28空の三角
帝都首都リーシャンハイスの上空に、編隊飛行を取るアリア殿下の飛翔部隊が通過する。先頭をエミリア親衛隊長が務め其の後ろに、2名3名と並び続く綺麗な三角を形作っている。
6名の作る三角形の後ろに続くのは、アリア殿下が搭乗なされる新型飛翔機である。下から見遣ると両翼には、皇族が乗る専用機である事を示す紋章が描かれていた。
新型機の両脇に1名ずつ先頭の三角2辺の延長上に配置し、更に後ろには5名が真横に真っ直ぐ並ぶという此れまた三角を形成する配置であった。
此処に来るまでエミリアの厳しい配置指導と最近の飛翔訓練は此れに当てられていたのは云うまでもない。というか新型機の両翼に何時の間にか皇族の紋章が描かれていたらしい。
空に描かれた編隊飛行の陣形は綺麗に揃えば揃うほど威容に怖ろしく権威を見せ付ける様である。
リーシャンハイスの住民たちは空に描かれた三角の陣形に驚き、指差す者も居れば騒ぎ立てる者も居る。中央の大きな機体を見遣れば皇族専用機と分かり慌てて礼を執る。其の様な光景は編隊飛翔部隊が南下する進路の帝都各地で見られた。
最近ではタリス大公の乗る巨大な物体が帝都の空を横切った許りだが、其れとはまた違った威容さだった。
明らかに騎士団に所属する風体であり、中央に位置する機体の両翼には皇族の御璽が描かれているのだ。鳥以外に空を飛ぶもの自体少ないのだから、空を飛ぶ騎士団など見たことがない。
リーシャは【遠見】が使える為に逆に辛かった。先程からもの凄い注目を犇々と身に感じている。
街を見遣れば指差すものも居れば此方を見ながら何やら話し合うものたちも居り、仕舞いには礼を執り始める始末に心が折れそうだ。
ただ只管に騎士と為れば此の様な事は日常茶飯事、何時如何なる場と為りても威風堂々と構え心乱さず品格を示せと内心に繰り返すだけであった。
だが実際の騎士であれば遠征から帰還して凱旋する場合は、街の手前で身なりを整えるぐらいの事はするだろう。大丈夫! 殆どの人々からは遠くてよく見えていないから……え。
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宮殿の一角、皇后陛下の御座す宮殿内にある離宮の1つをタリス大公は使っていた。
庭園の奥にある衛兵たちの訓練場にはタリス大公のルトアニア親衛隊の一部とリーファ教導官たちの姿が見える。
「殿下からの連絡では出迎え無用、学徒たちは着の身着の儘此方に向かっている。令嬢達に恥をかかせるなとの事です」
「此方で礼服を用意させて学徒を無理やり連れて来るのは殿下でしょうに、彼女達を不断から鍛えているのは私なのだがな。相分かった。侍女たちだけでも並ばせよ、此方も体面がある」
「直ちに整えます」
離宮から少し離れた訓練場の広場には侍女たちがずらりと並び礼を執っている。北の空から渡り鳥の一団の如く見え始めた飛翔部隊の面々。鳥たちと違うと判るのは綺麗に並びすぎている事だろうか。
最初に大きい三角形と続けて4人で作る菱形が次々と並び最後は、ラクスを先頭にチェロルの飛翔機と両脇にベイミィ、ティロット、そして最後尾にリーシャが付く。
先頭3名が離れたら全体はゆっくりと停止し位置を整え待機する。リーシャだけは先頭3名と共に訓練所の広場に降り立ち反対を向き3名は礼を執り、リーシャは素早く飛翔板と長刀を横に置いてから着陸指定位置に駆け足で移動して誘導を開始する。リーシャは”失敗してもその反省を次に活かせる”子なのである。
アリアが降り立つと先頭に並んでいた侍女頭が前に出て礼を執る。
「準備は如何ですか?」
「御連絡頂いたものは全て取り揃えてあります」
「では至急取り掛かって貰いましょう」
リーシャは最後のチェロルたちを降ろし、では定められた位置に移動しようと振り向いた途端に侍女たちに囲まれた。
「ささ、着替えの準備ができております」
「いえ、飛翔板と長刀が……」
「此方で運びます。此の2つだけで宜しいでしょうか?」
「わ、私が持ちます」
「大丈夫です此処には敵は居ませんよ」
やいややいやと騒ぎつつも次々と侍女たちに連れ立たれ皆はその場を後にした。
風呂や着替えやらを侍女たちに揉みくちゃにされた後、案内された広間には全員揃っていた。皆は騎士の礼服に身を包みすっかり見違えった騎士様となり、何故か威厳も醸し出されている気がする。武器類は流石にダメなので預けてあるが皆すっかり其の気である。
エミリア様が列を整え満足したのか「うん」と頷き話し始める。
「此れよりルドルド・ラギストア皇帝陛下が退位なされ、タリス・ラギストア・ルトアニア大公殿下が皇帝として即位なされる」
お知らせです。
今週ちょっと忙しいので執筆を休みます。
週明けには再開できると思います。
宜しくです。




