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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
175/345

156石ころ

 ()のものは水面にちょろりと顔を出す。

 天井の階段からは次々と光の筋が降りて()て辺りをちらりちらりと照らし出す。

 少し()れを眺めて()()のものは、ぱしゃぱしゃと()れに向かって泳ぎ出す。

 (なに)かを期待しての行動だろうか。

 狩りへと(いざな)って欲しいのか、それとも遊んで欲しいのか。

 (ただ)()の場へと刻刻(こっこく)と近付きつつ()る様だ。


 ハンナ様は()の【強眼】を(もっ)て四方を見遣(みや)ると、ぴちゃぴちゃ近付くものを確認した。


「……異常なし、周囲を固めて警戒を維持」


「はっ!」×4


 そしてマリオン先生たちも警戒しつつ降りて()た様だ。


「リルトル、ライリッテ、水中の警戒をお願いします。40~50cmの動く物体が居れば(ただ)の魚である可能性が高いです。……西から近付く影は聖堂で飼われて()る従魔ですね。特に危険は無い(はず)です」


「ん、探知可能な範囲には5~8cmの物体のみです」

「ええ、此方(こちら)も、同じですね」


「リーファ様、安全を確認(いた)しました。バルパルが来て()りますが問題無いでしょう」


 リーファ様を先頭に周りを近衛(このえ)騎士で固めた、タリス皇帝陛下が降りて()る。

 そして、()の瞬間に周りの空気が変わるのだ。

 勿論(もちろん)、大気も変わって()るのだが、騎士たちの発する気迫や緊張感といったものとかタリス皇帝陛下の持つ(なん)とも言わし難い雰囲気とかの事である。


 ()の空気に驚いたのかハンナ様と睨み合って()たバルパルが(すだ)くのだ。


「びゃあ」


「先にも説明(いた)しました通り水面には接触()さらぬよう、()注意を()願い(いた)します。全員が(そろ)い次第、例の作業場へと向かう予定と()って()ります」


「あれは?」


「ぴぃやぁあ」


「メイリア神官長殿が飼われて()る従魔のバルパルで御座(ござ)います。昨日、十分に食料を提供(いた)しましたので、狩りとは考え(にく)いですし散歩でしょうか。捨て置いても(よろ)しいかと存じます」


「ぴゃぁ」


 ()の間にも次々と後続は降りて()()り、幾許(いくばく)か混み合いつつ()る。

 最後のリーシャたちが降りて()(ところ)で、リーファ様の指示が下りた。


「リーシャの小隊は作業所の入り口を……と()の前に、其処(そこ)のバルパルが(なに)か訴えて()る気がするので、リーシャかチェロルで()いて()()れないか? 全員着水して休憩とします」


 リーファ様は(いたずら)に気力を消費するよりは、縦令(たとえ)魔落の(たぐ)いが来たとしても、()れと対峙(たいじ)する方が増しだと判断したのだろう。

 (なに)よりバルパルが既にぱしゃぱしゃと水面を叩いて()るのだし、(なに)か来たらいの一番にバルパルが突っ込んで退治して()れるだろう。

 (いや)(そもそも)バルパルは普段だと(ほとん)ど水音をさせずに泳いで()(はず)なのだ。皆が何処(どこ)かしら違和感を持った答えが其処(そこ)()ると()う事か。


「はい、(ただ)ちに……バルパル、如何(いかが)(いた)しましたか? (ああ)


「ぴゃぁあ」


「はい、二切れ目の巨大貝を食べると中から魔気を放つ石が幾つか出て()たそうです。メイリア神官長様に頼まれて届けに来たみたいですね」


 飛翔(ひしょう)板の上でしゃがみ込んで)たリーシャが、立ち上がり(なが)()う伝えて()る。


否否(いやいや)、一声で其処(そこ)(まで)伝えられないよね!」


 ハンナ様の後ろで控えて()た。(いや)、覗き込んで()たリルミールが突っ込みを入れる。


「うん、(なん)かバルパルが石の入ってるらしき袋を抱えてて、()れに添えて()った伝言を読んだだけだよ」


「ふむ、()の石とやらを見せて(もら)えるかなー?」


「あ、はい! 唯今(ただいま)持って(まい)ります」


「リーシャは袋を開けるだけで良い。私が取り出そう」


(わか)りました」


 タリス皇帝陛下の御前(おんまえ)でリーシャとリーファ様はごそごそと()(なが)ら袋から()の石とやらを取り出して()た。


「うん、石ですねー。だけど多分魔石ですよ! 特性は持ち帰って調べさせないと(わか)らないけれどねー」


此処(ここ)で気力を(そそ)いでは駄目なのでしょうか?」


 (はばか)り無くつい()いてしまうリーシャであるが、誰一人として(とが)めるものは居ない。


「リーシャは石と親和性が高いから意識せずとも気が流れ込まないように、私が石を取り出したのだぞ。魔石に()っては熱を出したり、強い反発を生じたりして危険なんだからな」


「あ、はい、今後共注意(いた)します」


「巨大貝なのですかー?」


「はい陛下、昨日アリア殿下が御視察を()されて()た折りに、出て()た魔落で御座(ござ)います」


「じゃあ体内に魔石を作る性質でも()るのかしらね! それとも普通の貝が砂を飲むみたいに魔石を飲み込んでたのかしらー。だとしたら()の水底には、()れなりに魔石が()るのかも知れないよね!」


()だできた(ばか)りの魔窟(まくつ)()いて()ります。過度の期待はできませんが、伝承が正しければ他にも魔石が見つかるかと存じます」


「え、()れじゃあルトアニアではどうやって魔石を手に入れて()るのですか? ……あ申し訳……」


「良いよー。うん、オーエンス大森林の周辺に点在する魔気溜まり、其処(そこ)を掘ったりとか、昔魔窟だった場所がルトアニアに()って其処(そこ)を探したりするんだよ! ()う、此処(ここ)以外は人がおいそれと簡単に踏み入れられる場所に、魔窟は存在しないんだよー」


「御配慮の上、お答え(いただ)き恐悦至極に存じます」


「うん、構わないよ! リーシャちゃんは色々活躍して(もら)ってるからね!」


「では()の袋は私が持つから、リーシャの小隊は作業所を開けて()()れ」


「了解!」×5

「チュバ」

「ぴゃぁ」


「……()う言えば、バルパルはリーシャ様に(つく)って(もら)った飛翔(ひしょう)板を使わないのかしら?」


「ぴゃあ」


「出して(もら)えないみたいだよ! 神官長が一緒の時じゃないと無くし兼ねないって事かな?」


否否(いやいや)、一声で其処(そこ)(まで)は伝えられないわよ!」


「あはは、ベイミィ! リルミールみたいだよ! ひぃっ!」




---

修正記録 2017-08-01 08:49


ちらちら → ちらりちらり


()れを見て → 少し()れを眺めて


()う、此処(ここ)以外は人がおいそれと簡単に踏み入れられる場所に、魔窟は存在しないんだよー」追加


---

修正記録 2017-08-01 01:20


鉤括弧を変更


「え、()れじゃあルトアニアではどうやって魔石を手に入れて()るのですか? ……あ申し訳……」追加


「良いよー。うん、オーエンス大森林の周辺に点在する魔気溜まり、其処(そこ)を掘ったりとか、昔魔窟だった場所がルトアニアに()って其処(そこ)を探したりするんだよ!」追加


「御配慮の上、お答え(いただ)き恐悦至極に存じます」追加


「うん、構わないよ! リーシャちゃんは色々活躍して(もら)ってるからね!」追加

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