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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
191/345

172水底

「リーシャ、注水を30L分追加したら止めて()れ」


「=了解しました=」


 そして、ゆっくりと沈み()く鉄の(かたまり)は途中から潜舵(せんだ)横舵(おうだ)を垂直へ、続いて僅かに仰角(ぎょうかく)へ移り変わる事で()の水深を維持して動きを止めるのだ。


「潜泳機から発する音が(ほぼ)途絶えました。停止したと思われます」


 ベイミィの連絡を受けたリーファ様は、次の作業へと移行する。


「了解、潜舵(せんだ)横舵(おうだ)を水平に転回し固定を完了」


「……リーファ、楽しそうだねー」


「ええ、御業(みわざ)で動かさずに自分の操舵(そうだ)技術のみで挙動を調整するのは、難しくて中々楽しいですよ」


「ふむー、此処(ここ)で練習した操舵(そうだ)技術を(もっ)水底(みなそこ)で行動する訳かな!」


「いえ、()れからは操舵(そうだ)を使わず御業(みわざ)のみで、潜泳機を動かし(いた)します。操舵(そうだ)を使って()たのは、飽く(まで)鉄に適性が無いものでも訓練次第で操舵(そうだ)できる事を、確認しただけで御座(ござ)います。では、潜行を開始(いた)します」


「水深約17m、水底(すいてい)(まで)8m、7m……」


流石(さすが)に適性の無いものに水底(すいてい)()()りでの作業を、行わせる積もりも御座いませんからね」


「ふむー、まあ、挙動が想定範囲で()るかは先に確認して()かないと、()っ付け本番で()る事と()っても(かな)わないわねー」


 タリス皇帝陛下とリーファ様が御快談の中、黙々と声を発し続けるベイミィは中々の玉と()うか、()れが任務で()るから(つら)(ところ)だろう。


「2m、1m、停止を確認しましたわ」


「うむ、私の(つか)んで()る感覚とも一致するから、中々の精度が()るのではないかな。()しかして自分の声を反響で確認して()るのか?」


「はい、特に数字の声は()き分けし(やす)いと(さと)りましたので、それからは楽に認識できて()りますのよ」


()る程、リーシャ、水底(すいてい)見易(みやす)いように少し機体を前に傾けるから、留意を促して()いて()れ。ああ、それから、リーシャなら鉄鉱石や水晶石にも親和性が多少でも()るだろうから気力が通り(やす)(はず)だな。其方(そちら)からも土や岩の状態確認に努めて()れ」


「=了解しまし……た……あれ? あっ、機体を傾けるから皆さん留意して(くだ)さいと、連絡が届いて()ります=」


「リーシャ、(なに)かに気付いたのか? ()(かく)、少し傾けるぞ」


「70cm、60cm、50cm、停止しましたわ」


「=(ああ)、多分ですが水底(みなそこ)(くぼ)んで()る部分、左下の少し前方ですね。其処(そこ)に魔気溜まりができて()るみたいなのですが、()しなバルパルが持って()た魔石とやらの雰囲気に似て()る石が幾つか感じ取れまして……=」


「左下の少し前……」


(あれ)じゃないかな! 魔力が濃い所が()るよ!」


「チェロル……。元気に()ったなら……(いや)、急にぐったりしなくても。ああ、()れか確かに魔力を放出して()(よう)だな」


「アリア、意識を(つな)いだ(まま)なのですから、()(よう)に興奮されると頭に響きますよ! ハンナ、早速と騎士団用に少しでもと所望(しょもう)するのは構いませんが、(いささ)か気が早過ぎるのではないかなー」


「陛下、声が表に出て仕舞(しま)って()ります」


 影は薄いがティアトア隊長も他の近衛(このえ)騎士たちも、(しっか)り傍らに控えて()るのである。


「あらー、私も少し動揺したかなー。ふふ、ベイミィちゃんが面白い顔に()ってるー。って事は気付いたのかな?」


「し、失礼(つかまつ)りました」


否否(いやいや)()しかしたら気付くかなーって期待してたんだよー。うん、()う、アリアたちと此方(こちら)は同時進行で会話してたのよ! 折角【念話】を授かったのだらか有効活用しようと色々頑張ったら、【分裂思考】の後天御業(みわざ)を得られたのよー」


「は、はあ……」


「=あのう、リーファ様、()の距離なら気の線を(つな)いで気力を送っても大丈夫なのでしょうか?=」


「ううむ、水は衝撃を伝え(やす)いから……」


「許可しますよ!」


「へ、陛下……」


「忘れて()りませんか? 此処(ここ)は水中なのですよ! リーシャちゃんもチェロルちゃんも「ヒィッ!」……リーファも【水】の防壁を(つく)れるのですから、お互いに干渉しないよう留意し(なが)ら気を通して防壁を(つく)って()けば3重の守りに()りますし、足りなければライリッテも加えれば良いのですよ! だけれど正直1つ()れば十分じゃないのかなー?」


「はあ、分かりました。一応、チェロルと私、リーシャで3重の防壁を(つく)って()いて、()の上で確認を試みる事に(いた)します。リーシャも()れで(よろ)しいね」


「=了解しました=」


「では、私が右から通して手前10cmで防壁を張るからチェロルは下から通して1mくらいで構築、リーシャは残りの好きな場所から通して構築して()れたら良いよ。では開始。私は既に張り終わって()るがね」


「了解! 此方(こちら)も完了してるよ!」


「=(わか)りました。……では気力を送ります=」


「びぃぃぃぃん」


「=……一寸(ちょっと)驚きましたけれど、発音装置に使って()る魔石と同じ種類みたいですね。次の石に移ります=」

「ふぁぁぁぁん」「次へ」

「ふぉぉぉぉん」「次」

「ぴゅぅぅぅん」

「……(くず)魔石と()われる意味が沁沁(しみじみ)と理解できたなぁって、あれ?」


「リーシャ、()の魔石が()れか(わか)るか? 何処(どこ)()るかだ」


「あ、はい、って外から自分の声が()こえるのって……7つ()る真ん中の石です」

「2列めの真ん中だな」

「はい、()れです」


「『リーシャ、もう他の魔石は確認しては()りませんよ! 爆発して粉々に()ったり反発で方方(ほうぼう)に散らばったら目も当てられませんからねー。 ハンナが夜中にしくしく泣くかも知れませんよ!』 リーファ、()の声を増幅させた音量からして、可也(かなり)の大きさと推測できますから必ず持ち帰りますよー。(つい)でに(ひげ)も試せるから一石二鳥ですねー」


「はっ、御意(ぎょい)に存じます」


「ハンナ様が苦言を呈されて、リーシャ様へ誤解を解いて欲しいと申されて()りますのと、アリア殿下が()れは(ひげ)では無く遠隔義腕と()うのですと(のたま)われていらせられます」


 ベイミィはタリス皇帝陛下が【念話】でも()いて()られ御存知だと理解して()ても、叫ばれて()られるお二方を思えば伝えずには居られなかった(よう)である。



---

修正記録 2017-08-20 11:05


そして仰角(ぎょうかく)に → 続いて僅かに仰角(ぎょうかく)


---

修正記録 2017-08-20 09:22


ゆっくりと → そして、ゆっくりと


まあ、 → ふむー、まあ、


「 タリス皇帝陛下とリーファ様が御快談の中、黙々と声を発し続けるベイミィは中々の玉と()うか、()れが任務で()るから(つら)(ところ)だろう。」


機体を → 少し機体を


ルビを追加


リーシャ様に → リーシャ様へ

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