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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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35離着陸の着想

 チェロルは思考の渦に取り込まれている。()れでいて、しっかりと【水】の粒系因子を操作して、飛翔訓練に(いそ)しむ二人の殿下を、光の屈折を変えて見えなくしているのだ。付け加えると自分を支える(ため)に【水】の粒系因子を飛翔板に当てて揚力(ようりょく)を与えているのだから器用なものだ。ああ【器用繊細】の御業が有るのか、だが、(これ)(いず)れ【分裂思考】の後天御業を得るやもしれない。

 チェロルが乗る飛翔板は、両側が丸みを帯びたものではなく片方は槍の穂先の様に(とが)り、もう片方は少し(せば)まっているが丸みも(とが)りも無く(ただ)、真っ直ぐに切っただけと()っている。余談だが、近頃は最新鋭の精密磁器型六角多孔(せいみつじきがたろっかくたこう)の飛翔板をリーシャに作って(もら)い寝室に持っていくほどのお気に入りである。


「うーん、飛翔板の全体に水の粒が当たってるから、安定して重心を保ってるんだよね。中央だと玉乗りして遊んでた時ぐらい不安定だよ。両翼側に分散すると次第に安定してくるけど、飛翔機だと前後の重心も考慮(こうりょ)しないとダメなんだよね。あっ、今ある中央の推進機を使えば安定するかな! だけど中央の推進機は余り(いじ)りたくないなあ、少しの調整で済む方法かー」

「何か良い着想が(まと)まりましたか?」

「ヒッ!、う、うん一度仮組みしてみて確認するよ!」

「では、後で此方(こちら)に運ばせますわ。テリシアが慣れてきましたので少し山側の方まで移動しましょうかと思いまして」

「姫様、ラエルに連絡をしておきましたので、直ぐ届けて(もら)える手筈(てはず)にしておきました」

「あら、ありがとう。と言う事だそうですわ」

「うん、分かった……りました。後で確認してみます!」


 チェロルは敬語を使わなければと気づいて言い直したようだ。謙譲語は流石に普段は止めて欲しいとアリア殿下の御達しである。

 ちなみに玉乗りはリーシャとベイミィがグラダード邸の庭で、岩玉と水晶玉を競い作っていて、チェロルとティロットは()の玉の上に乗って遊んでいたという話である。ティロットがひっくり返って、()の遊びが禁止に()ったのは()(まで)もないだろう。

 テリシア殿下は風に乗るということを理解したようで、飛翔板を重心移動で巧みに操り右へ左へと風の波を移動しては滑り降りていく。山際は特に風の流れが複雑だから面白いようであった。


「皆様、妹テリシアの(ため)に時間を()いて警護して(もら)い感謝(いた)しますわ」

「私からも感謝しますわ。皆様の御蔭(おかげ)で今日は息災(そくさい)に飛翔訓練が終わりましたわ」


 チェロルは()のお二方の会話にベイミィが混じれば、お嬢様言葉で目眩がしそうだと密かに恐々としていると、両殿下が近付いて来る。


「チェロル様の()れから()さる作業の(ほど)を見させて(もら)って(よろ)しいですか?」

「ヒッ! ……どうぞですわ!」


 チェロルなりの丁寧語なのだろうか。全員が演習場へ降りてくると見張っていたかの様に現れた侍女のラエルが、運んできた2台の空気推進機を飛翔機の横へ下ろす。殆どが鉄で作られていて相当に重かった(はず)だが【砂鉄】の御業で軽量化しているようである。

 皆がゾロゾロとチェロルの後に続いて飛翔機を囲むから、降りようとしていたマギーさんが何事かと浮かない顔をしている。


「マギー、()れから飛翔機を改良するんだって、チェロル手伝うよ推進機を何処に取り付けるの?」

「両翼に機体から1m離した所ぐらいにだね! 前の方に仮で付けて重心とかの配分を見たいの!」

「じゃあメルペイク接着係だね。私が空気推進機を支えるから、チェロルは砂鉄で位置を指示してくれたら良いよ」

「チェロル、私も手伝いますわ」

「私もね」


 リーシャ、ベイミィ、ティロットと次々と手伝うものが増えていく。マギーは最初からメルペイクを抱えて手伝っている。見る見るうちに両翼へ空気推進機は取り付けられ、操作盤も操縦席へと取り回しが完了する。


「じゃあ稼働試験いくよー」


 両翼の前側に固定された空気推進機が、上から空気を吸い込み下に吐き出す。飛翔機の機体は先頭部のみがゆっくり浮き上がるが後部は地面に付いた(まま)()まり機体は斜めに傾いた状態である。機体中央にある空気推進機を稼働させると、機体は斜めの状態の(まま)ふわりと浮き上がった。


「ああ、なるほど機体が浮き上がって斜めになると、両翼の推進機は固定されているから、出力を維持する限り(三角)の形で安定する。中央の推進機が稼働して両翼の推進機と出力が釣り合ったら上へ上昇するのか」


 エミリア様が解説してくれた通りである。皆はその解説で頷いている。テリシア殿下も周りを真似て頷いている。


「想像以上に上手くいったよー。()れなら余程(よほど)不器用じゃない限り適正な御業が無くても安全に離陸ができるよ!」

「流石はチェロル様、感謝(いた)しますわ。()れだけ材料が()れば容易に発注の圧力が掛けられますわ!」

「ヒッ!」

「お姉様のそつない黒さが素敵ですわ!」

「あ、後は両翼の空気推進機を機体推進にも使えるよう、垂直水平の可動機構作るだけですわ!」



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修正記録 2017-04-02 08:02


1m話した → 1m離した



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