46ちゃっかり
アリアが気づくと何時の間にかメアリーが傍らに控えていた。
「ん、メアリーですか。其方の様子、えーと、飛翔機の製作に至った経緯から教えて貰えますか?」
「はい、姫様。チェロル様が飛翔機の構造や構築手順を説明している折に、実演した方が説明し易いとの意見が在りまして。ならば部品は1機分全て揃っていますと、興奮気味の技術者たちから進言が為され、あれよあれよという間に序ですから此の際、1機の飛翔機を実演制作してしまいましょう、という話に至った次第であります。
まあ、技術者たちも躯体の部分さえ作って貰えれば、後は自分たちで完成させる積りでいたのでしょう」
「あー……、判ったわ。其れで何の位で終わりそうなの?」
「リーシャ様からもう部品を組み込むだけだからと送り出して頂きました。私が最後に確認した処では外装の部品は粗方組み上がっておりましたので、残りは計器類の取り付けと水晶硝子管類の制作を残すのみと思われます」
「分かりました。お母様、飛翔機1機分の制作過程を見せれば技術者たちには十分でしょう。之以上はチェロル様を困らせるだけですわ。彼女たちの帰りの時間も考えないといけませんし、そろそろお開きとして貰いましょう」
「アリア、盛大に話しを誤魔化して居りませんか?」
「だって! 此間も枢機院から散々苦言を呈されたのですわ。最近はちゃんと段取りを踏んで正しく手続きも通して居りますわ。其の様な最中ですのに、お母様からまで責められては悲しいですわ!」
「あ、ああ、其れは配慮が足りなかったよ」
「いいえ、私も考えが及ばずだったのは確かです。失敗を糧とする何処ぞの慣わしより、確りと指摘して貰える方が何倍も有り難いですわ」
「ふふふ、こんなのが育っちゃうものねー」
「……」
勿論、洗練された無駄のない近衛騎士たちは「そろそろお開きとして貰いましょう」の意を酌んで速やかに手回しを進めており、イザベラにも終了の合図を送っていた。
ティロットはイザベラ様から訓練の終わりを告げられたので、アリア殿下の許に……では無く其の傍らにいるメアリーさんに次の予定を確認しようと歩み寄ると、丁度、タリス皇帝陛下のアリア殿下への先程の発言である。何となくマリオン先生の目を思い出したのは何故だろう。
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宮城の一角に3機の飛翔機が並んでいた。其の中にある1機だけ鉄の銀色がギラつく機体なのは、未だ塗装が完了していないからだ。此の場に何かと便利なアリア殿下や意外と気の利くティロットが居ないのだから、態々塗装を買って出る奇特な人など居やしない。
というか迂闊にリーシャたちが塗装迄も遣り始めると、技術者たちが貴族様に塗装迄させるなんて、とんでもないとし自分たちで遣ると言い出しかねない。急ぐものでもないので其の儘なのである。
「此れで完成だけど飛翔確認して見ようよ!」
チェロルの提案に特に反対する理由もない。塗装は錆止めが主な目的だし、メルペイクとチェロルが居れば動力が無くても翔べるのである。
「ええ、良いですわよ。計器類の確認と空気推進機関の稼働確認、後はー両翼の可動機構の確認ですわ。チェロルの飛翔機に取り付けた時は挙動を確認しながらでしたけど、今回は全て一気に組み立てましたから、空気袋とか部品点数が多いだけに気になりますわ」
「うん、じゃあ私は留守番しておくよ気を付けてねー。えっ! ベイミィ引っ張らないでっ」
「リーシャ様も行きますわよ」
「二人乗りじゃないの?」
「来しなは3人乗りでしたでしょ。私も楽がしたですわ。計器を読み上げる役は任せて下さいませ」
「そ、そう言えば宮城の上空を飛ぶのって許可が要るんじゃ無いかな?」
「許可しますよ。私も後で試運転しますからー」
「あ、はい、感謝致します。えー、あっ畏まりました」
「未だ塗装が済んで無いのね? 塗料はあるのかしらってアリアの近衛騎士は随分と準備が良いというか予測が早いというか、イザベラの【念話】と【統率】かしら」
早々と用意されていた塗料を驚きつつも受け取ると、タリス皇帝陛下自ら塗装を始める。いや、アリア殿下も加わっているようだ。
慌ててリーシャたちや技術者たちが自分たちで遣りますと願い出るが、時間の無駄ですよと取り付く島もない。というか、メアリーさん曰く塗装には拘りがあるらしいので、任せておくのが無難らしい。
そして、塗り上がった両翼には予想通り皇帝陛下の御璽があった。
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修正記録 2017-04-13 07:14
序ですから → 序ですから
句点追加
粗方組み上がっていましたので → 粗方組み上がっておりましたので
ルビを追加




