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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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21水遊び?

 リーシャは結局のところ岩板が何故に驚くほど軽いか、わからないまま夕飯の席に着いた。


「リーシャ様はお悩みでしょうか?」


 微妙に寄ったリーシャの眉根を見て判断したのか、ベイミィが尋ねてきた。


「ええ、食事中に御免なさいね」

「良ければお話くらいは聞きますわよ。お役に立たないかも知れませんが」

「話しても構わないのですが現物を見て貰った方が早いので、先に食事を済ませてしまいましょう」

「そうですわね」

「私も見に行くー」×2


 リーシャはにこやかに頷いた。




 何時(いつ)もアリア殿下御一行と自主訓練を行っている演習場にリーシャたちは来ている。

 岩板はマギーが抱えているようだ。リーシャが「持つよ」と言うと「大事な長刀にぶつけたら大変ですよ」と返されそのままである。


「マギーの抱えている岩板なんだけどね。これを御業で色々工夫して作ってみたんだよ。

 それでこれの重さを確認して貰うと私の悩みが何となく解ると思うんだ」


 そう言われて釈然(しゃくぜん)としない顔を浮かべながら、ベイミィはマギーから岩板を受け取ると、思わず両腕を上げてしまう。マギーは予想通りなのかパシリと支えに入っていた。


「こ、これ岩なのですか?」

「ええ、軽く作ろうとは思っていたんだけど。

 そう、池の中にある島ね。あそこに建物立ってるでしょ。

 あれね図書館だったのよ! 古書が沢山置いてあったから、何か参考になるものは無いかと読み漁っていたのね。

 その古書の中で見つけた理論を自分なりに工夫して、【岩】の御業で作ってみたのがそれなんだよね」

「おおー、軽いね!」

「すごいー、びっくりだよね」

 ティロットとチェロルの順に岩板を持ち上げて軽さを確かめると、その見た目とは予想外の軽さに用心していても持った瞬間に少し腕が浮き上がってしまう。


此間(こないだ)の選抜戦でルトアニア領同士の空中戦やったでしょ。

 あれの印象が残っちゃって」

「格好良かったよね。騎士として私もあの場に立ちたいと思った!」

「ええ……そうね。それで木の板を真似て加工してみて、試行錯誤しながら水の上で試してみたの。

 板の上に乗って水の方を操作して安定を取る感じね。

 体もそれなりに動かして重心を取らないとダメだけど、水の方も常に力を加える感じで安定する感覚を掴むの。

 慣れて体の重心が楽に保てる感覚を掴めば、今度は進みたい方向の後ろ側の水面を高くするとすーっと進みだすから面白いよ」

「池で大波を作って暴れていたのはリーシャ様だったのですね」

「はい……反省しております」

「それ! 私も()ってみたいよ!」

「うん、私も」


 ティロットとチェロルも水遊び……水上波走に興味津々である。ティロットは【海水】ではあるが多少は水への影響を与えることができるし、池は不味いが場合によっては海水を生成する事で制御を高められる。チェロるは【水】の御業持ちである。


「それで空も飛べないかと、この軽い岩板を作るに至ったのですね。

 結局のところ飛べたのですか?」

「ええ飛べましたよ。今から飛んでみせますね」


 リーシャがティロットに視線を送ると持っていた岩板を掲げるように持ち直す。それを確認したらふわりと浮かせリーシャの手前まで移動さて飛び乗った。ドッコイショで乗っても良いと思うのだがね。

 岩板は少し沈んだ後すーと浮き上がりリーシャを乗せて進みだした。体の向きを進む方向に合わせて(ひね)り足は板に平行だがつま先が進む先に寄っている。

 岩板の先頭を少し上目に上げれば揚力(ようりょく)を得て岩を浮かす気力の消費が減少する。リーシャは実演しながら古書で知って自分なりに立てた理論を説明していく。

 説明を聴いていた3人は目を見開き真剣そのものだ。これを自分なりに解釈して生かせないか発展できないかリーシャの役に立てられないか。様々な思いや興奮、驚きが交差する。


「[水よそに在れ]」


 言霊を(とな)えて水の道を作り水の力だけで滑る実演も見せる。選抜戦で見せられたラクスの螺旋(らせん)の業は流石に鍛錬が足りないが、可能性は見せられただろう。


()ってみて良い?」

「うーん、最初は池で練習したほうが絶対にお勧めだよね。

 最初は私も立つのを維持するだけで一苦労だったから、水を浮かす御業まで気が回らないと思う」

「じゃあ」

「もう遅いですから池は明日にしたら(よろ)しいかと」

「はーい」


 マギーの(さと)しにティロットは素直に従う。日も暮れているし(もっと)もな意見だ。身内同士では帝国流儀の悪しき習慣は行わないのである。


「ねえ、その岩板の作り方教えて貰えるかしら?

 私も【水晶】で作ってみたいわ」

「良いよ、形は()れねよく見て心象を焼き付けてから作るの。外郭は少し厚めにして中は空洞だと弱いから蜂の巣みたいな六角形の区画をした管が沢山詰まっている感じでね。

 私もティロットたちの分作るよ明日使うでしょ?」

「リーシャ様宜しくです」

「お願いします!」




「[水晶よそに在れ]」


「おー、()れも軽いよね。強度もそれなりにあるみたいだし十分乗れそうだね」


 リーシャが出来上がった水晶の板に「ガシッ」と蹴りを入れるとベイミィの眉尻が少し動くが気にしない。


「透けて見えますわね」

「おー本当だね。

 というか実際は凄く薄くて細かい六角形の模様なんだ。

 心象だと細かく厚さなんて指定できないからかな。

 此れでも十分強度があるなんて信じられないかも。

 支えておくから乗ってみて」

「えっええ……、そうね」

「乗る時に合わせて水晶を少し浮かす感じでね」


 やはり重心が安定せずまだふらつくようだが浮き上がる。

 本来なら70kgはある水晶の重量が10kgあるかどうかとしか感じないのだから、人を乗せて浮かせられるのは当然なのかもしれない。リーシャの最初の予想では25kg前後はあると考えていたのだから感覚も狂う。


 小さな軽いものを使えば飛べるのではと思うかもしれないが、御業の対象が少なくなれば持ち上げる力も減少する。対象を大きくすれば力も増加するが気力消費が馬鹿みたいに増加する。

 ただ長時間飛べないと言うだけで、今後はルトアニア領の学徒対策として大理石や鉄の板に乗って対戦を挑むものも出てくるのかもしれない。


「そう、その調子で少し後ろに重心を移動して前に進んだら板に風を受けて浮き上がるよね。

 それが揚力(ようりょく)という力なんだってさ。

 ()れを上手く利用しながら方向変更とか制動を行うと、気力を(ほとん)ど使わないで飛べるようになるんだよ」


 横で見ているティロットは作って貰った岩板を大事そうに抱え明日行う水遊びで胸一杯いだ。チェロルは何やら思案中のご様子で怪しく目が輝いていた。



想定では石板の体積25000CCだと木板15kg軽石10kgと予想して7kgぐらいとしてみました。


あとはゴリ推しで……。

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