段は大変助かる。二人を交互に見遣(みや)るとリーシャ様お先にどうぞと意思が込められている。

 仕方無しに正面を確認すると案の定前方には、タリス皇帝陛下が満面の笑みで迎えている。一礼を()ってから、そろりと機体へ少しでも足蹴(あしげ)にしないようにと心掛け階段に足を運ぶ。



「試験飛翔の儀、(うけたまわ)りし(ほまれ)(かしこ)まって(そうら)へば、見事滞り無く遂行せしめけり。()()譜成(ふな)るを(たてまつ)る」

「うん、分かんないよー。(ただ)”すんなり”とか”させる”とかは()らないかなー。古めかしい言葉は苦手だから普通の言葉にして欲しいかな。(よう)は飛翔試験は手際よくやりとげて、()の記録を(まと)めたのが()れね」

「は、はい! (おっしゃ)る通りで御座(ござ)います」


 リーシャは適当に喋ったのがバレバレだった。どうやら皇帝陛下との会話に古い言葉は使わないで良いらしい。

 ベイミィがアリア殿下と古式の挨拶を交わしていたのが、頭に残っていたらしく謝罪の手紙を返上する儀式と同じに受け答えすれば良いと、勝手に思い込んでしまっていたようだ。


「うん、全て確認しているね。では、早速……ん?」

「陛下、(わたくし)めは()の会場にて警備を担当しておりました。()の折、チェロル様から躯体(くたい)()りましたが、実演操舵(そうだ)による説明を(いただ)きました。願わくば(わたくし)めに操舵(そうだ)者の任を(つかまつ)る事お許し(いただ)きたい所存で(そうろう)


 いや、この人も何だか古めかしい言葉使っているよね。そういえばルトアニアの方々、テリシア殿下御付のカルラ様や以前に記録係で見かけた学徒の方も微妙に違うがそんな感じだったはずだ。

 ルトアニアは地域によって変わるのだろうかとリーシャが考えていると、タリス皇帝陛下が(のたま)(たもう)うた。


「いいえ結構です。チェロルちゃん行きますよー」

「ヒッ!」


 流石に()れは不味いとリーシャも焦りを感じ奏上(そうじょう)することにした。


(おそ)れ多いことでありますが、奏上(そうじょう)の許しを願い(たも)うと(ぞん)じます」

「言って見なさい」

「はい、チェロルはとても気が弱いので私達から離れるのは心配なのです。心許(こころもと)ないかと思われますが、不肖(ふしょう)ながら(わたくし)めが操舵者(そうだしゃ)の任を(つかまつ)りたいと(ぞん)じます」


 勿論、先程の近衛騎士様のお言葉を真似している。(ただ)()(まま)真似たのでは(あき)らかに馬鹿にしていると感じさせかねないので、カルラ様風に変えているのだろう。

 何よりタリス皇帝陛下が望まれるのは御業を使わない操舵(そうだ)であろう。先程の近衛騎士が練習もせずに自信満々に出しゃばってきたのは鉄系の御業を持っていたのだろう。だからタリス皇帝陛下は断ったと予想するのは当たらずと(いえど)も遠からずではなかろうか。

 ならば、リーシャの方が()しである。何せ一度だけメルペイク安全帯……もとい服型安全装置を着込んで単独飛翔を行ったのだ。0より1である。更に先程、後ろに乗って()んできたのだから尚更である。


「うん、()れでも良いよ。じゃあ準備して早速飛んじゃおう」

「しかし()れでは護衛のものが!」


 タリス皇帝陛下はビシッとチェロルが抱えるメルペイクに指をさした。


「ヒッ!」

「護衛ならメルペイクちゃんが居ますよ。学園に居る従魔は一律に護衛登録してますよね。でしたら書類でも認められた立派な護衛ですよ! ねメルペイクちゃん?」

「チュバチュン」


 リーシャたちは初めて本当の屁理屈に遭遇したのかもしれない。というか()れ「為せば成る」じゃなかったか?


 飛翔機の困ったところは、飛翔板では追いつけない速度で巡航する事にある。飛翔板の限界速度すら通常の服装では厳しいだろう。

 (それ)れ故、両翼にある空気推進機関の水平転回が終わる頃には、飛翔板の護衛は置いてけぼりと()ってしまう訳である。


 どうやらタリス皇帝陛下の近衛騎士は、アリア殿下の飛翔機とチェロルの飛翔機を借りて傍らを()ぶようだ。アリア殿下の飛翔機を借りるという(おそ)れ多いことをしてでも護衛に付きたいのだろう。


「じゃあメルペイク、今度は私と一緒に()びましょうか」

「チィバ」

「ごめんなさいね! リーシャ様、私がこんなだから」

「大丈夫だよ。()れは(とて)も名誉な事なんだから逆に()れを(うば)ってしまって申し訳無いくらいだよ。では行ってくるね」

「行ってらっしゃいー」×3

「あら、ティロット居たのね」

「ベイミィ酷い!」

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