11講義?
第二部
リーシャにとってアリア殿下との対話は、まるで夢のような、いや夢だと困る。そんな幸せな時間だった。勿論、帰りにはお土産も頂いてだから尚更であった。
帰りも送ろうとするエミリアにリーシャは畏まって遠慮しようとしたが、これも騎士の勤めなのだよと諭され嬉しさ半分、恐縮な気持ち半分で寮に戻ったのである。
名残惜しくお礼を告げエミリアと寮の前で分かれてから部屋に戻ってくるとベイミィたち3人はまだ帰ってなかった。マギーに迷惑だろ!
「あの格好いい騎士様はエミリア様と聞こえました。し、親衛隊隊長とも」
「そんなメロメロなティロットに重大な報告があります。
何と、アリア殿下から自主訓練のお誘いがありました。
そして、たまにエミリア様が指導して頂けるかもしれないという話です。
あ、エミリア様は殿とか隊長と呼ばないようにして下さいね」
「ほんとー、凄いよ! 信じられない!」
飛び跳ねて喜ぶティロット。ガクガクと震えメルペイクをひっ捕まえて抱えるチェロル。
「堂々とアリア殿下を眺められるのですね」
「いや、失礼だからだめだよベイミィ。
あと、アリア殿下から頂いたんだよ、この紅茶とお菓子。
とっても美味しかったから皆で頂こうよ」
「準備します。それからもう遅いのでほどほどで切り上げて下さいね」
「ありがとうマギー」
やはり子供たちにとってはお菓子は最高の贅沢。至高の喜び、チェロルもご機嫌さんだ。茶会もたけなわチェロルの侍女アイラが迎えに来た処でお開きとなった。
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朝の寮は昨日に起こった立食会の騒動の話で持ちきりだったとか。やれアリア殿下の采配は素晴らしかっただのやれ失敗の経験といっても今回の様な事態は由々しき問題などと寮の多目的広間で良くも悪くも議論が飛び交っているとの話。
それを見てきたベイミィの報告である。寮での食事は各自の部屋で行うものだがリーシャたちは集まって食べる事が多い。いつもの執務室兼応接室である。
「朝には件の二人は戻って来られたそうですわ。
教諭方から両親への説明も慣れない土地で具合を悪くしている処へ、ルグス殿下が帰らしたと。
殿下からも具合を尋ねる文が届いたとか」
「ああ、ダメ押しがあったんですね。親御さんは小言の一つも言えませんね。
うーん、やっぱり昨日アリア殿下から頂いた紅茶は良いものですね。
マギーいつでも良いので書き留めて頂いた店の件お願いしますね」
などと朝食も済ませ漸くの初講義である。一刻目が座学、二刻目が礼儀の予定である。午後はお待ちかねの選択授業、闘技実習である。
といって特に大したものは無いと皆は思っていた。付け加えておくならば学園は男性女性分けて講義を受けるのが常識というものがあった。
ところが午後からの選択授業の一部が今年から効率化の為に男女統合される事になったのである。
考えてみれば男女分けるのは、貴族だと平民と違い親の都合、国の都合で結婚する事が常識であるからだ。
況してや嫁入り前の娘、例え子供とはいえ異性と接する機会が多いのは責任もって預かる以上は学園として宜しくない。
まあ大人になってから多少は惚れた腫れたで結婚もあるが、家の為、民の為、国の為と立場を背負っている部類のものたちには当人に至ってもそこら辺の順位が低いようだ。
でだ、騎士を目指す者たち、闘技を習う者たちの多くは当然の如く婚期は遅れる。親も半分諦めている。戦いとなれば男女関係ない。元々が分けている意味が薄かったのだ。
だが、だがである。何故、此処にアリア殿下が居るのか。今年の実習講義を男女統合へ推進した教諭はそれなりの処分が待っているんだろうなと考える者が多かったのは仕方が無い。
大体アリアは普段から「姫様はお淑やかになって下さい」と言われていたのでは無いのか。
え? リーシャは昨晩のお礼の挨拶をしないのかって? 勿論、朝の座学前にルトアニア領の令嬢が守るように固まる場所へ恐る恐る行ってミリル仲立ちのもと挨拶を済ませていた。
そう、この場にもルトアニア領の令嬢たちがアリア殿下を守るように囲んで立っていた。騎士を目指す令嬢たちの中でも選りすぐりが帝都の学園に通えるよう選抜されているのだろう。
『なるほど昨日と今朝アリア殿下の周りでも話に加わらず一定の立ち位置を保っていた面々が此処に揃っていますね』
リーシャは幼い割に妙に迫力があると感じていたので納得していた。
ちなみに昼食は派閥ごと貸し切れる食堂が区分けされていて年単位で継続される。其処には侍女たちが持ち回りで数人入り対応してくれる。
『あらエミリア様の姿が見える。流石に外での実習をするのに子供たちの護衛では気が気でないかな。
いや、ルグス殿下の護衛をされている方らしき姿も見えるから此処に護衛が付くのが正しいのか。
てか、何故にマギーの姿が……』
ざわざわとしていた実習場が静まり返った。闘技教導官のお目見えのようである。




