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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
193/345

174悠久

 リーシャは唯今(ただいま)(ところ)、最上級の椅子に埋もれ気味で()るものの、(くじ)けず魔石探索を継続中なのである。

 中央の上部操舵(そうだ)席は1席だけと()う事も()って、周りにも十分余裕が()(ため)か、当初設置されて()た座席よりも大きく幅広と()って()る。

 縦令(たとえ)、保護用の布が(かぶ)せて()ると()っても、素材は高級でふかふかなのだから、リーシャの()だ少し小柄な体では、若干柔らか過ぎる嫌いが()るのだ。

 大人用に作られた椅子だから、()れも仕方が無いのかも知れない。


 後ろには鉄管の梯子(はしご)(つか)まるライリッテ様が、リーシャと同じく魔石探索を分担して、魔力の濃度や石の気配を精査して()る。

 そんな、姿勢を気になってか、リーシャが口を開く。


「ライリッテ様、()(よろ)しければ隣に座って(いただ)けませんでしょうか? 私1人では椅子に埋まって仕舞(しま)い若干作業が()(づら)いのです」


「ふふ、お若いのに中々の気遣いと言葉の(あや)、マリオンが育てた割に()くできて()りますのね。私の事でしたら気にする必要は()りませんのよ。リーシャさんはお見受けする(ところ)、定期的に計測器の確認や機器の操作を(おこな)って()りますの。ですから、負担なくごゆるりと其処(そこ)で座る必要が()りますのよ。私は陛下の護衛として此処(ここ)()りますのですから、有事にいの一番で駆け付けられる状態で()らねば()りませんのよ」


 本当に椅子に沈みすぎて動き(にく)い事情も()り、リーシャに取って自然と口に出た言葉で()ったが、ライリッテ様は気遣いと判断して騎士の矜持(きょうじ)としても受けられないと()う。(まま)ならないものである。


「ん、ならば我は多少なりに小柄な故、丁度(ちょうど)良いやも知れぬぞ」


 ()う言うと、リルトル様はするりとリーシャの開けて()た場所へと入り込む。

 リーシャの埋もれて()た体は浮き上がり、椅子も目一杯(めいっぱい)に調整して()た事も相俟(あいま)って、計器類を操作し(やす)い位置に達する事ができた(よう)である。


「おお、良い塩梅(あんばい)の位置取りに来られました。有難(ありがと)御座(ござ)います」


「ん、構わぬぞ。役に立てならお安い御用ぞ」


 リルトル様の()の姿形は16歳くらいで、小柄と()うよりは年相応の体型と()いたく()る。

 女性であれ騎士として育てられれば大体18歳(まで)は成長期で、身長が165cmから175cmに()るものが多いのだから。


 先程、リーシャが紹介を受けた折にライリッテ様とリルトル様は、(かつ)てマリオン先生と共にタリス皇帝陛下の護衛をしたり、訓練と称して第一第二騎士団を(しご)いたりしたものだぞと、小粋な冗談を交え話されたのだ。

 ()う、詰まり3人は元ラギストア帝国近衛(このえ)騎士として仕え、タリス皇帝陛下が成長してルトアニアへ嫁ぐ(まで)の間、苦楽を共にして()た同世代なのだと。

 だとしたら、ベイミィと同じ【長寿】の御業(みわざ)を持つと気付くのも至極当然と()え、(なに)かと気になるものである。

 そして、リルトル様も(また)()の様な機微には目敏(めざと)いのか()ぐ気付くのだ。


「ん、矢張(やは)()の姿が気になるかえ?」


「あっ、済みません……」


 リーシャが謝ると、(つい)でマリオン先生が口添えする。


「陛下の隣に座って(いた)たベイミィ、頭の両側に丼鉢(どんぶりばち)を添えて()た子も、リルトルと同じ【長寿】持ちなのだよ。傍らに育った子が持つ御業(みわざ)だから、気になっても仕方無いかな」


「ん、そうか……。()れは(なに)かと大変で()ろうぞ」


「リルトル、()れは……」


 ライリッテ様が制止を掛けようとするものの、リルトル様は構わず話し始めた。


「ん、(そば)に居るなら必要な事ぞ。【長寿】は13歳から15歳(まで)は他のものと同じく年を重ねるが、()れ以降は一旦老いが()まろうぞ」


「えっ」


「ん、そして、又徐々に年を重ねるようには()るが、()れは通常の4倍程時間を掛けて年を重ねると()われて()るぞ」


「……だから」


「ん、我は13の(よわい)にて老いが()まった。悠久の時間を掛けて老いるのだぞ」


 何時(いつ)しかリーシャの双眸(そうぼう)から涙が(あふ)れて()る。


「リーシャさん、リルトルが御免(ごめん)ね」


 ライリッテ様はそっとリーシャの肩を抱く。

 下ではマリオンが額に手を置き、マギーが静かに見守って()る。


「ん、まあ、嘘か(まこと)か【長寿】の御業(みわざ)持ちを傍らに付ければ()のもの4代(まで)を必ず見守ると()い伝えられて()るぞ。だからルトアニアはティアトア団長を陛下に付けたのだと()われて()るぞ」


(いや)、最後のは出所不確かな(うわさ)話に過ぎないからね。第一、周りが普通に引退して居なく()る時機だから、合わせて一緒に引退するとしたら()のくらいでしょ。どうせなら、8代くらい盛って()こうよ」


 ()の場に漂う微妙な空気を変えようとしたのか、リルトル様が色々微妙な話を出すものだから、マリオン先生は突っ込みを入れて(しっか)りと切り替えに掛かるのだ。


「ん、検討はして()るぞ」



 ティアトア様は18歳ぐらいと確かに若い見た目であった。

 と()うか14歳のラクス様や13歳の近衛(このえ)見習いたちが、派出所周りに普通に居るからなのか、特に違和感無く見過ごして()たのである。

 (いや)唯単(ただたん)に影が薄いのだろう。



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修正記録 2017-08-22 09:30


「 ()う、詰まり3人は元ラギストア帝国近衛(このえ)騎士として仕え、タリス皇帝陛下が成長してルトアニアへ嫁ぐ(まで)の間、苦楽を共にして()た同世代なのだと。」追加


句読点を追加


「。第一、周りが普通に引退して居なく()る時機だから、合わせて一緒に引退するとしたら()のくらいでしょ。どうせなら、8代くらい盛って()こうよ」追加


「 ()の場に漂う微妙な空気を変えようとしたのか、リルトル様が色々微妙な話を出すものだから、マリオン先生は突っ込みを入れて(しっか)りと切り替えに掛かるのだ。」追加


「「ん、検討はして()るぞ」」追加


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