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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
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177気後れ

 皆の一致団結した連携は、物事の解決を加速する。

 入り江を完全に封鎖して()た2つの氷塊は、見る間に解体されて新設した収納場所へと運び込まれたのだから。

 ()御蔭(おかげ)かは(わか)らぬが、メイリア神官長の顔も幾分晴れやかに()っただろうか。

 バルパルはチェロルの遊び相手にされない(ため)にも、早々に前回運び込んだ部屋へと移動済みである。

 (ただ)矢張(やは)()の4分の1巨大貝だと食べ過ぎで、昨日は2回に分けて食べさせたとの事。

 勿論(もちろん)、今回は小さめに切り分けたので、多分、次からは食べ過ぎで寝込む事は無いだろう。


 メイリア神官長は礼を()って微動だにしない。

 皆は帰投の準備に入って()り、アリア殿下は聴音用耳当てをタリス皇帝陛下に渡して、足取り軽く潜泳機へと乗り込む(ところ)である。


「お母様が潜泳機と共に水上を滑走して後行するなら、(わか)れて移動するのは護衛の都合だけでしたのね」


 アリア殿下がぽつりと()らす不平に、リーファ様は臆面もなく応えるのだ。


「今後、近衛(このえ)騎士たちに配備予定の聴音用耳当てを、陛下や殿下に(しっか)りと御確認して(いただ)ければと、機会を設けたに過ぎませぬ故、御理解を賜りとう存じます」


 アリア殿下としても聴音用耳当てを前にして、興味を()かれうずうずして()たのは間違いないのである。

 優先順位を決められない中で、自分から口に出さずとも切っ掛けを(もら)えたのだから、文句は無いのだが、若干悔しいので口に出した(まで)なのだろう。


「仕方ありませんわね。(あれ)は革新的に世の中の()(よう)を変えて仕舞(しま)うでしょう。後程(のちほど)、エミリアたちにも確認させねば()りませんわ」


 ()の事は、リーファ様も薄々気付いて()る。

 (なに)しろ潜泳機で作業して()たリーシャたちの会話が、多少とも離れたラクス様の(もと)へ、(いや)、蓄音魔器の(もと)へ全て届いて(つまび)らかに声を()かせたのだから。

 ()(よう)な器具が持ち歩ける大きさで存在すれば、利用も対策も課題が山積みと()るくらいは()ぐに想像できる。


 前方部の扉から降り立ち操舵(そうだ)席へ向かおうとするリーファ様をベイミィが呼び止める。


「リーファ様、此方(こちら)が声を増幅する魔石ですの。他の魔石は未確認のものと別にして後部の部屋に置いて()りますわ」


「ああ、回収して()いて()れたのだな。チェロル、(さっき)は悪かったから避けないで()()れると嬉しいのだが……」


「……うん!」


「リーファ様、()れはメアリーに宮殿へ転送させましょう」


 アリア殿下が横から声を掛けると更に上から、マリオン先生の声が掛かる。


「タリス皇帝陛下が親書を添えるそうです。(しば)しお待ち(いただ)きとう御座(ござ)います」


 続いてメアリーがするりと降り立ち()れで、予定して()た全員が搭乗した事に()る。

 エミリア様とミーア様の2人がアリア殿下の護衛を努め、イザベラ様とラクス様は既に邪魔に()らないよう中央の部屋へ移動済みである。


「分かりましたわ。リザエルさんの役職でも増やされるのでしょう」


 勿論(もちろん)、そんな事は無いのだが、不思議と冗談には()こえない。


「では、()れを、皇太后陛下宛の親書と()って()ります」


 届けに来たのはハンナ様直々にであるが、皇太后陛下と聞けば(みずか)ら進んで運ぶのも(やぶさ)かで無い。部下たちとしては困った話なのだが。


「確かに、それでは離宮経由と()りますが、届けさせて(いただ)きます」


 メアリーが受け取った親書と魔石の入った袋を、通い箱に入れると【瞬間転送】の御業(みわざ)が発動する。


「はい、確かに親書の転送を確認(いた)しました」


 ハンナ様は(しっか)りと転送が終わるのを見届けてから、(ようや)く扉を閉めて潜泳機を後にする。


「では、出発します。リーシャは入り江を出てから、潜行手順を開始して()れ」


「=了解しました=」


 潜泳機の出発に気付いたハンナ様が、慌てて先行して()る自分の部隊へと戻って()く。

 律儀にタリス皇帝陛下へ親書の転送が完了した事を、報告しに行って()たのだから仕方無い。

 続いてタリス皇帝陛下の一団も潜泳機の後ろへ、ゆっくりと付いて()く。

 勿論(もちろん)、陛下の耳は聴音用耳当てを(かぶ)せ聞き耳を立て(なが)らの水上滑走である。陛下で無ければ【念話】の御業(みわざ)持ちと()われるものたちは、()の聴音用耳当てとは最高の組み合わせかも知れない。


 入り江を(にぎ)わせて()た一団が去ると辺りが急に暗くなり、礼を()り続けて()たメイリア神官長は()の場にへなへなと力無く座り込む。


「はあ、()の方たち()()り3女傑ですよね。本当にびっくりしましたよ。(おぼろ)げな記憶を頼りに思い出そうとして()たら、陛下が現れて更にびっくりしましたけれどね。マリオン様に慣れて()たのも()りますけれど、どうやら3女傑の方たちは(うわさ)程恐ろしい方たちでは無い(よう)ですのね」


 メイリア神官長は安心したのか、気が抜けてつい口に出して(つぶや)いて仕舞(しま)う。


()る程ー、当たらずも遠からずで一番の原因は3人に気後れして仕舞(しま)ったと()(ところ)かなー。そうだよー、3人は(うわさ)程は()らかして()いよー。半分以上は私が押し付けた後始末だからね!』


 メイリア神官長が、ほんのり涙目なのは気の所為(せい)だろう。

 聴音用耳当ては、(まさ)に最悪の組み合わせである。



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修正記録 2017-08-25 09:12


滑走する → 滑走して後行する


近衛騎 → 近衛(このえ)騎士たち


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修正記録 2017-08-25 08:53


報告しに行って()たのだ。 → 報告しに行って()たのだから仕方無い。


聴音用耳当を(かぶ)せ → 聴音用耳当てを(かぶ)


「 聴音用耳当ては、(まさ)に最悪の組み合わせである。」追加

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