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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
188/345

169聴音

 ()れは短い翼を誇りつつ徐々に宙へと舞い上がる。


「陛下、着水したらマリオンたちを待ちますからね。3人を態態(わざわざ)(そろ)えた割に昔の癖なのか遠ざけようと()される」


 リーファ様は少し(ばか)辟易(へきえき)とした面持ちを醸し出しつつ、苦言を呈する。


「あらー、本当(ほんと)ねー。一寸(ちょっと)お母様の若い騎士たちを助けた積もりでしたが、無意識に癖が出て仕舞(しま)った事は否定できませんねー」


「それから、流石(さすが)に推進機関を使った稼働確認は地底湖に出てからと致します。本当は()(よう)()っ付け本番で、陛下に御搭乗して(いただ)くこと事態とんでもないと、枢機院(すうきいん)から止められ兼ねないのですから。メルペイク、此処(ここ)で止めて、うん、ではゆっくり降ろして()れる?」


「チュン」


「ふむ、ならリーファはどうして私が乗る事を許可したのかなー」


()の推進機関で(なに)か起こるとしたら、想定外の出力で急発進や速度が出過ぎるぐらいで御座(ござ)いましょう。それなら、全方位に十分余裕の取れる地底湖(まで)出て、稼働確認すれば全く問題御座いません。着水を確認。……よし、メルペイク、潜泳機の制御を解いて()れ」


()る程ー」


「本当に危険なものなら、(そもそも)()の子たちに()らせは致しません。()して陛下は()れに乗せて()らねば、もっと危険な事を為出(しで)かし兼ねませんから」


「チチチ」


「最後のは心外だなー。(たま)にしか羽目を外さないよー」


 そんな、たわいも無い話を(しばら)くのらりくらりとして()たら、ベイミィがマリオン先生たちが戻られたみたですと、丼鉢(どんぶりばち)に手を添え(なが)ら伝えて()る。

 それから少し間を置いて、水路の閘門(こうもん)がずずずと上がって()く。


「ああ、確かにマリオンたちが帰って(まい)りました。(しか)(すご)いな、外の水音(まで)()き取るのか……」


「はい、沢山の音感……集音装置を配置した結果、音を()き取る性能が大幅に向上した模様で御座(ござ)います」


--


 マリオンたち3人が戻って()ると右手にはアリア殿下と()近衛(このえ)騎士たち、そして対面する(よう)にハンナ様の部隊が()り、共に顔だけを開いた(ばか)りの閘門(こうもん)に向けて()た。

 (いや)、植木鉢を抱えるハンナ様の後ろに()る簡易寝具で1人すうすうと寝息を立てて()るが、誤差の範囲だろう。

 作業場を見渡すと水路に潜泳機が浮かんで()るだけで、タリス皇帝陛下の御姿を探すが近衛騎士の影一つ見当たらない。

 勿論(もちろん)、状況からも察する事はできるが、ハンナ様の目線から繰り出す合図とイゼベラ様が直接【念話】で知らせて()れるのだ。


 マリオンは目線でハンナ様にお礼をしつつ【念話】に意識を傾ける。


『マリオン様、タリス皇帝陛下は先に潜泳機の中を、親閲(しんえつ)()されるそうで御座(ござ)います』


『分かりました。助かります。ところでアリア殿下とハンナ様は、潜泳機の聴音用耳当てを付けて()られる(よう)に見受けられるのですが?』


 マリオンは水路の(みち)を塞いでた関門岩(こうもんいわ)を横へと移動して()く。


『ええ、先程、潜泳機の作業が全て終わった折に、リーシャ様が()()ずと参られて、潜泳機に以前取り付けて()たものと、予備の部品を組み合わせて作ったものの2つをお持ち頂いたのです』


「ズズン」

『何か考えが()っての事だね』


『ええ、ラクス様の話しに()ると(なん)でも炭素板を使った集音方法の着想も、以前に助言して(いただ)いたそうですわ。今回の聴音部品を持って()たのは、()の大きな花飾り付きの蓄音魔器を毎回運ぶのも大変そうだから、()れも使えれば便利に()るかと存じてお持ち致したと(おっしゃ)って()りました』


「潜泳機に陛下がいらせられるとの事ですから後部扉から入りますね」

「ええ」

「ん」


()る程、役に立ちそうなのだね』


今迄(いままで)ですと、蓄音魔器を使う以外ではラクス様の御業(みわざ)無理遣(むりや)()ける状態にして()りましたものが、()の聴音用耳当てと自分に親和性の()るものへ気力の線を(つな)いで()れば多くのものたちが遠方聴音の(わざ)(こな)す事ができるので御座(ござ)います』


飛翔(ひしょう)板は壁に立て掛けて()こう」

「ええ」

「ん」


『ではアリア殿下は粒系因子を使い、ハンナ様は植木鉢使って聴音実験を(おこな)って()(ところ)なのだね』


『はい、親和素材に()っては向き不向きが()(よう)ですが、()(かく)()れで警備や戦術の様式が大きく変わるのは間違い()りません。(また)、リーシャ様は偉業を成し遂げましたね』


「ガチャ」

此処(ここ)だ先に行って()れ」

『ああ、()の子を育てる事に携われて誇らしいよ』


『ベイミィ様に色々な意味を込めて睨み付けられ、たじたじに()られて()られましたが、陛下にも殿下にも好評を得て()りますよ』


『ふふ、知らせて()れて有難(ありがと)う』

「ガチャ」


--


 暗い暗い闇の中、()のものは目を覚ます。

 (なに)も見えない(なに)()こえない。

 (いな)(かす)かにちゃぷちゃぷと水音が()こえる。

 此処(ここ)は地底湖の何処(どこ)かかも知れない。


御業(みわざ)を使うべきなのかな……うっ」


 【残留思念】の御業(みわざ)を使おうか如何(どう)逡巡(しゅんじゅん)して()ると、突然眩しい光が一面を照らしたのだ。


「あっ! リルミール様、目が覚めたのですね! ぬおっ!」


「てぃろっとおぉぉぉざみじがっだよぉぉ」


 リルミールは瞬時にティロットの所まで駆け寄って抱き付いたのである。


「わわ! 今、作業着脱いでるんだから騎士服に鼻水擦り付けるの止ーめーてー!」



---

修正記録 2017-08-17 07:32


幾つかの句読点を追加


為出(しで)かしませんから → 為出(しで)かし兼ねませんから


(しばら)く」追加


「ベイミィがマリオン先生たちが戻られたみたですと、丼鉢(どんぶりばち)に手を添え(なが)ら伝えて()る。

 それから少し間を置いて、」追加


向上た模様 → 向上した模様


共に顔だけ → 共に顔だけを


知らせて()れる。 → 知らせて()れるのだ。


『ベイミィ様に色々な意味を込めて睨み付けられ、たじたじに()られて()られましたが、陛下にも殿下にも好評を得て()りますよ』追加


『ふふ、知らせて()れて有難(ありがと)う』追加

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