表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
177/345

158じあい

 友と認めたものが居る。

 (あれ)は空回り(ばか)りして、見てる此方(こっち)がはらはらする。

 ハンナ様は()った。

 皇帝陛下は()えて(みことのり)(もっ)て未熟な(あれ)たちの、(かしこ)まり萎縮する姿を見せたのだと。

 ()れは、一杯一杯(いっぱいいっぱい)な我らに庇護欲を誘い、(しっか)りしなければ駄目だと自覚を持たせる(ため)だったと。

 全ては我らを(おもんばか)って事なのだと。

 (あれ)が子鹿の(ごと)くぷるぷるする姿を見て奮い立てたのだ。

 片やチェロルは随分と肝が据わったお方であろう。

 ベイミィを枕にぐたりと寝入ってたではないか。

 感心はせぬが中々の器である。

 ()(かく)、ハンナ様に期待され朝から臨んだ()の仕事、延びに延びたが()れからが本番なのだ。

 期待を背負い友の(ため)に役立てようぞといざ参らん。


 そんな感じのリルミールは慈愛の微笑(ほほえ)みを(もっ)て、リーシャへと近付くのである。


「リーシャ様、()れは(なに)をして()るのですか?」


 丁度(ちょうど)ベイミィと共に、集音だか音感だか(わから)らない部品を並べて()(ところ)である。

 ベイミィはちらりとリルミールを見てうへえとした顔をし(なが)ら、水路の方を見遣(みや)ると一瞬驚いた顔を見せるのだ。

 だが、()ぐに持ち(なお)して若干きつめの顔に()るのだから、(なに)がしたいのやら。百面相だろうか。

 扨措(さてお)き、人に()かれるのが好きなのか、リーシャは意外と乗り乗りで説明し始める。


「ああ、はい、()の部材、ええっと打ち合わせでは音感器具と()ってましたが、部材目録には集音装置と書かれて()るものですね。今、()の集音装置を潜泳機の取り付け位置を仮定して並べて()るのですよ」


「ふむふむ、何故(なにゆえ)、並べて()るのですか?」


 此処(ここ)ぞと(ばか)りに追撃の手を緩めない。リルミールはできる子なのだ。


「うん、()れはね、幾つか理由があるんだよ。()()の集音装置は魔気道管を通して、蓄魔(ちくま)器と音を出す器具を(つな)げるのだけれど、打ち合わせの通り集音装置と発音器具の位置関係を同じにしないといけないよね」


 向こう岸ではラクス様が元気溌剌(はつらつ)と雄弁を振るって()る。

 おや、右手の黒い板に(まで)言及し始めたのか更に熱が入り、左横では察し(よろ)しくメアリーがせっせと蓄音魔器を運んで()る。()の花の様な大きな金属飾りが載ったものだ。

 何故(なぜ)かベイミィが距離を大幅に取っての作業に、変更した模様である。


「潜泳機の周りで()こえる音を、(あたか)も自分の周りで()こえてるのだと錯覚させる事で、認識と()うか判断をし(やす)くする(ため)ですね」


 勿論(もちろん)、半分以上が適当である。リルミールはできる子なのだ。


「うん、()の通りだよ。それで間違えず一目(ひとめ)(わか)る様に並べて()るのが一つ目。実際に仮で(つな)げて()て正しく動作するか、てれこに()って()いかを確認するのが二つ目。そして潜泳機への取り付けを始めたら(また)ばらばらに()るし、潜泳機の中は既に色々な機材へ(つな)がる魔気道管が()るのだから、取り付けの時や修理の時に()ぐに判断できるよう番号や色を付けて()たら(わか)(やす)いよね。(これ)が三つ目の理由だよ」


 リルミールは説明が長過ぎたのか若干顔が引き()って()たが、最後の内容だったと()うかぴんと来るものが()ったのか、目を輝かして言い放つのだ。


()の番号や色を付ける役を私に任せて(くだ)さい! あ……」


「ああ、うん、よく()る事だよ……。うん、私も何度か……」


 丁度(ちょうど)()の時、塗料(つぼ)を抱えたティロットが現れて、紙に位置、番号、色を書き留めつつ刷毛(はけ)で色を塗って()く。

 向こう岸でアリア殿下が僅かに反応したかに見えたが、気の所為(せい)だろう。

 (しっか)り打ち合わせを筆記して()たのだから、段取りも要領も分かって行動して()るのだ。

 リルミールの出る幕は無い。心做(こころな)しか悄気(しょげ)た面持ちで、先程の覇気は面影も無い。

 そんな感じのリルミールに自愛に満ちた風を送るものが居る。


「チュン」


 リルミールは一つ(うなず)いて左肩をぽんぽんと叩くのだ。


「――おーい! メルペイク、仮枠の部材を(つく)るから手伝ってよ!――」


「はいっ、唯今(ただいま)行きますよ。お任せあれ!」


 肩にメルペイクを乗せたリルミールが、颯爽(さっそう)と駆けて()くのである。


「――(ああ)益益(ますます)横柄(おうへい)()るから、()ういうのは控えて欲しいのだけれど……――」


 リーシャの声は届いて無いだろう。(むな)しく(ささ)やかに響くだけである。

 向こう岸では慈愛に満ちた微笑(ほほえ)みでアリア殿下が、うんうんと頷いて()る。此方(こちら)には届いた様である。



---

修正記録 2017-08-03 06:36


肝の据わ → 肝が据わった


句読点を追加


---

修正記録 2017-08-03 06:10


皇帝陛下の(みことのり)

皇帝陛下は()えて(みことのり)(もっ)て未熟な(あれ)たちの、


()えて見せたのは、 → 見せたのだと。


幾つかの改行を追加


一杯一杯(いっぱいいっぱい)此方(こちら)に庇護欲を誘い、自分たちが(しっかり)りしないと駄目

()れは、一杯一杯(いっぱいいっぱい)な我らに庇護欲を誘い、(しっか)りしなければ駄目


事であると。 → 事なのだと。


立ったのだ。 → 立てたのだ。


片やチェロルは肝が据わると()うか、 → 片やチェロルは随分と肝の据わお方であろう。


枕にしてぐたりと寝入ってた。 → 枕にぐたりと寝入ってたではないか。


本番なのだから。 → 本番なのだ。


「期待を背負い友の(ため)に役立てようぞといざ参らん。」追加


補助動詞を漢字に変更


句読点を追加


そして → 扨措(さてお)


「。うん、私も何度か……」追加


「肩にメルペイクを乗せたリルミールが、颯爽(さっそう)と駆けて()くのである。」追加

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ