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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
192/345

173ひげ4

 チェロルは真剣な面持ちで首を傾けつつ遠隔義腕を操作する。

 別に疑問が()る訳では無く、遠隔義腕の操作用に新設した幾つかの小窓が、全て中央下部に()るのだ。

 左の操舵(そうだ)席に座るチェロルは、(おの)ずと顔が右へ傾くのは仕方が無い。

 ()の小窓に()いては()だ改良の余地が()りそうである。


 リーファ様はぐたりと(たぬき)寝入り()め込んで()たチェロルへ普通に頼んだら、任せて頂戴(ちょうだい)と言わん(ばか)りに張り切って遠隔義腕の操作をし始めたものだから、ならば任せて()こうと大手を振って何やら話し始めたのだ。


「魔石は永い年月を掛けて魔気が(よど)み固まったもの、(ある)いは濃い(よど)みの中で(さら)され続けた石が変じたものと()うのが通説だが、何故(なにゆえ)地底湖の水底(みなそこ)()れができあがったのだろうね」


 勿論(もちろん)、振ってる訳ではなく実際は腕を組み(なが)ら、今は一切操舵(そうだ)に関わる積りは無いと()(てい)を示して()る。

 ()れも()(はず)、チェロルは潜泳機の移動も(にな)い精密な操作をして()るのだから、下手に触らないよう手を退()いて()るのだ。


「あのう、アリア殿下が()れに()いて見解が()るそうです」


「ああ、()うなのか。では、ベイミィ伝言役を頼む」


「はい、確かに私たちが思い付くのは、空気の流れが悪い場所で魔気が(よど)む状態です。()の延長線上で考えれば、水底(みなそこ)に魔石ができるとは考え(にく)いかも知れませんわね。ですが、私たちの血肉へ気が蓄えられ流れて()(よう)に、水も(また)魔気を溶かし入れ内包し(やす)いのかも知れませんわ」


「そうですね、普段から魔気と()い親しんで()りますから、余計に水としては馴染(なじ)み無く感じるのかも知れません。リーシャも()って()た通り(くぼ)みの()る場所に、魔気溜まりができて()る。(すなわ)其処(そこ)(たまたま)周りの地形環境も重なって水の流れが悪く魔気? 魔水? にも滞りが発生し濃く(よど)んで()たと()う事で御座(ござ)いましょうか」


「……はい、ええ、そうですわね。()れと水上では全く発見されなかった事から、天井付近よりも水面付近や水中の方が魔気が濃いのかも知れませんわね。()しくは憶測でしか()りませんが、地底湖の形状から見て縦令(たとえ)天井付近で魔石の元と()るものができても、自重(じじゅう)で水中に落ちて仕舞(しま)うのではありませんか?」


「ああ、()れは確かですね。水中の方が魔力は濃いかも知れません。以前に()き及んだ魔気の循環で思い浮かべたのは、水を取り出す際に空中へ気を放出する心象でした。ですが()()く考えて()ると水中で水を取り出す訳ですから、気の放出は水の中に決まって()りますね」


「……はい、他にも岩は顕現した後に戻される事が比較的に多いと思いますけれど、水は顕現した後に戻せる状態では無い事の方が多いのではないでしょうか。であれば気の蓄積は水中の方が(おの)ずと多く()るのでしょうね」


()る程、では、他にも水の流れが悪い場所に魔水? の濃い場所が()って、魔石ができて()る可能性も()るとすれば……。リーシャ、他にも魔力の濃い場所()しくは魔石が()りそうな場所は確認できるか?」


「=唯今(ただいま)、確認して()(ところ)ですが、()(そば)では魔石の気配を感じ取れません。ライリッテ様も()じ登って()られ、手伝って(いただ)いて()ります。それから【遠見】で確認した範囲では、少し離れた位置で幾つか気になる場所が()ります=」


「ふむ、()の離れた位置も確認したい(ところ)だが、目下の状況で()えば()の声を増幅する魔石を回収した後、ルトアニアへ早急に送る事が優先されるから、取り()えず当初の予定通り聖堂地下通路が()る入り江へ向かうとする」


「=了解しました。一応、引き続き認識有効範囲に対して魔石探索を実施します=」


「ああ、()れで頼む」


「ふうー! 全部の魔石回収が終わったんだよ!」


全部(ぜ・ん・ぶ)?」

「ヒィッ!」


 リーファ様の(ただ)ならぬ雰囲気に、チェロルはがくがくと震える(ばか)りである。


「リーファは見てなかったから分からないでしょうけれど、ちゃんと2箇所()る収納場所に()けて入れてましたよー。可動確認するなら両方の(ひげ)を使わないと意味が()りませんから、同時(・・)に作業を(おこな)って()りましたね! チェロルちゃんは中々見どころが()るよ!」


 タリス皇帝陛下がやけに大人(おとな)しかったのは、どうやらチェロルの作業を真剣に見守って()たからの(よう)である。


「えへへ」


 チェロルは味方をして()れる人物には無防備に()(よう)で、頭を()でられても平気で(にこ)やかに笑顔を見せるのだ。


()れは早とちりだったな。チェロル、ちゃんと見てなかったのに疑って悪かった」


 リーファ様がチェロルに謝って()ると、ベイミィが怖ず怖ずと口を開く。


「……あっ、はい、アリア殿下が、お母様、(ひげ)では()りません。遠隔義腕と()うのです、と」



---

修正記録 2017-08-21 09:00


「周りの地形環境も重なって」追加


魔水? が濃く → 魔水? にも滞りが発生し濃く


()う訳で → と()う事で


今の(ところ)、 → 目下の状況で()えば


「「()れは早とちりだったな。チェロル、ちゃんと見てなかったのに疑って悪かった」」追加


「 リーファ様がチェロルに謝って()ると、ベイミィが怖ず怖ずと口を開く。」追加

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