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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
197/345

178詳らか

 輝く金剛石の六角多孔(ろっかくたこう)飛翔(ひしょう)板を駆り、水上を颯爽(さっそう)と滑り()く。

 ()の威厳に満ちた姿を見遣(みや)れば、誰しも(こうべ)を垂れて(ひざまず)くだろう。

 惜しむらくは()の地底湖に、他のものなど居やしない。


 タリス皇帝陛下は聴音用耳当てを(もっ)て、周囲の状況を(つぶさ)に精査する。

 ()の媒体は、飛翔(ひしょう)板の【炭】でも周りを取り囲む【大気】でも無く、()の地底湖の大半を占める【水】の御業(みわざ)()る音の聴音である。

 幾つもの水に(つな)いだ気の線が、音を伝え耳許(みみもと)の増幅魔石へと運び()かせるのだ。

 矢張(やは)り音を伝え運びたる張本の水だけ()ってか、()の音は極めて良好と容易に受け取れる。


「あっ、ラクス様は、()()り登って()られるのですね。けれど今回は体が椅子に埋もれて仕舞うので、(とて)も助かりますよ」


「リーシャは()だ体が小さいのですから、仕方ありませんわ」


 どうやらラクス様とリーシャの会話が()こえて()()(よう)である。内容はラクス様がお姉さん風を吹かして()(ところ)だろうか。


「今回は余り空気の循環作業は行わないのですわね」


「はい、マギーが植物の管理を()って()()れるので、()ず問題はありませんよ」


「それで、今は(なに)を先程から熱心に()さって()られるのですか?」


()だ水深が浅くて遠いのですけれど、水底(みなそこ)()るかも知れない魔石を探ってます。気になる所は()の地形絵図に(しる)して()るのですよ」


(ああ)()()えば、今回の希少魔石は元々リーシャが探り当てたのでしたわね。あらましは実際に全て()いて()りましたから(わか)りますわよ。()こえて()ても見えないのが残念ですわね」


「……はい、あっ、()しかして……」


『ええー、リーシャちゃんたちの会話は、(しっか)()いて()りますよー。急いで帰っても執務が待ってるだけですから、リーシャちゃんの(しる)した絵図の場所を確認して()きましょう! 絵図を一旦イザベラに渡し()さい。リーファの持つ絵図に(しるし)を写して(もら)うからー』


 若干の本音を漏らしつつも、タリス皇帝陛下は【念話】でリーシャに指示を出す。


「はっ、(かしこ)まりました!」


「え、え、(なに)?」


「はい、確かに預かりました」


 突然の事態に戸惑うラクス様を放置すると決め込んで、イザベラ様は絵図を持って前方部の部屋へ向かった(よう)である。


「ベイミィちゃん、()こえて()りますね! 今からイザベラが持って()る絵図に、リーシャちゃんが魔石の()りそうな場所へ(しるし)を付けて()りますから、リーファの絵図に()れを描き加えて帰投(つい)でに魔石探索をするよう伝えて(もら)えるかなー」


(かしこ)まりました。リーファ様、タリス皇帝陛下から……」


 タリス皇帝陛下が声に出してベイミィに伝えたのは、先行し周辺の音を(つぶさ)に精査して()るハンナ様や周りの近衛(このえ)騎士たちへ、行動予定の変更を伝える(ため)である。

 決してリーファに直接伝えたら、執務が待って()りまする故、承諾し兼ねますとでも反対される危険性を未然に防いだ訳ではない(はず)である。


(わか)った。ベイミィは引き続き聴音を。ああ、来たね。イザベラ、()の絵図に(しるし)を写して()れ。我々もベイミィの使ってる聴音器具程、大掛かりなものではなくても、陛下やハンナ様が使って()られる(よう)な器具で音だけでも得られれば、便利に()るかも知れないな」


 ベイミィからタリス皇帝陛下の言伝(ことづて)を確認したリーファ様は、発せられた勅令を受け入れるしか無い(ため)、早々に考えを切り替えて取り()えず気掛かりな問題の定義だけに(とど)めた(よう)である。

 【念話】の御業(みわざ)では接続する相手を一々指定する必要が()るのだけれど、先程の声を発する言伝(ことづて)の場合は、ハンナ様とベイミィ、()しかしたらラクス様も同時に()けるのだから、リーファ様自身も聞ければ(なに)かと手間が省けるだろうと。


「集約するにしても普通のものですと、ベイミィの(よう)な音の取捨選択が難しいですし、一部の集音装置? ……ですか、()れに限定して分岐を追加して()れば事足りるのではありませんか?」


 アリア殿下は良案と認識するや(いな)や、早速と具体的なものへと昇華に掛かる。


「うーん! ()の辺りはリーシャ様と相談して()るよ!」


「ああ、チェロル、()れは任せて()くが、無理ならそれでも構わないからな。ん、イザベラ、有難(ありがと)う。ベイミィ、()の絵図で案内を頼む」


 リーファ様は操舵(そうだ)を担当する自分が持つよりも、聴音で常に地形を把握して絵図と(にら)めっこして()るベイミィに渡す方が、元々進路補正も担って()るのだから(なに)かと都合が良い。

 (ただ)、最初から指示内容に変更を加える発言をし、場を混乱させても意味が無い。絵図をベイミィと交換すれば済む話なのだから。


「あ、はい、承知(いた)しましたわ。では、()ず北東へ向かって下さいませ」


 ベイミィは自分の絵図を(しるし)の描かれたものと交換してから、自身の頭に(えが)かれた位置情報と照らし合わせて目的地を示すのだ。


「うん、(わか)りましたわ。北東へ向かうそうですのよ」


 どうやらラクス様の所でも、聴音が開始された模様である。


「北東……あっ、イザベラ様、有難(ありがと)御座(ござ)います。……(ああ)此処(ここ)か、確かライリッテ様が怪しいと(おっしゃ)られて()た場所です……」


「「怪しいですか……」」

『怪しい?』

「リーファ様! 今、目指す場所はライリッテ様が怪しいと(おっしゃ)られた場所だそうですの!」


 イザベラ様とラクス様が同時に声を重ね、タリス皇帝陛下が思わず【念話】を放ち、ベイミィが前方部の部屋で報告したのである。

 リーファ様は手で額を押さえつつも、口を開く。


「……なら()めて()こう」


 だが、()れを(さえぎ)(よう)にアリア殿下が(のたま)われるのである。


「いえ、私の事なら構いませんのよ。()れを行かずして(わたくし)此処(ここ)へ来た甲斐(かい)が無いと()うものですわ!」



---

修正記録 2017-08-26 10:48


若干を本音を → 若干の本音を


句読点を追加


---

修正記録 2017-08-26 07:36


 ()れは、飛翔(ひしょう)板でも【大気】でも無く、【水】の御業(みわざ)()る音の聴音である。

 ()の媒体は、飛翔(ひしょう)板の【炭】でも周りを取り囲む【大気】でも無く、()の地底湖の大半を占める【水】の御業(みわざ)()る音の聴音である。


(おこな)って → ()って


リーシャが探り当てて()りました(よう)ですわね。

今回の希少魔石は元々リーシャが探り当てたのでしたわね。


ルビを追加


「突然の事態に戸惑うラクス様を放置すると決め込んで、」追加


イザベラ → イザベラ様


部屋に → 部屋へ


、ああ、イザベラ、 → 。ああ、来たね。イザベラ、


句読点を追加


省けるだろう。 → 省けるだろうと。


「声を発する」追加


自分も → リーファ様自身も


「 リーファ様は操舵(そうだ)を担当する自分が持つよりも、聴音で常に地形を把握して絵図と(にら)めっこして()るベイミィに渡す方が、元々進路補正も担って()るのだから(なに)かと都合が良い。

 (ただ)、最初から指示内容に変更を加える発言をし場を混乱させても意味が無い。絵図をベイミィと交換すれば済む話なのだから。」追加


自分の頭 → 自身の頭


此処(ここ)か確か → 此処(ここ)か、確か

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