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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
195/345

176可哀想

 タリス皇帝陛下は宙に浮かび、静かにメイリア神官長の横へと移動する。

 陛下は【飛翔(ひしょう)】の御業(みわざ)を使った移動であるが、他のものたちでも本の少し飛ぶくらいであれば、適性素材を身に(まと)って()るだけで可能なのである。

 但し、気力の燃費が(すこぶ)る悪いのだが。

 ティアトア様やライリッテ様たち近衛(このえ)とマリオン先生は、慌てて飛び立ちハンナ様たちと立ち位置を入れ替わる。

 (いや)、リルトル様だけ飛翔(ひしょう)板を【瞬間転送】の御業(みわざ)で取り寄せてから、水上を滑り()くのだ。

 メイリア神官長としては、ハンナ様たちに紛れて後ろへ下がりたい(よう)だが、陛下の視線にがっちり捉えられて()て身動きも(まま)ならない。

 勿論(もちろん)()の場で気兼ねなく自由に動けるのは、タリス皇帝陛下とバルパルぐらいだろう。


()れはタリス皇帝陛下に()かれましては御……」

「聖堂での挨拶じゃ()るまいし、堅苦しい常套句(じょうとうく)は要らないよー」


 タリス皇帝陛下はメイリア神官長の言葉に対して、(かぶ)せ気味に断りを入れて()るのだ。

 常套句(じょうとうく)を持ち出すのは詰まり、答えをはぐらかし陛下の質問に対して無言を避ける手段だったのだが、()れは許して()れない様子である。


「はあ、膝を抱えて()りました事は、御忘れ(いただ)けると大変助かります故、切に願いまする」


 タリス皇帝陛下は満面の笑みを(たた)(なが)ら首を振る。鬼である。

 若干涙目なのは気の所為(せい)であろう、そんなメイリア神官長は観念したのか、ぽつぽつと語りだす。


「バルパルの事なので御座(ござ)いますが、以前は()れ程の大食(だつ)では御座(ござ)いませんでした。ま、まあ、()れ事態は如何(どう)でも良いので御座(ござ)います。」


 実に煮え切らない物言いである。

 気になるが仕方無しと、自分で見切りを付けたと()う事だろうか。


(ただ)(いささ)か気になるのが、()れ以上大きく()ると此処(ここ)から出られなく()りはしないかとか、提供(いただ)いた食料を切り分けるにしても何処(どこ)へ仕舞い置くのかとかを、考えて()りましたので御座(ござ)います」


 リーファ様は横穴周りの足場が窮屈に()りそうだった(ため)、潜泳機の甲板で(とど)まり見守って()(ところ)である。

 其処(そこ)へ同じく様子を(うかが)って()たリーシャたちの一団から、マギーが進み出てごにょごにょと口添えするのだ。

 リーファ様は一つ(うなず)きすうっと宙を舞う。勿論(もちろん)、全身の服装には砂鉄やら六角多孔(ろっかくたこう)の岩板を組み込んだものを(まと)っての飛躍である。

 少し狭いがティアトア様の傍らに着地すると前へ進み出て具申する。


「陛下、少し(よろ)しいでしょうか?」


「ふむ、構わないよー」


「リーシャたちの意見や私の私見を総合しますとバルパルは(とて)も食いしん坊でして、目の前にご飯が()れば色々と気苦労に絶えない(よう)御座(ござ)います。以前にご飯の量を確認せずに食べても良いと許可を出した(ところ)、目の前に()ったご飯を全て平らげて仕舞(しま)い、お腹を(ふく)らませて身動きが取れないやら苦しいやらで(しば)し寝込んで仕舞(しま)った事が御座(ござ)います」


「あらあら、()れは大変だったのねー」


 自分の失敗談を皇帝陛下に簡単に話せるものでは無かろうて。

 リーファ様は余り気にせず話して()るのだが。


「それからというものメイリア神官長殿は、バルパルが食べ過ぎない(よう)注意を払って()られる訳で御座(ござ)いますが、多分、()(よう)なご飯の山が2つも(そび)え立って()りますれば、バルパルも(かじ)りたくて居ても立っても居られないのではと存じます」


「今は食事中だから問題無いのねー」


 お腹をぷっくり膨らませて(なお)食べ続けるバルパルは、既に食べ過ぎと止めるべきではなかろうか。


「付け加えるなら()(よう)な魔落を氷山の(ごと)く凍らせしめる人外めいた気力量で、(おのの)呆気(あっけ)にとられて()(すき)に、何時(いつ)の間にか届けに来た3人が帰って仕舞(しま)ったのでしょう。後から()れに気付きはしたものの、氷塊の分割や何処(どこ)かに仕舞(しま)う空間作りが頼めなくて落ち込み膝を抱えて()られたのではありませんか?」


 リーファ様は話しの締め(くく)りで、メイリア神官長へ顔を向けて尋ねる形を()るのである。


「相違御座(ござ)いません……」


 メイリア神官長は膝を突き(うつむ)く顔は、若干涙ぐんで()る。

 なんだろうか、舞台劇で犯行を解き明かされた下手人の(よう)である。

 (ただ)、タリス皇帝陛下の前で少し(ばか)り恥ずかしい失態を、(ことごと)(つまび)らかにされただけなのに。


 そそくさと()って()たリーシャとマリオン先生が、メイリア神官長を立たせて一緒に収納庫を(つく)りましょうと連れて()く。

 氷塊では丁度(ちょうど)エミリア様とマギーが解体を始めようとして()(ところ)で、慌ててライリッテとリルトルが手伝いをしに駆け付ける。


「私は田螺(たにし)に火を通して()きましょうね!」


 若干、問い詰めた事が後ろめたいのか、タリス皇帝陛下もそそくさと()の場を後にする。


「ぴぃゃゃぁぁ……」


 バルパルはすっかり巨大貝4分の1を食べ尽し、大きくお腹を膨らませて身動きが全く取れない(よう)である。

 苦しそうな表情から見受けられる感じだと、8分の1でも良い気がするのだが。

 そんなバルパルの(もと)に影が射す。


「おお! おっきい!」


「チェロル、お腹を押さえたら可哀想(かわいそう)ですわよ」


「びぃゃゃぁぁ……」


 ベイミィには口だけでは無く行動で示して欲しいものである。



---

修正記録 2017-08-24 08:22


ルビを追加


御忘れて → 御忘れ


所為(せい)であろうメイリア神官長は → 所為(せい)であろう、そんなメイリア神官長は


出れなく → 出られなく


装備 → 服装


で作られた服装を使って → を組み込んだものを(まと)って

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