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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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25空気循環機関

 チェロルが鉄の飛翔機を改良する裏で、アリア殿下はその情報を逐一ルトアニアへ送っていた。チェロルが構想した飛翔機は飛翔艇と飛翔板の中間に位置するが、実質的にはどれとも当てはまらない機構や可能性を有していた。

 いや、リーシャが作り出した六角多孔板(ろっかくたこうばん)も従来の木材式飛翔板とは別物であり、まだ研究が一切されていない事を考えれば、十分可能性を秘めているだろう。

 だが、六角多孔板は現時点で完成しており、更なる研究は急がないのだ。

 そう、アリア殿下にとって飛翔機はまだ他の完成形を残した素材なのだ。いうなれば飾りも絵柄もはいっていない無地の服であろうか。


 アリア殿下から連絡を受けてルトアニアでは緊急会議が開かれていた。集められたのは魔動車の開発に従事する職人たちである。

 ()の者たちに課せられた内容は魔気を動力にして前後入出の大気循環的な機関を作れないか。大気循環機関を新開発の飛翔機に積み込む設計、積み込める強度と耐久性向上、軽量化と素材の見直し、操縦席と操作機構新設、そして大型化である。

 また()れには期限が課せられていた。《戴冠式(たいかんしき)までには()れなりの回答と成果を期待します》()まり()れは超極秘案件であり確実に成果を出し早急に回答しろという意味である。本人に()の意志がなくても。


 指示された内容は明らかに呼び出された者たちのだけでは収まらない。急遽(きゅうきょ)、他に飛翔艇設計者、魔石研究者たちが臨時召集されたが会議は混迷を極めた。(なに)せ大気循環機関の開発は想像すらできないが、他の耐久性、軽量化、素材の見直し、操縦機構の設計の方は十分可能性があったから皆そちらを選びたい。泥沼だった。


 魔気動機関開発主任リザエル・パッカードは一つの考えがあった。()れが上手く当て()まれば殿下の()われる大気循環機関に近いものが作れるのではないかと。

 だが、引き受けるのは仲間に迷惑が掛かる可能性がある。いや引き受けなければ此処(ここ)に集められたものたちは破滅しかねない。止むを得なかった。

 救いの無かった会議にリザエルの一言は救世主の到来だった。皆涙して感謝を述べ(くだん)の相談以外は最大限の協力を惜しまないと約束してくれた。


 アリアにとって大気循環機関は伝令を頼んだ筆記の学徒に何となく言ってみただけで、それ程(こだわ)って発言した訳ではなく自分の御業に【大気】が在るから程度であった。

 勿論、戴冠式云々もそれに間に合って何か良い報告があれば嬉しいな、程度であり少し発破をかける気持ちは在ったが強制の意味合いは無かった。少し口が滑った感もあったが既にルトアニア各所では準備が始まっているし噂も広まりつつあるからそれ程気にしていなかったのだろう。


 魔動車の動力である魔気動機関は、魔窟から出土する魔石の一種を(もち)いて魔気や気力を動力に変換する機関である。

 魔石の中には気力を流すと物質への反発力が発生する特性を持つものがあり、()れを利用して金属を循環して反発させる機構を作り回転動力としているのが魔気動機関の仕組みである。

 リザエルは金属の反発を空気の反発に置き換えられないかと考えた。空気を取り込み逆流しない仕組みを作り、圧縮空気を反発魔石に送り込むことで反発力を空気に与えることができる。

 後は反発力に任せて空気を別の出口へ出力し、その出力の力を再び空気を取り込む力に利用できれば(まさ)に大気循環機関である。仕組み構造は非常に難解で設計は困難を極め、実現できるかも怪しいが皆を救う(ため)だと奮励(ふんれい)するのであった。



---


 数日後、チェロルのもとへアリア殿下が微笑みながら近付いて来る。素早くリーシャの後ろへ隠れてガタガタ震えている。此間(こないだ)まで助言を貰いながら飛翔機を作っていたではないかと思いつつ。


「チェロルが不躾(ぶしつけ)で済みません」

「いえ構いませんわ。此方(こちら)もチェロル様にお願いが()って参りましたのよ」

「お願いですか?」

「ええ、ルトアニアから届いた部品が幾つかありまして、”是非とも”チェロル様の飛翔機に使ってみては貰えないかと思いまして。そうそう先日届いた陶磁器の見本はどうでした?」

「……はい、その節はお世話になりました。陶磁器でも岩として認識できるみたいで材質の模倣が可能でした。今はルトアニア領の皆さんと手分けして最適なものを探している(ところ)です。チェロルその部品の取り付け私も手伝うよ!」


 リーシャは部品を受け取り強引に了承した事にして、いそいそとチェロルを連れて演習場の一角へ向かった。


「メルペイク次は此処(ここ)お願い。おー便利だな、えーっと此処(ここ)()ってるね。というか飛翔機の図面までアリア殿下は作っていたのか……。じゃあチェロルそっち送るね」

「ん。届いたよ」

「了解ー、メルペイク固定お願いね。よーし、チェロル動かしてみて。うん、動いた」


 リーシャとチェロルが今取り付けているのは、上昇下降や右左の旋回を操作する操舵と補助翼、方向舵、昇降舵をつなぐ機構である。


()れ付けたら(おも)くならないかなー?」

「だよね、何だろ筒状で外壁に穴を開けて取り付けるみたい。此方(こっち)()の前習ったな、確か魔気吸引機と蓄魔器、魔動車とかに使われているやつだね」

「重量は増えますが飛翔永続距離は伸びますわよ。私達も手伝いましょうか?」

「ヒッ!」

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