39空は計測作業
アリア殿下が高高度を確認して来られた結果、空気袋の空気を減らしたり仮設置で付けられた幾つかの計測器の調整が完了できたりと、其れなりの成果を出せたようだ。
例えば、外部と繋がる管の一つに水晶管を繋げ、其の中に円柱形状の隔壁を入れたものが、高度を変える度に問題なく移動するのを確認できた。簡易気圧計である。
気圧計代わりの水晶管には、海抜2000mまで飛翔板で計測した情報から目盛りを加え、其れ以上はアリア殿下の【大気】の御業から得られた感覚からの推測と、メアリーの【空間把握】の御業から得られる情報を合わせた判断で目盛りを加えた。詰まり感、適当である。
他にも全面に付けられた風圧計や内部気圧計など色々とあるのだが、面倒なので此処迄にしておく。
要するにアリア殿下曰く空気循環機の調整は、此等の計測器から判断しなければ為らない難しいものらしい。因みに空気循環機は空気推進機関の初期試作品を改変した応用品である。
さて、アリア殿下は当初の口振りでは、然もチェロル様お一人ではと情に訴えて付き添いを促したのだが、蓋を開ければというかニコニコと微笑みながら記帳具と調整指示表を手渡してきた。
「唯アルトニアへ向かうだけでは勿体無いですわよね。折角ですから高度毎の空気推進機関の出力値と速度計の値を記録しておいてね。其れから、先にもメアリーが述べた通り高度が上がると次第に空気が薄く為りますのよ。ですから、其の際に此の調整指示表を使って定期的に内部気圧計の変化を確認しながら、高度毎に定められた調整を空気循環機に設定してから、稼働して貰う必要があるのですわ」
「は、はあ」
チェロルが素早く逃げた。いや君は操縦者だから関係ないと思うよ。あっ1人だと高高度を飛ぶ時は調整が必要なのか……まあチェロルなら大丈夫だ。
相談の結果、チェロルの飛翔機には1人で何でも器用に熟すベイミィが乗り込み、メアリーさんが操縦するアリア殿下の飛翔機には二人一役のリーシャとティロットが乗り込むことに為った。
「ああ、そうですわ。向こうで離着陸用の空気推進機関を実際にせっ……ティロット様は近衛騎士団の訓練を見学するのでしたわね。私も幼い頃は1日中眺めていたものですわ」
アリアは終始笑顔だった筈のティロットの悲しそうな顔に気がついた。空気の読める淑女は匙加減を理解しているものなのである。
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澄み渡る青空の許……いや雲は在っても下だから当たり前なんだけどね。メアリーの操舵する飛翔機が子連れの親鳥の様にチェロルとベイミィが乗る飛翔機を連れて先陣に進んでいる。
メアリーは徐々に高度と速度を上げて行く中で気づいた事が幾つか在る。姫様が求める資料作成の為に高度を上げて進んでいるが、右手に見えてきた3000~4000m級の雪を被った山脈群、此等と同じ高度若しくは低かったら天候次第で。いや、此の速度である。方角を間違えた時点で衝突の危険性が在っただろう。
外の気温は相当低いことが判る。密閉されているとは言え定期的に空気を入れ替えているのだから、其れなりに冷えてくる。遠くに見える山々の頭頂が雪で覆われている訳が犇々と伝わる。勿論、上空は寒いからと何度か経験した口振りのアリア殿下から聞及び、全員が厚着をしてきている。
「今高度6000mを越えた! 速度計650……出力の目盛りは700かな」
「了解、記録しました。空気循環機の定期稼働を行います。内部気圧計問題なし。航路上に街道がありますね」
「リーシャ様、情報助かります。航路にズレなく進めている事が確認できました」
メアリーは些か緊張していたようだ。片手を操舵から離しグーパーと握り開きを繰り返してから手を入れ替えて同じことをする。
アリア殿下の護衛として十分に鍛えられ【武技】も獲得している。だがいきなりの此の速度だ。其れなりに重圧を感じている。不謹慎だが最初の同乗者が此の子達で良かったとさえ思っている。アリア殿下でなくてと。
「高度8000m、速度計870、出力は限界値です! やっぱり帰ったらこの機体にも両翼に推進機関を付けたいね」
「記録しました。空気循環機の定期稼働を行います。内部気圧計は少し高めだけど問題なしです。あれほんの少し街道がズレてきてる?」
「予定通りですリーシャ様。少し機体が重くなりますが帰りに積めるよう、推進機関2台と必要な部品を発注しておきましょうかティロット様?」
「うん! 帰ってから皆で作ろう!」
「では、リーシャ様、必要な部材を箇条書きお願いします」
「了解」
メアリーはリーシャから部材発注表を受け取ると自分の印を加え【瞬間転送】で宮城へと送った。ティロットの優しさにほっこりとしながら。
「高度10000m、速度計850、出力限界値! 速度落ちた?」
「私の御業で確認する限りでは速く為ってますね」
「記録。定期稼働しました。内部気圧計問題なし。航路上の谷間に街道が重なって、また逸れていく感じです。更に前方に山岳地帯が見えます。其れから南には一面森だからオーエンス大森林なのかな」
「其れでしたら予定進路に殆どズレなく来れてます。どうやら追い風に乗っているようですね。体感で言えば1200ぐらいでしょか」
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「何だか此の長椅子だと乗馬をしている気分ですわ」
「明日から本格的に騎馬の授業始まるよね! 人馬一体を身につけるよ!」
「そうですね、貴女の場合は傍から見たら馬しか居ないように見えるわよ……」
「メルペイクがもう少し大きくなったら騎乗? 鳥乗? できるよ!」
「今の大きさが一番良いですよ。大きくなったら此の飛翔機に一緒に乗れなくなるわ」
「チェチチ、チバババ」
「そろそろ高度確認した方が良いよって」
「……ええ、有難うメルペイク」
「チバチバ」
「其れは判るわ! 「どういたしまして」ね!」
「構いませんよ! だよ!」
「……」
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修正記録 2017-04-07 07:13
下の 修正日 2017-04-05 06:13 → 2017-04-06 06:13
orz
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修正記録 2017-04-06 06:13
速度を上げていき気づいた → 速度を上げて行く中で気づいた
「 アリア殿下の護衛として十分に鍛えられ【武技】も獲得している。だがいきなりの此の速度だ。其れなりに重圧を感じている。不謹慎だが最初の同乗者が此の子達で良かったとさえ思っている。アリア殿下でなくてと。」追加
リーシャ様、少し機体が → リーシャ様。少し機体が
「ティロットの優しさにほっこりとしながら。」追加
何だか此の長椅子だと → 何だか此の長椅子だと
貴女の場合、傍から → そうですね、貴女の場合は傍から
追加{
「メルペイクがもう少し大きくなったら騎乗? 鳥乗? できるよ!」
「今の大きさが一番良いですよ。大きくなったら此の飛翔機に一緒に乗れなくなるわ」
「チェチチ、チバババ」
「そろそろ高度確認した方が良いよって」
「……ええ、有難うメルペイク」
「チバチバ」
「其れは判るわ! 「どういたしまして」ね!」
「構いませんよ! だよ!」
「……」
}




