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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
182/345

163危険な人たち

 其処(そこ)には記念碑か近代芸術が(ごと)く立ち尽くす。

 巨大田螺(たにし)の氷塊は3本(ほど)の岩釘が飛び出した状態で、奇抜な芸術家辺りなら褒め叩いたに違いない。ああ、褒め(たた)えるだった。


()れもバルパルの食料備蓄にするのでしょうか?」


「ぴゃぁっ」


「ううむ、田螺(たにし)は食料にも()るらしいが、必ず()く火を通さないと中に寄生虫が居ると()いた事が()る」


「ん、こんがり焼いて(しん)ぜようぞ」


()だ少し(ばか)り微量な抵抗が()って直接の凍結に至ってませんですの」


()(かく)()の凍結した田螺(たにし)(もど)きの魔落を此処(ここ)へ置いて()く訳にも行かないから、……ライリッテ、悪いが()の氷の塊ごと運んで()れないか? ああ、()()の巨大田螺(たにし)を狙って他の魔落が襲って()ても、()れを守る必要は無いからね」


「はあ、()れは構わないのですが、()の岩槍と()いますか、いえ、岩杭でしょうか。でか田螺(たにし)が密着する岩から、如何(どう)()って岩杭を形成し射出できたのですか?」


 縦令(たとえ)、岩が田螺(たにし)に取って適正外の物質で()っても、直接密着して()れば生きた気が浸透するのだから、其処(そこ)へ異なる気を侵入させ改変を加える事など不可能なのである。


「ん、気になるぞ」


「ああ、チェロルの覚書を参考にしたのだけれどね。私たちが槍や剣を主要武器にして戦うのは、矢張(やは)り気の防壁を越える(ため)だよね。剣技や武技の御業(みわざ)を獲得する事で、剣に含まれる適性が無いあらゆる金属に気を通し強化を(もっ)て対戦相手の強化された適性素材の防護服を打ち破る(ため)だから……」


()の辺りは誰でも知って()ますのよ。本題は()だですの?」


「ん、()れが総意であろうぞ」


「前置きぐらい(しゃべ)らせて欲しいのだが……。まあ、要するに遠距離攻撃は気力の加わった防壁が()る限り与えるられる損傷は表層のみで、中々有効打とは成り得(にく)いのだけれど、()れを可能とした一つの方法が一寸(ちょっと)前に話て()た羽根の付いた鉄の矢だよね」


「ん、私は()いて()らぬぞ」


(ああ)(あれ)は長い飛び道具の一種なんだけれど、長柄(ながえ)(もっ)て気力防壁の外から気力を通し、強化を維持する目的が一つ。途中に付けられた3枚の羽根に水流を押し当てて、気力防壁外から持続攻撃を加える目的が一つ。羽根の形状から回転を加える事で、気力を(はじ)き拡散させる目的が一つと3つの目的が()()げられるように(つく)られて()るのだよ。勿論(もちろん)、鉄に親和性を持つチェロルやメアリーさんが使ってこそだけどね」


「あら、()の回転の話は()いて()りませんの」


(いや)風車(ふうしゃ)の話とかは一応したと思うのだけれど……。まあ、それで田螺(たにし)が持つ気の防壁が影響するのは薄い岩1枚分、逆に()えば()れを残して()けば事足りるし、()の薄岩の壁が()れば其処(そこ)を打ち破る(まで)は、幾ら造形をして()ようと気の流入も無い。後は造形の輪郭部だけ切り取り岩杭? の通り道に()る岩を瞬間的に岩杭の後ろに移動してやれば、爆発的な威力を伴って外へ発射されると()う訳だよ」


「はっ? 一寸(ちょっと)待ってよ! 聞き捨て()らない事が幾つか()るの! 先ず3枚の羽根は関係無いですのよね」


「えっ、()ずそれなのか? リルトルに()かれたから説明しただけだよ」


「ん、(かたじけ)ない」

「ぴぃや」


「ま、まあ、(よろ)しいですのよ。後、瞬間的な移動とか爆発って要は【瞬間転送】の御業(みわざ)を使って()せたと()う意味ですの?」


「ええ、()う、()(わか)ったよね。まあ、チェロルから試して欲しいとリーシャに頼んで()るのを見付けてね、私が危ないから駄目だと禁止して折を見て私の方で試して()くから、と(なん)とか言い聞かせて()たものなのだよ。()れはルトアニアの学者が提示した学説の応用なのだけど、全ての非生物の物質を顕現する御業(みわざ)()れに特化した瞬間転送を行って()るに過ぎないらしいよ」


「え……、()れって少しの量でも大爆発を起こし兼ねないものではありませんか!」


()う、だから禁止にして(なに)か方法は無いかと、色々考えて()たのだけれどね。それで思い付いたのが少しずつ手前から転送して()く心象で、後は御業(みわざ)が補完して()れるのではないかと期待して試したら、意外と上手くいったよ」


「流石は私たちの悪評の一端を担うマリオンですの。と()うか私たちを巻き込んで危険な事を試さないで欲しいですのよ! 責任を持って次は私が試すので付き合って(いただ)きますのよ! あっ、それから気力防壁の話は、如何(どう)()って(つな)げる積もりなのですの? ()れだと、そんなもの根底から消し去る威力ですのよ」


(いや)田螺(たにし)が岩に接触して()た部分は簡単に切り裂ける程柔らかかったから、(そもそも)()の裏側部分に防護服云云(うんぬん)は関係無いから見落とし()ちだけれど、()し気力の通った防護服に岩杭が当たったら、()の時点で砕けて仕舞(しま)うのではないかな?」


「あっ」

「ん」

「ぴゃ」


 マリオンは田螺(たにし)の前衛芸術もとい氷結した姿を指差すのだ。


「多くの魔落は御業(みわざ)と関係無く、()の生来の特徴に強化が行われて()る事が多く確認されて()る。であれば()の貝殻に強化が()ったのではないかな。(なに)せバルパルの攻撃が(ほとん)ど効いて()かったのだからね。そして岩杭は()の貝殻を突き破って(なお)砕けて()ないのだよね。(これ)は離れる寸前(まで)気力が通って()て、一瞬だけの間で()れば気力強化が働いてる状態と(ほぼ)同じと()える証明に()るのだよ」


 マリオンとライリッテはにやりと微笑み合う。矢張(やは)り3女傑である。

次回分は8月11日まで、こちらの都合で執筆作業をお休みします。

宜しくお願い致します。



---

修正記録 2017-08-08 09:25


()れは → 其処(そこ)には


メイン → 主要武器


()れ残して → ()れを残して


(あれ)が → 田螺(たにし)


其処(そこ)に → ()の裏側部分に


関係無い → 関係無いから見落とし()ちだ


気力が強化 → 気力強化


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