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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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10対話


第二部

 リーシャはエミリアに(なら)って【水】の御業の制御を解除した。

 通された部屋は応接室専用だった。まあ執務室は兼ねていないということである。


「この度はお招きに預かり、有難き幸せに存じます」


 リーシャは緊張しつつも何とか挨拶を済ませた。


「いえ、此方の用があっての呼び出しですわ。

 態々(わざわざ)来て貰って感謝致します。そこに座ってね。」

「ハイ」

「後、そんなに(かしこ)まらなくていいわ。

 砕けた言葉でね」

「ハイ」

「エミリアもそんなとこ立ってないで座りなさい」

「いえ、これは職務ですから御容赦(ごようしゃ)願います」

「全くもう融通が利かないんだから。

 ルトアニア領で親しまれているお菓子を用意したのよ。

 お茶は紅茶が良いかしら?」

「ハイ」

「メアリー宜しくね」


 ささやかに礼を執ってメアリーが紅茶の準備を始める。メアリーがエミリアをチラリと見ると首を軽く振る。職務中とのことらしい。

 紅茶とお菓子の準備が整うとリーシャが紅茶に口を付ける。これは皇族や王族と食事をするときには毒味も兼ねる(ため)、先に口を付けるのが慣わしである。


「おいしい」


 リーシャは香りの良い澄んだ味が口に広がって思わず声が出てしまった。


『今まで飲んできた紅茶は何が悪かったのよ。いやマギーは疑っていないけどさ』


「ふふふ、挨拶の他で[ハイ]以外の言葉がやっと聞けたわね。

 ルトアニアでは茶葉の味に(こだわ)る人が多くて、品質の高いものが手に入りやすいのよ。

 お土産に持たせるわね。そうねメアリー、リーシャンハイスで卸している処と()れ方のコツも控えて()いて後で渡してあげて」

「そんな! 滅相(めっそう)もな」

「良いのよ。態々(わざわざ)来て貰ったのだから、これくらいはさせて貰わないと此方が恥をかくわ。

 さあ、お菓子もどうぞ」


 手の仕草で制し、断れない理由を付けてあげる。慣れてます。

 勧められるままに一口の大きさに切り分けたものを口に入れると、柔らかく甘い香りの広がりと共に舌に溶ける。

 リーシャはまだ8歳の子供である。お菓子でトロンとなっても仕方が無い。


「これもおいしいです」

「そう、良かったわ」


 アリアも紅茶に口を付けお菓子を食べ始める。此方も普通に8歳の子供である。

 メアリーが横に飾ってある奇妙で大きな金属の花を載せた箱の前で、何やらゴソゴソとしているかと思えば、その金属の花は音楽を奏で始めた。


「ルトアニアの楽曲ですね。以前、両親に演奏会へ連れて行って貰った時に聞いた事があります」


 リーシャは驚きと緊張の連続である。何とか真面(まとも)そうな話ができているのは奇跡に近いと自身、心底思う。


「ええ、そうですわね。200年ほど前の作曲家……確かデルフィン・バイラッファが残した曲で、ルトアニアでは一番大衆的ですわね。

 さて、そろそろ本題に入りましょうか。

 リーシャ様が使われる御業の制御は粒系因子では無く掌握圏。これはあまり一般的では無いと記憶しているのですが。

 何方(どなた)に習ったのでしょう?」

「え! 粒系因子として習った記憶が、そう確か[まあ先ずは制御の訓練だね。そうだこっちの二人は【水】だから常日頃訓練できる面白い業があるよって]感じに、ん?

 あら別物なのかしら。

 えっと、習ったのはタリス皇女殿下がルトアニアへ嫁ぐまで近衛をされていたマリオン・タイラスト先生です」

「お母様の近衛でしたか。

 噂では幼い頃によく御業の実験だと豪語して、数名の近衛を連れ回し、かなり危険なあそ……。

 いえ、幾つかの御業の戦闘方法確立されていたと聞きましたわ。

 もしかするとマリオン様はその数名の一人だったのかも知れませんわね」

「……そうですね。

 マリオン先生は昔の事を話される時、たまに何か思い出したように無表情というか微妙な顔つきになられます。

 えーっと、御業を利用した特殊な戦術とか教えて下さる時とかタリス皇女殿下のお話をねだった時……あ、すみません第二騎士団の歓待行進の時から私たち(みな)憧れていて」

「私も覚えが在りますわ。

 帝国でお母様の近衛をされていた方と何度か挨拶させて貰った時によくお母様のお話をねだったりしたのよ。

 そして昔の事を話されていて何か思い出したのか微妙な目になってしまいますの。

 そんな時は大体[姫様はそのまま(しと)やかに育ってくだされ]的な言葉を貰いますのよ。

 処で、マリオン様には何人の生徒がいますの?」

「私の他に3人の同派閥の子たちが習っていました。

 私たち4人で歓待行進を見に行ってその荘厳さに皆感動しちゃって、勢いで騎士になりたいってお願いしたんです。

 そうしたらどんな(つて)を使ったかマリオン先生のような立派な方にお越し頂いて。

 私たちもびっくりしちゃいましたよ」


 この時点でアリアは何となくリーシャを育てようとする大きな存在を意識していた。マリオンはどう考えてもタリスの派閥だった。『お母様も関わっている?』

 リーシャが何か希少御業を獲得している可能性や資質が高いなど色々気になる。『調べさせる必要は在りそうね』と。


「そうですか、マリオン様はリーシャ様を含めて4人の方に指導されていたのですね。

 リーシャ様が使われていました業は、お母様の戦術を真似て発展したものですから、使える者もまだ僅かしかおりません。

 そういった意味で少し気になりましてお呼びしたのですわ。

 リーシャ様たちは騎士を目指しているのでしたわね。

 学園の教科時間以外で私たちは自主訓練を行っていますわ。

 宜しければ貴女たちも一緒に訓練をしませんか?

 この学園の教育でも十分に騎士の資質を育てられます。どちらかというとささやかな補助として協力できますよ。

 もしかしたらたまにエミリアが指導してくれるかもしれませんわ」

是非(ぜひ)! お願い致します」


 最後の一言が()いた。流石にアリア殿下と肩を並べるなんて恐れ多いと尻込みしていたのだが、エミリアほどの人物に指導して貰えるなんて機会は()()う無い。

 下手に断っても大変だし、ティロットにばれたら大事(おおごと)である。リーシャは『どうして私なんかが?』という思いはあるものの目先の方が大事(だいじ)なのである。



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修正記録 2017-03-06 05:22


宜しければ → 宜しければ貴女たちも

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修正記録 2017-03-06 04:46


態々(わざわざ) → 態々(わざわざ)


「是非!」 → 「是非(ぜひ)! お願い致します」

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