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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
181/345

162裏側が

 リルトルの照らす懐中気灯が、前方の最奥に(うっす)らと見える壁を捕らえた。


「ん、行き止まりであるぞ」


「ぴぃやぁぁ」


(いや)、別の壁柱地帯だよ。今、確認して()る壁柱の3、4倍ぐらいは()る大きさだね」


(そもそも)、今、確認して()る場所の規模すら分かって()ませんのよ」


「ああ、街の大きさで()えば3/4区画ぐらいかな? 派出所の土地だと12個分だろうか」


「微妙に分かり(づら)いですの」


「ん、右に抜けてるのか。待て、前衛をしてる私が地形図を持たずして(なん)とする」


「ええ、(やっ)と気付いて()れたか。だけど()れは前衛と()うより斥候(せっこう)の仕事だよ。先行して危険が無いか地形は如何(どう)かを調べて、後方を安全に導くのが(おも)な仕事なんだよね。今回の場合は特に地底湖の絵図を修正し(もっ)て、周囲の警戒も当たらなくては行けないから結構大変なんだけど、リルトルにできるかな?」


「ん、任せるべし。ライリッテにも画伯と褒められた事すら()るのだぞ」


 マリオンがライリッテの方へ目を向けると、微妙な面持ちで首を振る。一つ息を吐き逡巡(しゅんじゅん)しつつも口を開く。


(わか)った。(しっか)りと修正を描き加え(なが)ら、周りにも十分注意を払って()れよ」


「ん、泥舟に乗った積りで安心するが良いぞ。ふむ、此処(ここ)は壁が出っ張ってるだけで、()(まま)進めば(また)右折に()るのか」


(いや)、絵図は目安で()って実際と異なる場合も()るから、()ず疑って()るくらいが丁度(ちょうど)良いのだが」


「ん、右折れ……」


(いや)、先に()だ壁が見えるから絵図に無い(くぼ)みだな」


「んむ、確かに先は行き止まりか、()しからん地形図だぞ。ん、珍しく壁が垂直では無いぞ」


 マリオンたち一行は(くぼ)みを確認する(ため)に、一度、()の奥を覗き込み僅かだが(くぼ)みに入り込んで()た。

 故に次に向かう壁沿いが60度以上の鋭利な壁に()って()たら、()の裏側は見通せず状況も(わか)(にく)い。

 だからこそリルトルは【水】の粒系因子を死角へ飛ばし、(あらかじ)め水上の状態を確認して()たのだが、()ぐに()の違和感に気付けなかった。

 ()れがライリッテであれば、【水】の粒系因子が縦令(たとえ)岩に()つかり粒自体が(はじ)けたとしても、【岩】の適性が()るのだから気力線は(はじ)かれずに(つな)がる(はず)であり、岩か如何(どう)かも認識できたのだ。


 ライリッテが気付けたのは、リルトルが壁裏の見える位置に差し掛かった時である。


「リルトル、()の壁裏に(なに)か居る様ですの! 敵意っ離れて!」


 裏に居る(なに)ものかがが、探索に使った属性と同じ【水】を持つとしたら、気力防壁が余計に働いて輪郭すら捕らえられなく()って仕舞(しま)うのである。


 バルパルは潜って(まわ)り込み勢い付けて突っ込んで()く。


「ドッガァァァン」


 音は良いが当たった場所は殻である。()れも貝の一種なのだろう(とぐろ)を巻いた()の背中に当たっても、びくともしやしない。

 続けてリルトルが水の球を水面から(はじ)き飛ばして次々と当てて()く。本来なら水弾を()つけるだけでも、多少は痛手を与えられる(はず)だった。

 だが水弾は1m以上手前で水飛沫(みずしぶき)()って消えて()くだけだから、困ったものである。

 バルパルは接近して噛み付こうと考えた様だが、水に包まれて持ち上げられつつ()る。


「びゃぁ」


「リルトル、【水】持ちだ! 離れて火の準備」

「ぴゃっ」


 マリオンは飛翔(ひしょう)板で、バルパルの気力防壁ごと包み込む水を弾き飛ばして引っこ抜く。()(まま)、旋回して方向転換する(つい)でに飛翔(ひしょう)板の先を(かす)らせて、岩にへばりつく足だかひれだかよく(わか)らない部分を切り裂くのだ。


「ぎょばぁっ」


 岩と殻の僅かな隙間だが流石は本物の前衛と()(ところ)か、陽動には十分、見事なものである。

 突っ込むのは簡単だが逃げるのは難しいのだ。

 田螺(たにし)は一度、傷付けられた部分を、僅かに岩場から離すが再びへばりつく。

 ()れを気にする事無く()の間に、バルパルを左手に抱えた(まま)少し距離を取って口遊(くちずさ)む。


「[砂糖よ()()れ]」

「[火よ()()れ]」


 田螺(たにし)の周りに若干きらきらと光を反射する砂糖が舞った瞬間、続けざまにリルトルが火を点ける。


「ドッォォォォガァァァァン」

「びゃぁぁぁ」


 小規模(なが)らも十分大爆発と()えよう。

 だが、火と黒い煙が霧散した()の姿は、先程の田螺(たにし)(まま)である。


「【熱耐性】か……」

「ん」


 何時(いつ)の間にか「ぽちゃん」と音を立てバルパルが落とされて()る。


「ぴゃぁぁ」


「では私の出番ですのね。[氷よ()()れ]」


 田螺(たにし)が防御に使おうとして()たのか、水球を3つ程浮かべる直前だったのだが、2つを巻き込んで水面と共に凍り付いた。

 続けて目で見えるくらいの水粒が次々と浮かび上がり一斉に田螺(たにし)へと向かい飛ぶのだ。


「[氷よ()()れ]」


 そして、水粒は(あられ)(ひょう)()って、次々と田螺(たにし)へ吹き(すさ)ぶのである。

 マリオンは()の間に壁へ手を付けて、(なに)やら心象を固めて()る様子だが……。


「グシャッ」


 大きな岩の釘が、田螺(たにし)のへばりつく壁から飛び出して来たのだ。

 続けて、2本目、3本目と飛び出して(つい)には田螺(たにし)がごろりと転がり落ちたのである。

 殻蓋(からぶた)を閉じようにも岩釘が残って()て閉じ切れない。

 ()うして悪足掻(わるあが)きをして()る間に、氷が見る見るうちに田螺(たにし)の周りを覆って()何時(いつ)しか氷塊と成り果てたのだ。


(なん)だか美味しい(ところ)をマリオンに持って()かれた気がしますの」

「ん」

「ぴゃあ」


「気の所為(せい)じゃないかな……」



---

修正記録 2017-08-07 15:28


行き止まりだぞ → 行き止まりであるぞ


3から4倍 → 3、4倍


()の先が → 次に向かう壁沿いが


岩か如何(どう)かが認識 → 岩か如何(どう)かも認識


句読点を追加


時であった。 → 時である。


ルビを追加


1m手前以上で → 1m以上手前で


消えて()だから → 消えて()くだけだから


「岩と殻の僅かな隙間だが流石は本物の前衛と()(ところ)か、陽動には十分、見事なものである。」追加


「突っ込むのは簡単だが逃げるのは難しいのだ。」追加


()の間に」追加


一度、()の部分を → 田螺(たにし)は一度、傷付けられた部分を、


殻 → 殻蓋(からぶた)


釘 → 岩釘

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