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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
179/345

160うっかり

 荒涼たる()(いただき)に、彼奴(あやつ)恍惚(こうこつ)の面持ちでへばりつく。


 ()れは巨大な氷塊の一角であり、吃水(きっすい)下の中心部では徐々に凍てつく巨大(えび)が居る。

 縦令(たとえ)、気の防壁が()ろうとも適性の無い物質に囲まれて、間接的に冷やされれば()す術も無く眠りへと(いざな)われる。


「バルパルはあんなに氷を舐めてて大丈夫なんですか?」

「ん、お腹壊すぞ」


「話に()ると普段から一旦冷凍したものを食べてるらしいよ。()の方が日持ちするから(なに)かと都合が()いみたいだな。一応、メイリア神官長殿に(いただ)きますを許可されないと食べられないみたいだから、舐めて我慢して……る訳でも無さそうだな」


「ぴゃぴゃ」


 実に嬉しそうに舐め入るバルパルである。


()れは()れとして、地上でも2人の連携は他を圧倒したが、親和属性の満ちる地底湖では規模も速度も段違いで全く大したものだな」


「ん、水を顕現しないで済むのは(とて)も楽だぞ。(ただ)、少し羽目を外して力を使い過ぎたのだ。()れと私が()ると()わなかったら、マリオンは天井から岩の剣を伸ばして瞬殺し兼ねない。危うく私たちの見せ場が潰される(ところ)だったと思うぞ」


(いや)、頑丈そうだが流石に地底湖を支える天井を変形させるのは危険でないかな……。後、魔気が濃いだけに気の回復も結構早いから、気力の使い過ぎは()れ程影響はしないだろ」


「まあ、少し使い過ぎたのは確かね。(ただ)、地上の積もりで行動して仕舞(しま)った(ところ)()って、リルトルが水流を操作して沈む(はず)(えび)(とど)めて(もら)えなければ、効果は半減しましたの。勿論(もちろん)、リルトルの操作解除と前後した関係で多少、次の攻撃が遅れましたが誤差の範囲ですのよ」


「ん、(ほん)の少しライリッテは遅れただけ。私が早計だったと思うぞ」


「いえ、余裕ができて助かりましたの。後、速度に()いては永らくリルトルと組んで()るのですから、お互いの気が干渉しないよう瞬時に気力線の通り道を()み分けするくらいは御手の物ですの」


「気の展開速度が明らかに短縮されて()たのだけれど、()れ程変わるものなのかな?」


「同じ属性に適性が()るもの同士は、利点も()れば欠点も()りますのよ。私がマリオンの乗る飛翔(ひしょう)板に乗り移ったら、即座に引っ繰り返り兼ねないのと同じ事ですのよ」


()れは試さないで欲しいね……」


「それから、天井の岩を変形させるぐらいなら大丈夫だと思いますが。と()いますか()の作業場を散々穿(ほじく)り返して()いて、()くそんな事が言えますのね」


否否(いやいや)彼処(あそこ)を掘った岩は全て入り口周りに盛って柱の補強としたから全体的には()れ程影響して()ないと思うけど……」


「あら、そうですの? 少し勘繰って仕舞(しま)った様ですのね。失礼しましたの」


(いや)、構わない。バルパル、そろそろ出発するよ」


「びゃあ」


()れは一先(ひとま)此処(ここ)に置いといて()の壁を一周(まわ)ったら、回収して聖堂地下通路の所(まで)一緒に届けに()くから」


 納得したのか後ろ毛を引かれつつもバルパルは渋渋、氷塊から降りて()る。


()くバルパルと会話なんてできますね」

「ん、お主、(つい)に獣と成り果てたか」


「――リルトル、何気に(ひど)くないか――まあ、普段からリーシャやチェロルがバルパルと会話してるし、()れを見てて大まかな行動原理と()うか習性を把握してるから、会話と()うより予測だね」


「ん、()れは()れとして前衛は任せるべし」

「ぴゃあ」


 リルトルは飛翔(ひしょう)板を滑走させ「シャー」っと水を掻き分けて進み()く。そして()の後ろを隠れ蓑にバルパルがくっ付いて進む恰好(かっこう)だ。


「ああ、()れと昨日だけど貝の魔落が現れた時は、先頭が通り過ぎアリア殿下が通り掛かった折に突然に水底から敵意を放ち口? を伸ばして()たから、ライリッテは水底の土や岩も注意を払って欲しい」


「底(まで)なら()()り探知範囲ですけれど、()の状態で親和性の薄い土(まで)(ほとん)ど確認できませんのよ。と()うか失態でしたのね。主に【水】持ちのリーファ様とかがですけれど」


「ああ、(しか)も水の中だから攻撃の決め手が少ない……あ、」


「あら、(なに)か見付けましたのですか?」


(いや)、話をして()たら思い出した事が()って、貝の魔落自体はティロットが酒を水中に顕現して、()れへ真面(まとも)に突っ込んで飲み込んだらしく速攻で倒せたのは良かったのだが、他のものが水中から迫る貝に、(ただ)、近付くのを待つだけと()う形を強いられたから一寸(ちょっと)ね」


「水中の奥底に居る相手を攻撃する方法として飛礫(つぶて)では、牽制に()っても有効な攻撃とは()り難いですからね。エミリアの【氷】も貝だと分かって()れば、凍結で固めて()けばと()るかも知れませんが、(なに)も分からない状態では防御にしか使えませんですの」


()の後アリア殿下の近衛(このえ)たちがチェロルを取り囲んで、新型の武器を強請(ねだ)るものだから、がくがく振るえ怯えて()た光景を思い出してね」


「陛下にからかわれて気を失って仕舞(しま)われた方ですのね。まあ、()の猛者たちに囲まれては(そら)恐ろしい事ですの」


 自分の事を棚に上げてと()うものだろうか。


「……()(かく)()のチェロルの新型武器と()うものが、鉄でできて()る矢や槍でね。後ろに風車(ふうしゃ)風車(かざぐるま)の様に水で押されたら回るよう羽根が付いて()るので、目標に突き刺さった後も気力の防壁外から、水流に()って回転し(なが)ら押し込まれて()くと()う感じに()ってるのだよね」


「確かにそれなら失態を為出(しで)かした後だけに取り囲まれますの。……って()うか! 私たちも()の武器欲しかったのですよ!」


「……ええ、だから失敗したなあって気が付いて、あっ、後でチェロルを取り囲まないで()ってね」


「……」



---

修正記録 2017-08-05 09:19


「実に嬉しそうに舐め入るバルパルである。」


つつも氷塊から → つつもバルパルは渋渋、氷塊から


「 リルトルは飛翔(ひしょう)板を滑走させ「シャー」っと水を掻き分けて進み()く。そして()の後ろを隠れ蓑にバルパルがくっ付いて進む恰好(かっこう)だ。」追加


以前に → 昨日だけど


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