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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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42息抜き

「ではアリア、後ろの子が限界の(よう)ですから早く済ませ()げましょう」

「ええ、ではベイミィ様、チェロル様、二方(ふたかた)からの伝へ知りたる返上の儀、()れを受けること(はばか)らず相成(あいな)(そうろ)う」

「御返りに、か、(かしこ)まりて、痛っ、舌噛んだ! ……(そうろ)う」


 ベイミィはアリア殿下の申し出を受ける意を示し、手に持っていた手紙を舌を噛みつつ差し出した。アリア殿下は(にこ)やかに会心の微笑(ほほえ)みを浮かべながら頷き、手紙を受け取った。言葉を変えたのは、()れは古い儀式ですよという合図であり、ベイミィも()れを察して舌を噛みつつも儀式に(のっと)って(こた)えたのである。面倒だね。


「良く出来ました。中々見処(みどころ)()る子じゃない。()の文を渡して返して(もら)(まで)が帝国の古い慣例なのよ! 面倒な事よね。まあ詳しくはメアリーにでも()いてね。アリア行きますよ! (くだん)の謎の現象とやらを飛翔機に乗って調べに行きます」


 礼を()っていたメアリーの顔は見る見るうちに血の気が引いていく。勿論、タリス皇帝陛下の近衛騎士団たちもだ。リーシャたちは何が起こっているのか余り理解できずにいる(ため)か、ぽかんと眺める(ばか)りである。


「タリス皇帝陛下、お待ち下さいませ。飛翔機には安全の(ため)に【鉄】系統の御業持ちをお供に同乗させるべきですし、皇族の御方が二人固まって搭乗するなどとんでもない事で御座います」

「飛翔機で発生するという謎で危険な音って()うのは、先頭を飛ぶ機体では聞こえもせず届きもしなかったらしいじゃない。付いて来られると巻き込んでしまうから、護衛は要らないはですよ。()れから私達二人の御業であれば、鉄とはいえ大気に乗る(ため)の形状を持ち大気を内包した構造を持つ機体を操るのは造作も無いこと(しか)りですよ」


 何とか反応できたメアリーが心変わりをして(いただ)こうと具申するも、けんもほろろに断られた。(しか)し、近衛騎士団はそうも行かない。


「へ、陛下、お待ちを……」

「仕方ありませんね。()れは勅令です。首都トルレイス上空1500m(まで)は飛翔板での警護を認めます。()れ以上は許しません……というか病人が出ますよ。宜しいですね」

「御意に」

「タリス皇帝陛下、上着を」

「大丈夫ですよ。高高度には(あが)りません。()れに温度調整も得意ですよ」



 ()の日、首都トルレイス東に()る漁村にて、海側から()こえてくる謎の爆音と体を揺さぶる振動に龍の咆哮だと大騒ぎに()ったとか(なん)とか。

 まあ、()まりタリス皇帝陛下とアリア殿下が乗る飛翔機は、トルレイスの東へと向かい海上に出てから高速飛翔の実験を行ったのだ。

 二人は共に【大気】の御業を持つ。空の風を読み()れに乗って限界速度を越えることは楽に行えるし、空気循環機を使わずとも大気の成分を直接感じ変更が可能であった。


「お母様、今日は随分と強引な手段を使われたのですね。宮殿も宮城も多分、大騒ぎですわ」

「たまには()れくらいしてでも外に出ていかないと息が詰まるのよー。()れに此間(こないだ)()の飛翔機とやらを見る機会がなかったからねー。チェロルちゃんは素晴らしいもの作ってくれたよね。こんな凄いもの作って(もら)ったんだから、()れに影を射す事柄が()れば直ぐに調べてあげたいんだよー。建前としてはね」

「本音は?」

其処(そこ)に未知の領域が()るんだよー。現象が存在するんだよー。()の目で確かめてみたいじゃない!」


---


「メアリーさん御業のことを()くのは不謹慎ですが、タリス皇帝陛下は【瞬間転移】を御使(おつか)いに()られてルトアニア(まで)来られたのですよね。子供の頃に散々瞬間転移は長距離転移をしてはいけない身体の御業より危険だと教え込まれたのですが……」

「ええ、()れで正しいですよ。リーシャ様。【瞬間転移】の御業を授かる確率は非常に低く()の大陸に十数名しかいらっしゃらないと云われています。大昔に遠くに転移しようとして上空や地下に移動して多くの方が亡くなったと伝えられています。リーシャンハイスでも有名かと思いますがタリス皇帝陛下は【飛翔】の後天御業を御持(おも)ちでいらっしゃいます」

「確か幼少の頃はリーシャンハイスの空を飛び回っていたとか聞き及んでおります」

「【飛翔】を獲得するまで【瞬間転移】で空に上がり他の御業(大気)で飛び続けたらしいのです」

「はあ」

「【瞬間転移】で見えない所に移るのは危険ですが、()べるタリス皇帝陛下なら遠くに見える空へ移るので安全です。後は()れを繰り返せば直ぐルトアニアに着きます」

「【瞬間転送】とは仕様が違うんですね」

「ええ、【瞬間転送】は送り先の人物やものを想像して深く心に刻んでから送りますが【瞬間転移】は方角を指定して転移すると云われております」


 ()の会話に何故ティロットやベイミィ、チェロルが居ないのかって? ティロットはアリア殿下の近衛騎士団が行っている訓練を満面の笑みで見学させて(もら)っているし、チェロルはベイミィを盾にしながら飛翔機に関わる技術者たちに囲まれて説明を行っている。


「と、という訳で、()の飛翔機は離陸時に先ず両翼の推進機関を垂直に展開してから稼働する事で、機体前方を浮揚(ふよう)させ……」

()の、実際に離陸して()っても宜しいでしょうか」

「ヒッ!」



---

修正記録 2017-04-09 06:57


チェロル様の二方(ふたかた) → チェロル様、二方(ふたかた)


理解できずいる(ため)か、 → 理解できずにいる(ため)か、


幾つかのルビ追加とルビ範囲の調整


息が詰まるよー。 → 息が詰まるのよー。


所に飛ぶのは危険ですが、遠くに見える空に飛べ安全 → 所に移るのは危険ですが、()べるタリス皇帝陛下なら遠くに見える空へ移るので安全

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