表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリアは知らない  作者: taru
三章
19/345

07帰還


第一部 終幕

『どの位経ったのでしょう。

 涙が止まらなく何も考えられず、ただ皆の優しさに甘えられるのが嬉しかった』


 いつの間にか寝てしまったのだろう。どうやらアリアはエミリアに抱きかかえられ移動しているようだ。光幻たちはどうなったのか気になったので感覚を繋ごうとしたが霧散する。


『今出すのを試みるのは不味いよね。んっ、手に何か持っていますわね。

 黄色い硝子(ガラス)玉……後で調べてみますか』


 アリアは何も考えずに【空間収納】に放り込んだ。寝起きである。


「エミリア、自分で歩きますわ」

「お目覚めになられたのですね」

「ええ」

「お腹はお空きでは御座いませんか?」

「今は大丈夫ですわ」


 エミリアはそっとアリアを降ろしてくれる。今アリアは気遣って貰える体がある。簡単に壊れてしまう弱い幼い体。これが何という喜びなんだろうと嚙み締める。


「何処に向かっているのかしら」


 メアリーが横に来て手を繋ぐ。アリアは子供じゃ無いのよと内心ふぅすーと(いきどお)っているが何も言わない。


「先日この先に魔窟の出口を見つけました。少し崖上となった岩場ですので飛び出さないで下さいね」


 やはり子供と思われているようだ。(すで)に信用は微塵(みじん)も無い。

 ふと崖上の言葉から空中浮遊(【浮遊】の御業)は今でも使えるのか気になった。一度気になったものは仕方が無い。試してみた。ふよふよ浮き始めた。メアリーが手を繋いでおいて良かったという顔をしている。本当に信用は微塵も無いようだ。


---


 小高い崖になっていた魔窟の出口穴から出たアリアたち一行(いっこう)は日の光を久しぶりに浴びた。昼ぐらいだろうか。遠くに大きく陥没した穴が見える。

 穴の近くには数台の馬車が止まっており、人々が何やら作業をしているようだった。


 【浮遊】を使ってふよふよと降りていく。他の騎士たち侍女までも軽々と左右に身を翻して降りていく。


「あれは何をなさってらっしゃるのかしら?」


 エミリアの隣にゆっくり降り立ち、気になるので聞いてみた。


「ここはルトアニア領とバグルス領を首都リーシャンハイスと結ぶ交通の要ですからね。

 迂回路の整備や調査団の準備、役人の確認。さて全部でしょうか?

 ああ迎えがきたようですね。

 ミーアあの一団に所属の確認と一部の情報提供、それから船が殿下の部隊であることを言い含めて下さい」


 エミリアも知らないようである。



 遠くの空に通称号、(ふね)と呼ばれるルトアニア領が近頃なにやら秘匿開発中らしい翼の付いた大型運搬飛翔艇が2艇、小型が1艇浮かんでいた。

 話によると、元々は木の御業持ちが板を使って空を飛ぶ遊びを始めたのが切っ掛けで、開発が始まったのだとか。

 開発当初は安全と再利用を考慮して湖に着水していたと。そのため下部に船を付けていたことから船の秘匿名称が定着したらしい。どうでもいい話である。


「これは秘匿開発中と伺ったのですが?」

「姫様が何より優先されます」


 さようですか。


---


 2艇の大型運搬飛翔艇にはアリア直属の親衛隊44名が搭乗していた。アリアはとっとと乗り込んで帰りの途につきたかったのだろう。

 だが全員が姫様の安否確認と挨拶をしなくてはならない。エミリアの号令と共に飛翔艇の前へ親衛隊全員が整列し礼をとる。


「皆、急な召集に駆けつけてくれた事、感謝致します。

私はこの度の事、詳しくは(ふね)で話しますが、皆が日々たゆまぬ努力を昇華し御業と為す、美の誉れを我に捧げてくれた思いが、大きく大きく助けになりました。

改めて述べます。

皆に感謝を致します」

 いつの間にか胸が熱くなり、自然と頬に涙がこぼれた。アリアは何よりこの事が嬉しかった。


---


 船の通称号はさておき、大型運搬飛翔艇は速いもので一週間以上はかかる道のりを一日と掛からず、宮城へ着いたのは翌朝だった。

 この無駄に大きい木で作られた翼が大気に乗り【木】の御業使いたちの負担を軽くするのだという。確かにと大気が支えるのを感じ取ったアリアは開発にお母様も関わっているのだろうと予想する。



「お姉様! (わたくし)心配致しましたのよ」


 宮城の広間に着くとテリシアは目を真っ赤にして駆け寄ってくる。先に遠隔気力通話とやらで無事を連絡していたはずなのだが。


「よく無事で戻りました。疲れたでしょう今は休みなさい」


 アリアのもとに母タリスも歩いてくる。挨拶しようと口を開きかけたアリアであったが。


「お母……様……」

「お姉様? どうかしまして?」


『体が震える? どうして、何が起きてるの? ああ、そう、理解しましたわ……お母様ですのね。全く敵わないのは理解していましたわ。ですがこれほど隔絶しているとは……。』


 タリスの大気はアリアの周囲にある大気に優しく浸透する。昔なら浸透している事にすら気付かなかったであろう。


 タリスは様子のおかしいアリアを見つめ、思い至ると微笑みながら


「子は見ない内にあっという間に育つものなのですね。貴方も私が見える所まで来たのです誇りなさい」


---


 その(のち)、アリアはしばしの休息と妹テリシアの相手をしてやり、急ぎ帝国首都リーシャンハイスへと旅だった。

 魔窟の穴は仮の迂回路が整備されており、今後調査団が組織されるだろうとの話であった。その件については別途帝国側から魔窟の内状報告を依頼される様子ではる。エミリアの話では規模と危険度からしてラギストアとルトアニア合同で討伐隊が組織されるのではと推測している。

 ああ、光幻たちだが魔窟の穴手前で感覚が繋がり回収となった。剣はボロボロで黄色い硝子(ガラス)玉を幾つももっていた。アリアは何故かエミリアに説教をされたらしい。


『え、消し方? よくわかりませんわ。空間収納に入ってもらえばよくて』


 とのことである。


 到着して()ぐもたらされた報告は、自宅待機だったはずのリーシャ・グラダード男爵令嬢が行方をくらました事だった。

 何やら他にもラギストア帝国内では事件が起こっているらしき情勢があるのだが、国を出ているタリスの帝国派閥では得ることができない秘匿物件での問題らしく諜報は得られなかった。


 バグルス領の叛徒(はんと)狼煙(のろし)が揚がるまで。




 そうそうアリアが目覚めたときの御業の欠片だが【時】の御業とわかった。


 前回も後書きに書かせて頂きましたが、全体の書式・用語統一・修正のため次回の投稿分から休載とさせて頂きます。


 次回 「アリアは知らない」 第二部もう一つの時間と真実 四章 01タイトル未定


 男爵令嬢のリーシャをピックアップしたストーリーを予定しております。




---

修正記録 2017-02-24 1:02



アリアの思考部分を『』で括りました


幾つかの改行追加


「。んっ、手に何か持っていますわね。

 黄色い硝子(ガラス)玉……後で調べてみますか」追加


「アリアは何も考えずに【空間収納】に放り込んだ。寝起きである。」追加


小高い崖になっていた魔窟を出た → 小高い崖になっていた魔窟の出口穴から出た


近くには数台の馬車 → 穴の近くには数台の馬車


「 魔窟の穴は仮の迂回路が整備されており、今後調査団が組織されるだろうとの話であった。その件については別途帝国側から魔窟の内状報告を依頼される様子ではる。エミリアの話では規模と危険度からしてラギストアとルトアニア合同で討伐隊が組織されるのではと推測している。

 ああ、光幻たちだが魔窟の穴手前で感覚が繋がり回収となった。剣はボロボロで黄色い硝子(ガラス)玉を幾つももっていた。アリアは何故かエミリアに説教をされたらしい。


『え、消し方? よくわかりませんわ。空間収納に入ってもらえばよくて』


 とのことである。」追加


「そうそうアリアが目覚めたときの御業の欠片だが【時】の御業とわかった。」追加

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ