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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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12闘技実習

「今日から諸君の闘技教導官を務める事になったリーファ・アルドラデ侯爵です。

 知っているものも居ると思うが、タリス皇女殿下が嫁ぐまで親衛隊隊長を拝命していた。

 諸君なら察するかも知れないが本来ここの教導官を務めるものではない。

 十分にこの機会を()かして欲しい」


 予想だと本人が語る通りアリア殿下が闘技実習を受けたいと申し出て、ならば最高の環境をとタリス派閥あたりが動きリーファ侯爵をねじ込んだのではないか。

 皇族の選択した授業が公開されている(はず)もなく授業の調整を担当していた教諭が大物騎士が教導官を務めるならと女子側に男子学徒を統合したのだろう。


 ここで疑問に思うかも知れない。タリス皇女殿下が嫁ぐ際に親衛隊は随伴(ずいはん)しなかったのか? という事だが、数十名が随伴したのは確かである。

 だが数百名は無い。武力制圧しに来たのかと疑われる。侯爵位のものを移動する事も無い。歩く爆弾も同じである。


「では、剣技は南側、武技は北側に分かれて型の演武を初めてくれ。

 ああ、両方を習っている者は中央で武技から初めてくれ。

 それから未経験の者はこっちで素振りからだ」


 ティロットは剣技だけなので南側へ、リーシャたち3人は両方習っているので中央である。リーシャがアリア殿下の動向をチラリと見ているとどうやら剣技を習うようだ。序でにルグス殿下を確認すると彼も剣技を習うようであった。

 リーシャたちが武技の型、今回は棒術を丁寧に一つ一つ出していく。3人だけ綺麗に揃って、というかベイミィとチェロルがリーシャに合わせて無駄に【器用繊細】を発揮して型を披露したのだが、実力が高い事も合わさって大いに目立ったのは想像できると思う。

 リーファ教導官がリーシャたちの元へ歩み寄ってくる。


「お前たち凄いな、ここまで息がぴったりでこの年齢だと舞台に出て金が取れるぞ。

 そこ、隠れるなら目立たずな、後で気隠の基礎を教えてやろう」

「ヒッ!」


 何か違う褒められ方をされている気がする。悲鳴を上げたのはチェロルだよ。


「ふむ、中央に集まった組では上位の練度だな。それにこの型、少し混じっているものの癖に覚えがあるな。

 師は誰だ?」

「マリオン先生です」

「なるほどな、あやつにしては良い育て方をしている。

 暫く会わぬうちに皆変わっていく。

 そして先ほどから此方(こちら)を見ている護衛の者にも武技を教わっているのかな」

「ハイ、その通りです」

「少し脇が甘いな、少し肘を高くして、そうだ。

 隣の二人は真ん中を教えると連動して良くなる。面白いな。

 これまで通り護衛の者に指導を受けしっかり研鑽(けんさん)すればいずれ御業となる素質はある。

 精進しなさい」

「ハイ」×3


 リーファ教導官は、うんと頷き満足した様子で次の子へと移動していった。ここで褒められた事を喜び合いたい処だが演武中である。ただ丁寧に型を繰り返すリーシャたちであった。



 リーファはアリア殿下の前まで来ていた。


「そのまま続けてお聴き下さい。

 お久しぶりですね。アリア殿下。

 闘技の実習を選択された理由を尋ねても宜しいですか?」

「ええ、かまいませんわ。

 幼い頃より騎士たちの訓練を私は見てきました。

 巧みとなりて業となす様を。

 私はそれを自分で感じてみたくなったのです」

「嘘偽りない殿下の心根、(しっか)りと響きました。

 私も少しばかりの協力ですが力添えさせて頂きます」

「痛み入ります」


 リーファ教導官はアリア殿下に指導の言葉を口にしなかった。今、殿下は理想とする動きを体に馴染ませようとされている。見ればわかる一振り一振りで微細ではあるが良くなっている。そしてその先に遠くではあるが【剣技】の御業が見えた。

 決して【剣舞】ではない事を付け加えておく。

 軽く礼を執ってリーファ教導官はその場を後にして剣技の型を繰り返す学徒たちを広く見る。

 その中で一際注目に値する動きをする者が2人居た。1人はルグス殿下、そして更に良い動きを見せている少女ティロットである。

 ルグス殿下は真剣であった。まるで後が無いような切羽詰まったものも感じる。丁寧に自分にはもうこれしか無いという鬼気迫るものである。

 例えば今朝から学園中で話されている両殿下の論議を木陰から聞いてしまって、一人涙していたなんて事はないだろう。

 リーファ教導官は何となくルグス殿下は避けティロットの方へ向かった。

 近くで眺めているとこの子の型も癖に覚えがある。先程の子たちよりもはっきりと感じられる。そう思い返した時にあの子たちはマリオンと言っていた。するともうマリオンしか思い当たらない。


「お……、貴女(あなた)


 リーファ教導官は先程理不尽に怯えられたばかりである。気を遣って「お前」ではなく「貴女」に変えてみた。


「ティロットだよ!」


 気を遣う必要は無かった。というか目が爛々と輝いている。


「そうか……、ティロットはマリオンに剣技を習ったのか?」

「そうです。マリオン先生に習っていました。

 どうしてわかったのですか?」

「そこの中央で武技の演武をしている子たちの中にマリオンの教え子たちが居たからね。

 それにあの子たちに比べてティロットの型はマリオンの癖が出ている。

 剣技はね技を極めていけば型を自分の体に合わせて、効率の良い形へと変化させるものだ。

 その変化させた部分が私の記憶しているマリオンのものと似ていたんだよ」

「凄い! そんな事までわかるんだ」

「ほら演武に集中して

 型は申し分ない。後は体の成長に合わせてずれを修正するぐらいだ。

 実剣もまた動きが変わる。だがこれも先の話だな」

「ハイ!」



 ティロットはマリオン先生程の実力者が本来は自分などに教える事はないと理解していた。だからできればずっとマリオン先生に習っていたかった。

 だが騎士になる為には学園で学ぶ必要があった。悲しかった。勿論、騎士となる為の授業は楽しみだったが、それはそれ、これはこれである。

 現金と言われるかも知れないが、ティロットは今最高に嬉しいのである。タリス皇女殿下の親衛隊長とアリア殿下の親衛隊長に教わる機会があるのだ奇跡に等しい。我が世の春である。

 気を抜くと「にへら」となるのは仕方が無い。


「ティロット顔がにやけてる」


 闘技実習が終わりチェロルに頬を突かれているティロットであった。

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