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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
41/345

22チェロルは

チェロルの描いた落書きを投稿しました。

http://ncode.syosetu.com/n9385dv/4/

 チェロルはその夜るもアイラに隠れて頑張った。もう子供じゃないんだから心配しなくても大丈夫だよ、と言い聞かせても信じてくれないらしい。

 長期休日明けにあの空飛ぶ物体を見てからというもの、思いついてはこうして書き留めている。チェロルは4人の中では一番空に憧れを持っているのかもしれない。

 今回のリーシャの発見であの岩板を使い【水】の粒系因子を操作すれば、チェロルでも単独飛行はいずれ可能になるかもしれない。だがチェロルが書き連ねているものは少し(おもむき)が違うようである。

 それは二本の尻尾を持ったナマズのようなオタマジャクシとも言える胴体にリーシャが見せた岩板のような翼を付けた奇妙な絵であった。

 中央には座席となる椅子が描かれており、リーシャが見せた体重移動で左右の方向や上昇下降を操作するものではなさそうである。

 よく見れば翼に稼働する意を示す切れ目と矢印が記入されている。()れをどうやって動かす気だろうか。説明書きにはこれら全て鉄で出来ており、中を空洞にして揚力(ようりょく)を得るとか、【砂鉄】の御業で操作するとか薀蓄(うんちく)が書かれている。今日見知った事を早速活用した新しい案だ。

 夢を描き終えて満足したチェロルは目をこすりながら寝室へと向かう。明日の水遊びを楽しみにしながら。


---


 アリア殿下が講義を受けている教室はリーシャたちとは別となっている。貴族の派閥とか制約、(しがらみ)色々考慮しての(もっと)も無難な配置が()れらしい。

 リーシャはスェイリー・トラウィデッド侯爵令嬢の仲立ちを受けてアリア殿下に挨拶をする。


「お早う御座いますアリア殿下」

「ごきげんようリーシャ様、昨日の噂はかねがね伝え聞きましてよ」

「は、反省しております」

「いえ、何でも水上に戦術的な攻防陣を構築して、縦横無尽に駆け抜けていたとかの話ですわ」

「とんでもない、そんな格好良いものではありません。

 ただ池で羽目を外してしまって管理の方や教諭にご迷惑を掛けてしまったのです。自慢する話ではありません。

 まあ今日此方(こちら)に寄せて頂いたのは、それにも少し関連してます。

 昨日水上で(こころ)みていたものは先日お披露目されたルトアニアの飛行戦術から、思いついた水上波走の実践(じっせん)です。

 当初は加工した木の板を使って確認していたのですが、私の持つ御業が【岩】ですので岩を創意工夫して作ってみたの()れです。

 わかりやすいように水晶で小型の標本を作って貰いました」

「あら、これは軽石というか、それより更に軽い感じですわね。

 多孔質(たこうしつ)を利用した上に、六角形構造で無駄を省いて且つ頑強さを両立させているのですか。

 素晴らしいですわ」

「軽石も多孔質もご存知でしたか。どちらもルトアニアの古い書物に記載されていました。

 ただ、これではやはり衝撃性に少し不安がありまして。

 それで古い書物からルトアニアには陶磁器の研究から、岩や特殊な材料を微細な粉末に加工して自然の土とは違う材料を使った陶磁器を作る方法を確立していると知りまして。

 実物があれば見せて頂けないかと?」

(もろ)さに不安が? まだ習っていませんでしたか?

 御業の対象物は気力を通していれば通常より組成が頑強に為りますわよ。

 あなた達が空飛ぶ物体と噂しているものなんて、重要な機体の骨組みは金属を使ってますが、殆どが木材です。

 あんなもの普通に空に上げたら空中分解致しますわ」

「あまり極秘そうな話は避けて頂きたいのですが……」

「まあそうね。実物ですか衝撃に強いものが宜しいのよね……。

 確かに最初から軽量で多孔質な上に衝撃に非常に強い素材や、他にも幾つか違った特性を持ったものが多数研究されていますわね。

 最適なものを選べるようルトアニアへ連絡を入れて幾つか取り寄せみましょう」

「た、大変恐縮致します。心よりお礼申し上げます」

「いえ、私もその業に興味が()きました。是非とも協力させて貰いますわ」


 リーシャはやはり岩板の強度を不安視していたようだ。というか昨日のベイミィに水晶板の搭乗飛行を進めたのは確信犯か!


---



 奥の池にはリーシャたち4人以外にアリア殿下、近衛(このえ)のエミリア様、侍女のメアリー様やルトアニアの【岩】や【水晶】の御業を持つ令嬢たち選抜戦で敗北したラクス様までいる。早々に敗退して暇なのだろう。


 ティロットは岩板を取り上げられないかと恐々として大事に抱えている。チェロルは気配すらない。恐るべし。


「えーっと、では【木】の御業が無くても水系の御業で宙を飛べるか実験します。

 ティロット、先ずは水に浮かんで重心を取る練習をしましょう」

「はい!」


 ティロットは池に岩板を浮かべると慎重に足を()ろす。以外だ、飛び乗ると思っていた。

 【海水】の御業でも水は操れる。ただ優劣や操作性が【水】より低いだけである。重心が()れる度に水と体を調整してひっくり返らないように手すら使ってバタバタと必死だ。だが慣れてくるとその動作も少なくなり、ある程度は自分で反動を付けて重心を取りやすくするなど(こつ)を掴んでくる。

 重心が取れるように為れば小波を使っての前進と徐々に……ってチェロルは何処行った!

 居た! 何故に波が立ってない? いやっティロットの起こす波を利用して進んでいる。チェロルは一体何を目指しているのだ? いや隠れたいだけか……だけど(むし)ろエミリア様の注目を集めて微笑まれているぞ。


「ヒッ!」

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