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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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19悔しいです。

 教諭の判定を聞いて会場は騒然と()った。ラクスの剣が先に届いたのではないかと。当人たちは理解している様子で特に不満を漏らす顔つきでは無い。

 何らかの御業が勝敗を分けたのは確かだろう。考えられるのは防御・結界系と部分強化系ぐらいか。ただ頭部への打撃が視認できた(ため)、【強頭】以外の部分強化系は衝撃が入った時点で脳が揺れ次の行動が阻害されると見て良い。ならば……これ以上の詮索は止めておこう。


 確かに今回の選抜仕合は注目に値する。いや、一部戦術に於いては今までの帝国とは隔絶(かくぜつ)した力を持っていることを証明したのだ。

 残念なことにルトアニア領の強者同士が選抜戦で早々に対峙してしまった。これだけの仕合が果たして大会本番でも在るのだろうか。

 ただ一つ言えることは、まだ先の武闘大会にこの衝撃的な業のお披露目は(かな)わなかったが、今外遊……もとい、視察中のタリス大公殿下の箔付(はくづ)けとしては十分に効果があったであろう。



 あの様な戦技を見せられたらリーシャたちも落ち着かない。(なに)かよくわからない悶々(もんもん)とした複雑な気持ちを抱えるが、どうしたら良いのか見当も付かない。

 ああ、わかることもある。今のリーシャたちでは逆立(さかだ)ちしても彼らの足下にも及ばない。たった1年しか違わないのに、これほどまでの隔絶(かくぜつ)を感じるとは思っていなかった。

 とりあえず()るべき事もわかった。日々自分の業を研鑽(けんさん)して極める事だ。まだ何も誇れるものは無いのだから。



 【木】の言霊属性は御業の中では【水】と同じく(もっと)も多く人々が授かっているものだ。だが今までは他の御業に比べると(あま)り騎士としての用途が見つからず、貴族からは喜ばれない部類だった。

 【木】は木や枯れ木、それを加工した木材に作用する御業で、生木に成長を促進したり、逆に枯らす事もできる。

 他の非生物系御業の様に動かしたり浮かせる事もできるが、無からの生成や存在の消失といった奇跡を起こす事はできない。


 リーシャたちは素晴らしい戦いを見て、自分たちもあの域まで達したい。体をともかく動かしたい。不安と期待と高揚が混じった得も言われぬ気持ちが在った。

 ()しかしたら心の何処かで【木】の御業持ちを、(さげす)んでいたのかもしれない。だからこそ嫉妬している気持ちに気付いても、認めたくなっかったのではないか。

 騎士として軽蔑すべき事だから。



 リーシャたちは以前に増して日々努力し、リーファ教導官やエミリア様、マギーにも積極的に助力を求めた。


「リーシャ様打ち込みのお相手願えますか?」


 ティロットが刃引きの剣で行う規定の型打ち合いを求めてきた。これは相手が何処に打ち込むか大体決まっているので、それに合わせて防御する訓練方法である。


「ええ、喜んで。マギー立ち会いを願います」


 刃引きの武器を扱う時は例の(ごと)く戦闘技を修得した大人が付き添う。

 ティロットの剣は両手用の剣でベイミィやチェロルが腰に差す片手用の剣よりも幾分長く幅も広い。【強肩】を最も活かせる武器が両手で支えるものとの判断である。まあティロットの場合は両肩が盾みたいなものだし。


 ティロットの剣は一撃一撃が重く普通にやると練習に()らない。幼い頃から身につけた手加減の成果が此処(ここ)で存分に活かされるとは本人も思わなかっただろう。

 右肩、頭部、左肩、右横、順々に打ち込まれたら、次は変則足下、突き、足運びにも神経を(そそ)ぎながら何度も繰り返す。

 以前はマリオン先生やリーファ教導官の剣技の模倣だった。だが最近は自分の体格や剣の大きさに合わせた理想の型を探っている。そんな思いが伝わるような微妙な変化を感じ取れる。

 そして今日一番の綺麗な型だと惚れ惚れしながらのんきに受けようとしているリーシャの襟首をマギーが引っこ抜いた。

 剣はうっすらと光り太刀筋(たちすじ)を残して長刀をすっぱりと断ち切った。


「それまで!」


 ティロットが【剣技】の御業を獲得したのである。というか刃引きが全く意味を()していない気がする。

 リーシャは目を丸く広げ手元の柄だけと()った長刀に目を()り次に「カラン」と転がった長刀の剣先、そしてティロット見やると頬につーっと涙が零れるのを目撃した。

 リーシャは少しマギーにもたれ掛かっていた事に気づき自分で立つとティロットの方に歩いて行き軽く抱きしめる。


「ティロットおめでとう。【剣技】の御業だよ」

「うん、……ありがとう。私やったよ」


 落ち着くと周りの音が聞こえてくる。それだけ集中していたのだろう。おや、向こうで音楽が鳴っている。どうやらアリア殿下が例の箱に金属の花が突き刺さった物体を演習場に持ち込んで来ているようだ。

 ベイミィとチェロルが音楽に合わせ真剣を振るっている。今まで手拍子だったものが音楽のおかげで、より一層に息が合い流れるような動きに繊細さが増している。

 (まさ)に芸術だなあと芸術が解る訳でも無いが、感じたのはリーシャ一人だけでは無いだろう。(なん)せ2人の体がうっすらと輝いていて良い感じだ。


『え……』


 ベイミィとチェロルの2人が同時に【剣舞】を獲得したのである。それを監督? していたアリア殿下がうんうんと頷いていた。


 何だか寂しい気持ちに為るリーシャであった。

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