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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
178/345

159調査隊

 ()のものは薄花色と灰色が織り()す毛色で上から流れる様に(いろど)られ、(ほほ)から喉元へ掛けての白さは際立つぐらいに美しい。

 つぶら()で大きな瞳や(やや)小さめの耳が(なん)とも愛らしく、誰しも()のものが普通に歩けば振り返るだろう。


「ぴゃあぁぁ」


 水も滴る()(かわうそ)である。


「バルパル強請(ねだ)っても駄目だよ。今日は狩りでは無くて作業場周辺の調査だからね」


「ん、()の割に飛翔(ひしょう)板を水面へ降ろすのは如何(いかが)かと思うぞ」


 リルトルは3人の中では違和感が()る程若い。【長寿】の先天御業(みわざ)を持つからであるが、()の事に()いて他の2人が触れる事は無い。リルトル自身が嫌がるからだ。


「ええ、確か上でリーファ様に説明頂いた話では、水中では()く音が通るらしく水面へ飛翔(ひしょう)板を浮かべて行動すると、魔落が喜び勇んで飛び付いて()るとか」


 ライリッテは伯爵位と子爵である他の2人と比べて、言葉遣いだけは僅かに気品が()るかも知れない。


「タリス皇帝陛下が主は殺すなと(のたま)(たも)うたのだから、(つい)でに周辺を掃除でもして()ても構わないと捉えたのだが、如何(どう)かな?」


 ()う言われると皆は良い顔をして(うなず)くのだ。(いや)何故(なぜ)バルパル(まで)……(しか)も良い顔と()うより(やや)若気(にやけ)た悪い顔だし。

 そんな()り取りをしつつマリオンはリーファ様から預かった地底湖の平面図を取り出した。


()れは(なん)ですの……。えっ、一寸(ちょっと)待って(くだ)さいまし。()れに描かれて()る情報は間違い()りませんか? 此程(これほど)巨大な地底湖が存在したら何時(いつ)潰れてもおかしく無いでは()りませんか」


 興味本位にマリオンの後ろから覗き込んで()たライリッテは、やけに(おのの)いて(まく)し立てるのだ。


「ええ、……まあ、()れは写しだけどメイリア神官長が、其処(そこ)のバルパルを使って作り上げたらしくてね」


「ぴゃっ」


「けれど神官長が実際に見て確認したのは、聖堂地下通路の周辺だけなのだそうだよ。ふむ、バルパル、東の壁が()だ調査できて()ないから、其方(そっち)()こうか」


「ぴゃあ」

「ん、前衛は任せるべし」


 リルトルとバルパルが進んで前への配置を願い出た。


「ええ、お願い……」


 バルパルは()(かく)リルトルは()の話しに余り興味が無いのか、そそくさと前へ詰めるのだ。


「……で、()れ以外は随分とあやふやなものらしくて、(なに)しろバルパルの反応を(うかが)いつつ描き(しる)して()くのだから、()の機微の判断を神官長の(さじ)加減一つに(ゆだ)ねられて()る訳だよ」


「えーとっ、大雑把に()る嫌いが()ると?」


「ええ、()(ため)矢張(やは)り細かい部分で抜け落ちが()って、作業場の周辺だと此処(ここ)の色が塗られて()い部分、作業場の小さな一角より更に小さな柱が3つ点在してるでしょ。()れは新たに描き加えた部分なのだよ」


「では、本当は細かい柱と()る壁が幾つも存在して()ると?」


「一応、私たちは()う考えて()る。だから()の絵図を見た通りで考えれば、東の先は広く(なに)も無い空間が幾つも()ると感じる。だが、()れから調べるに連れて徐々に小さな壁の一角が見つかって()る可能性が高いと()う訳だな」


「そうでしたか。もう、驚かさないで(くだ)さいまし。では()れから()の未確認である壁柱とやらを、確認しに行く(ところ)ですのね」


(いや)、もう見えて()るが、()の壁……絵図では此処(ここ)だな。今は略図に近いから正しい形状を描き込み(なが)(まわ)る積もりだよ」


「……変な(ところ)で真面目ですのね」


「だからこそ(あれ)だけ()らかした3人が(いま)だに(つる)んで行動できるのではないか。リルトル、()の壁に沿って左へ(まわ)って()くからね」


「ん」「ぴぃやあ」


「ええ、確かに略図ですのね。丸く(えぐ)れた図で描かれてますが、実際は台形に(えぐ)れてる感じですの。(ただ)、言葉を交わさず()れだけ描けたのは驚愕ですけれども。敵意ですの」


「ぴちゃん」


「ん、バルパルが潜ったぞ」


「ドッボーーーォォン」


(ああ)()れは私たちの出番が無いかも知れないね。此方(こちら)が滑走する音を(おとり)に、バルパルが横から不意を突いて攻撃を加える手順が常套(じょうとう)手段らしく。【強頭】の御業(みわざ)()ず勢いを付けて頭突きを加え、(ひる)んだ(ところ)で強靭な顎を使って()み付き息の根を止める(まで)何時(いつ)もの流れ……(えび)!?」


「ジョバッ」


 (えび)は大きく跳ねて宙に舞う。


「足を残して逃げましたの」


「ん、任せて。えいっ」


 (えび)が落下地点へ着水する寸前に()の場の水が消え()の上空に移動したのだ。リルトルの親和属性である【水】と【瞬間転送】の合せ技だろうか……規模も大きい……。


「[氷よ()()れ]」


 そして、追撃と(ばか)りにライリッテは上空の水が落ちる前に凍らせる。()れも親和属性の【水】を持つからこそできる業だろう。

 勿論(もちろん)、何度も繰り返された連携である(ため)、上空へ転移した水にリルトルの気力は(つな)がって()ない。


()れ反則では無いかな……」


 凍る瞬間に幾つかの塊と()って分かれて()た様だが、それでも巨大な氷塊である。


「ゴゴドゴゴゴドゴドゴ」

「びぃゃっ」


 少し離れて()るとは()(たま)ったものでは無い。慌てて逃げ出すのはバルパルだ。


「次は下から[氷よ()()れ]」


 巨大な氷塊に上下から挟まれて身動きが取れなく()った巨大(えび)の魔落はもう虫の息である。



---

修正記録 2017-08-04 07:14


毛色が上から → 毛色で上から


(ほほ)や喉元の白さは → (ほほ)から喉元へ掛けての白さは


「 ライリッテは伯爵位と子爵である他の2人と比べて、言葉遣いだけは僅かに気品が()るかも知れない。」追加


書 → 描


()の色の塗られて → 此処(ここ)の色が塗られて


一角より小さな → 一角より更に小さな


形状が正しいか書込み → 今は略図に近いから正しい形状を描き込み


中 → 宙


【水】持つから → 【水】を持つから


「 勿論(もちろん)、何度も繰り返された連携である(ため)、上空へ転移した水にリルトルの気力は(つな)がって()ないのだ。」追加


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