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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
199/345

180近付く

 潜泳機の水晶硝子(がらす)(つく)られた窓からは水を隔てた()の先に、巨大な図体(ずうたい)を誇り(なが)らも傾き微動だにしない魚の魔落を見透(みとお)せる。

 脳裏に響くタリス皇帝陛下の【念話】に、リーシャとアリア殿下は()()れの場所で口を開く。


「はい、お任せ(いただ)きとう御座(ござ)います」


「ええ、お母様、(なに)かしら? ですけれど()の潜泳機や水の中では、私の()れる事は少ないですわよ」


 アリア殿下の場合、鉄や水に囲まれた場所だと、空気以外周りの全ての物質に対して親和性が少ない。

 だから、外部へ御業(みわざ)を顕現するのは、色々と難しく感じるのだろう。


「『死に掛けて()ると()う地底湖の(ぬし)を助ける(ため)に、【治癒(ちゆ)】や【聖】の御業(みわざ)を使って(もら)いたいのですよ』」


「お母様、【聖】の光を当てるだけなら()(かく)、【治癒】の御業(みわざ)が果たして鉄や水が隔てる()の巨大魚(まで)届くかどうか」


「『ふむ、()の辺は気力の増幅効果が無いだけで、通すだけならどんな物質だろうと通しますよー。流石(さすが)に気の防壁を越えるのは無理だけれど、【治癒】(なん)かだと()の当たりも関係なく効果が()るのよね! ()うじゃないと他人の治療なんて不可能なんだから』」


(わか)りましたわ。(なん)にせよ聖光は(いや)し程度の効果しか得られませんから、癒しだけでは()の巨大魚は()ず助からないでしょうし」


 【癒し】は【治癒】の劣化版と()う関係性に()り、大体3百人に1人は持つものが居ると()われて()る。

 (ちな)みに【治癒】は15万人に1人ぐらいは居るらしく闘技大会の時でも数名が賓客として迎えられて()た。


「リーファ様、タリス皇帝陛下は()の巨大魚を万が一でも、助ける事を試みると御決め()されました。アリア殿下には【治癒】をリーシャ様には【聖】の光を使う事を御所望であらせられます」


 ベイミィは、アリア殿下が一方的に(しゃべ)ってる風に()こえる、【念話】との会話を補足するように伝えて()る。

 そして、リーファ様が返答する間も無くアリア殿下が口を開く。


「リーファ様、此処(ここ)、機首をできるだけ、()の巨大魚に近付けるよう移動して(もら)えますか?」


「仕方ありませんね。ですが、暴れたり攻撃や敵意を向けられるたりする(よう)でしたら、直ちに退避(いた)しますので御理解(いただ)きたい」


()れは勿論(もちろん)ですわ。飽く(まで)此方(こちら)の主旨は駄目元、可能で()ればですから、(いたずら)に助ける事をこだわる必要は()りませんわ」


(わか)りました。では、()(まま)微速前進します」


 流石(さすが)に目的が巨大魚を助ける事で()れば、下手に刺激して暴れられても困るので、瀕死(ひんし)(いえど)も慎重に()らざるを得ない。

 刻々と近付くに()れて潜泳機は速度を緩め、後10mを残して停止した。


「リーシャ、操舵(そうだ)席の横に来て聖光の顕現を頼む」


「=了解しました=」


 慌ててリーシャは言霊を唱える為に前方部の部屋へと駆け付ける。

 勿論(もちろん)、ラクス様は中央上部の操舵(そうだ)席に埋もれて仕舞(しま)い、若干大人たる自尊心を傷付けられて不機嫌な様子である。


「[聖光よ()()れ]」


 リーシャは窓枠に()まる水晶硝子(がらす)へ気を通して水に接続すると、其処(そこ)から連鎖の増幅を繰り返し巨大魚が展開する水の掌握圏深くに分け入ってから、聖光の顕現を(おこな)ったのだ。

 目に優しく無さそうな()の光である。

 リーシャとしては()()く近くで聖光を当てて、減衰を最小限に(とど)めたいと()う思いが()った。


(いや)、機内で発光して(もら)えれば、指向性の光が(つく)れて胴体部分に当てられるから、比較的に主へ刺激を与えず癒しを行えるし、それで()る程度の信頼を得られれば御の字かなと。後は様子を見て更に近付こうと考えて()たのだが……。まあ、()れでも特に反応無くて問題が無さそうだし、終わり良ければすべて良しだな。(しばら)く様子を見て少しでも癒し効果が進んでから、前進を再開する」


 正に驚愕(きょうがく)である。

 余りの事に口をぽっかり開けたものだから、リーファ様が慌てて補足を付け加えた程だ。

 リーシャは可也(かなり)落ち込むが、聖光の維持を続けるべく前を見据える。

 そして(しばら)くしてから前言通り、リーファ様はゆっくりと前進を開始し(つい)には、僅か1mを残すだけに(まで)近付いて()た。


「エミリア、念の(ため)、左側に水の防壁を構築して()いて()れないか」


「分かりました」


 エミリア様は此処(ここ)が巨大魚の掌握圏にも(かかわ)らず、左の水晶硝子(がらす)を通して潜泳機を包むように水の防壁を構築する。

 若干引き気味のリーファ様は、一つ(うなず)いて口を開く。


「……よし、ではアリア殿下、【治癒】の御業(みわざ)を開始頂けますか?」


「ええ、思ったより随分と近付きましたのね。焦げた(うろこ)しか見えませんわ」


 目の前は(ただ)の壁にしか見えない、といった(ところ)だろうか。


 アリア殿下はリーファ様に促されて【治癒】を開始する。と()っても言霊属性では無いから無言の(まま)で心象するだけなのだが。


 (いま)だ巨大魚は微動だにしない。



---

修正記録 2017-08-28 09:02


幾つかの句読点を追加


幾つかの改行を追加


われて()り → う関係性に()り、大体


前方部の部屋へ駆け付け言霊を唱える。

言霊を唱える為に前方部の部屋へと駆け付ける。


「 余りの事に口をぽっかり開けたものだから、リーファ様が慌てて補足を付け加えた程だ。」


「 エミリア様は此処(ここ)が巨大魚の掌握圏にも(かかわ)らず、左の水晶硝子(がらす)を通して潜泳機を包むように水の防壁を構築する。

 若干引き気味のリーファ様は、一つ(うなず)いて口を開く。」追加


よし、 → ……よし、


開始お願い(いた)します → 開始頂けますか?


【治癒】開始する。 → 【治癒】を開始する。

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