41謝罪のあり方
其の後、2機の飛翔機は差し障りなくルトアニアまでの航路を進んだ。懸念された南への進路変更も、リーシャの【遠見】とメアリーの【空間把握】による体感速度、此の2つから進路変更の地点を導き出し、称賛に値する航路と為った。尤も、リーシャが【遠見】に依って常に街道を捉えていたので、多少方向に狂いが在っても修正は可能ではあった。
一方ベイミィとチェロルの乗る飛翔機に届いたアリア殿下からの手紙、開けない訳に行かず渋々開封したようである。内容は勿論、高高度に於ける高速飛翔を実施したことで起きた、謎の現象に対する謝罪である。
アリア殿下としては御座なりにできない事柄かもしれないが、ベイミィとチェロルとしては堪ったものではない。受ければメアリーとアリア殿下に非が有ったことを認める意味に成り、更にはメアリー、ベイミィ、チェロルにはアリア殿下を謝罪させた汚名を被ることになる。
由々しき事態である。チェロルはガタガタ震え、ベイミィは真っ青である。悲鳴を上げたいのは山々だが、其れよりも此の事態を解決しなければならない。
「あー、やっぱり真っ青に為ってます。あっ伝達事項だね。ええと[アリア殿下に於かれましては御心遣い痛み入ります。但、綴り給わる御文此れ畏れ多きこと恐縮至極に存じます。就きましては御心遊ばすに留め、御文を御返上奉らんこと願えれば恐悦の至りに候。 詰まり此方は全然平気だったんだから、こんなの貰ったら困るだけです勘弁して下さい!]って書かれていますね。多分最後のは此方宛だけど全部書いておきますね」
「お願いします。此れも古い仕来り、慣例に倣っての事です。心許せる信頼するものに対しての証を立てる意味が在るのです」
「種明かしは帰ってから実際に手紙をアリア殿下に返してからになるのですか?」
「ええ、姫様の誠意を受け取り判断し返すことができれば誉れと成り皆から称賛される。此れを以て謝罪と為す。立場上、おいそれと謝罪できませんからね。此の様な変則的な様式と成っているのです」
「謝罪を受ける方も大変だね! 高度4000m、速度計550、出力目盛り560」
「はい、記録。循環器の定期調整しました。内部気圧問題なし。因みに手紙を返上する事に気付かなかったらどうなるのですか?」
「此方から助言致します。姫様の人を見る目も試されていますから、ベイミィ様たちが誉れ高き行動を行えば転じて姫様の誉れと為ります」
「うわー、知ったらチェロル卒倒ものだよね」
「ひえー、ベイミィ! チェロル! 心から応援してるね!」
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「上がる時は下を覗くと背筋にゾクリと来ましたけれど、此れだけ高く上がっていれば、余り怖さを感じないものなのですわね。飛翔板に乗っている時も高さに怖さを感じませんが、自分で重心を調節して飛翔する事に集中しているからでしょうか。あら、区画整理された緑地帯がありますわね」
「ベイミィ現実逃避良くないよ! 帰ってきてよ!」
「高度3000m、速度計555、出力目盛り557、空気循環機の定期稼働を行います。内部気圧計は若干高いので調整します。全て記録しました」
「メルペイクも何か言ってあげてよ!」
「チュバチチチ、チュン」
「ええそうね、誠意を見せれば良いのですわね」
「会話が成立してるよ!」
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「うわー、街が広い! リーシャンハイスぐらいの大きさが在るんじゃない? 高度995m、速度計250、出力目盛り250」
「記録しました。空気循環機の停止及び外気隔壁を開けます。建物の大きさが違う。学園の建物も大概だったけど此処の中心街は一つ一つが大きすぎます」
「遠くに見えるのは海? 始めてみたスイタル湖よりもずっと大きいなんて信じられないね!」
「此処から見える範囲での海はスイタル湖より少し小さいですが、湾状、詰まり海が陸地側に大きく入り込んだ状態のものが見えているだけですから、其処から繋がった先の外洋は大陸よりずっと大きいんですよ」
「もしかして彼の一際大きく聳える……てか大きすぎじゃないですか」
「何だか巨大な岩山みたいだね! 上の幾つか見える緑は庭?」
「ええ、あれだけ大きいと下に降りるのも時間が掛かりますから宮城内に幾つかの庭が存在しております」
「騎士が飛び立ちましたね飛翔板に乗っています。此方に向かっている様です」
「第一騎士団か、それともアリア殿下の近衛騎士団でしょうかね。到着の連絡は既にしておりますから、先導して着地場所へ誘導して頂けるのでしょう」
「おおー、騎士様に先導して頂けるのですね!」
「彼の紋章は……タリス皇帝陛下の近衛騎士団です。まさかねぇ」
「ハハハ……其の雰囲気知ってます。アリア殿下が想像し得る埒外の行動を執られたんですね」
「何かゾクってきた!」
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リーシャたちの飛翔機は騎士たちに先導され宮城の一角へと降ろされた。メアリーさん曰く此処はタリス皇帝陛下が住まう区画である。だが即位したばかりで遣る事が色々と在る為に、未だリーシャンハイスの宮殿にて政務を熟している筈だ。
何故此処に降ろされたのかは礼を執る騎士たちの間を縫って進み来る、威厳を持った女性と少女で理解できた。
「チェロルとベイミィですね。此度は娘のアリアが粗相をしでかした聞き及んで、礼を欠く訳にも行かず私自ら駆けつけた次第です。大変でしたね」
「め、滅相も御座いません」
「チェロル気をしっかり! 倒れちゃ駄目!」
ベイミィは何とか返事を返せたがチェロルはベイミィの後ろで、フラフラと意識を失いかけてティロットに抱えられている状態だ。
タリス陛下は此の件を利用して、息抜きに来たと予想するのは邪推だろうか。
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修正記録 2017-04-08 09:20
「、此の2つ」追加
恐悦至極に至り候。 → 恐悦の至りに候。
色々在る為に未だ → 色々と在る為に、未だ
句読点とルビを追加




