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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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24鉄の飛翔機

「ラクス様は今日も此方(こちら)ですか?」

「ええ、リーシャ様、昨日の内にアリア陛下に御許可を得ましたので、此処(ここ)の演習場で暫く訓練させて頂きますわ。クラウト様には負けましたが彼は当面大会で忙しいでしょうから。()の間に私は極秘の最新技術をものにして更なる高みを目指しますわ」

「極秘の最新技術ですか?」

「そうよ、()の演習場はアリア殿下の許可が無いと使えませんし、防犯体制もしっかりしていますわ。貴女が作り出した飛翔板の六角多孔技術は今後の帝国に大きな変化を(もたら)すわ。アリア殿下も既に動かれています。いずれ功績を称える顕彰(けんしょう)()されるかもしれませんわね」

「え、えー、そんな大事(おおごと)な……」

「いえ、大事(おおごと)ですわ。今まで一部の騎士しか使えなかった空中戦術が大規模運用可能な単位で増えるんですよ。それに合わせて陣形や戦術も研究しなくてはなりません。勿論、他を先んじて」

「はあ、あ! タリス大公殿下の」

「知っていらっしゃるのですね。帝国は早急に権威を回復しなければ()りません。今回の件が良い追い風と()ってくれるでしょう」


 リーシャは何だか大変なことに()ったと尻込みしていたが、皆が喜んで良い方向へ向かっているなら自分としては問題ない。若干口を滑らした事は別として、そう思うことにした。

 演習場の一角には今朝チェロルが制作していた鉄の骨組みが運び込まれていた。アリア殿下の指示である。()れにも興味を示していたから機密にしたい程の価値を見出したのだろうか?


「アイラさんそれは?」

「チェロル様に頼まれたメルペイクちゃんの服型安全装置? だそうです」


 侍女アイラの持っていた布はメルペイクの太ましい体や大きな翼に合わせて作られた上着のようなもので、両脇から革帯(かわおび)で作られた人の体を固定するらしき器具が吊るされていた。


「ベイミィそれは?」

「チェロルに作って欲しいと頼まれましたのよ。何でもアリア殿下の助言を頂いて目を保護する物が在ったほうが良いとのことで、水晶硝子を使った航空眼鏡? という防風防塵用のものかしら。まあ枠を既にメルペイクちゃんに作って貰っていたから、それに合わせて水晶硝子と顔の緩衝(かんしょう)に革を取り付けただけですわ。それよりもあの機体に風よけの水晶硝子を付けて欲しいと頼まれているのですが、いっその事座席全部覆ってはという話もあってエミリア様と相談しないといけませんわ」


 眼鏡と(いわ)れるものは近頃(ちまた)で流行っている偏光眼鏡というものの事だろうか? 眩しい水面(みなも)の反射光や聖光などを(さえぎ)ってくれる便利なものらしい。


「ティロットは何してるの?」

「錆止めの塗料を塗ってあげようと思って用意しいるんだよ。せっかく出来上がっても錆びてしまったら悲しいよね」


 皆が手伝っているのだから私も何か役に立ちたいと、リーシャはチェロルの作業する一角へ来て見れば、鉄の骨組みだった機体は(ほぼ)鉄板で外回りを覆い()くしており、完成間近と()っていた。


「チェロルもう直ぐ完成なのかな何か手伝えることが在ったら教えて欲しいな」

「うん、そうだね。特に無いよ」


 何故だろうリーシャの背中が少し寂しそうに見える。


 結局、リーシャがティロットと一緒に錆び止め塗料を塗っていると、アリア殿下が進行具合を見にこられた。後ろでは何やらアリア殿下の説明を必死に書き留めている方がいる。文官専攻の学徒だろうか、一頻(ひとしき)りその学徒へ話し終えたら満足したのか此方(こちら)へやってくる。


「リーシャ様これは錆止め塗装ですね私にも()らせて貰えませんか?」

「いえ、流石に……」「是非とも()らせて下さい」

「はい……どうぞ」


 塗料入れを渡されるとアリアは手を前に押し出し刷毛(はけ)をピンと垂直に持ち「シュー」と音を立てながら鉄板に塗料を吹き付けていく。塗面は(むら)もなく綺麗に速く仕上がっていく。

 リーシャとティロットは呆然と立ち尽くし、その様子を最後まで見ているしか無かった。錆止め塗料は塗り終わると既に乾燥しており、アリアはそのまま仕上げ塗り(まで)済ましてしまった。



 何はともあれ、()の機体は完成した。というか名前は何だろう。


「チェロル、()の物体の名前は何ていうの?」

「……鉄の飛翔機?」

「そのまんまだね……うん、覚えやすくて良い名前だよ。メルペイクの飛翔確認しておこうか」


 革帯(かわおび)の付いた服を着込んだメルペイクはパタパタと羽ばたくと、浮き上がり服に繋がった革帯に固定されているチェロルも浮き上がる。


「おー」

「苦しい所は無いでしょうか? 大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ!」


 アイラは青い顔をして心配そうだ。


「うん、問題無さそうだね。アイラさん私達も一緒に飛びますから安心して下さいね。じゃあチェロルはもう鉄の飛翔機に乗り込んで良いよ」

「わかったー」

「皆様も飛翔準備宜しいでしょうか? はい、ではチェロルゆっくりでお願いね」


 リーシャは()(もよお)しの進行役を買って出た。此処(ここ)で役に立たないと悲しくなりそうだったから。色々と繊細なのだ。

 まあ、それはさておき飛翔機の動力源はメルペイクだ。いくら【砂鉄】に鉄への干渉力があるといっても、()れ程大きな鉄の固まりを動かすとなると、飛ばすことはできるが気力の消費が激しすぎて直ぐ底をつくだろう。


「よーし、メルペイクゆっくり浮かせて」


 鉄の飛翔機は少しギシリと音を立てた後すーっと浮き上がった。1m、2mと上がっていき20m程の高さまで来た時「前進!」の掛け声と共に勢い良く前へ進みだした。後ろからはリーシャたちが飛翔板に乗って追いかけていく。

 メルペイクには機体だけを干渉させているからチェロルは方向制御板を自由に動かせる。慎重に少しづつ動かしていくと上昇下降右旋回左旋回と思い通りに動き微妙な(さじ)加減の感覚を理解していく。それと同時に修正案が次々と浮かんでくる。


「メルペイク次は機体への干渉を止めてみて……うん飛んでる。揺れもないしちゃんと飛べてるよ」


 まだ殆どメルペイクの力で強引に飛ばしているようなものだった。だけどしっかりと揚力(ようりょく)を捉えている。気流に乗ればチェロルの干渉だけでも飛行を維持できる。無駄な点足りない点はこれから直していけば良い。航空眼鏡の下部にはチェロルの涙が溜まっている。


「私の翼で翔べてるよ」



鉄の飛翔機は200kg~300kgを想定しています。


---

修正記録 2017-03-21 19:14


アリア殿下の助言で → アリア殿下の助言を頂いて


ティロット → チェロル

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