表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
173/345

154若かりし頃

 例えば、()の当時、第一皇女子であるタリス殿下が年端も行かぬ少女(なが)らにやんちゃして、縦令(たとえ)廃屋と(いえど)も家屋敷を()端微(ぱみ)(じん)にすれば、誰かが責任を取らねば()らない。

 言わずもがな、姫様に醜聞(しゅうぶん)残らぬよう()った事自体、全てを被るのである。


 例えば、普段はリーファ様がひっ捕まえて()れるとは()えど、曲がり(なり)にも騎士団長であるのだから四六時中付いては()れないので、専任の近衛(このえ)騎士である3人が駆け回る事に()る訳である。


 当時のタリス殿下は宮殿周りにある森を【瞬間転移】の御業(みわざ)で駆け回り、枝を次々と移ろい()くのだから(たま)ったものではない。

 ()の森は幅が300m以上で周囲10kmに渡る広大な場所と()って()り、一部に遊歩道や管理道を設けて()るものの、()れ以外(ほとん)どが手付かずの(まま)なのである。

 3人が再三に(わた)ってタリス殿下を取り逃がしたとて誰が文句を言えよう。

 ()る時は実験と称して【炭】の粒系因子に火を点けて森の一部を吹き飛ばし、()れをリルトルとライリッテの2人が必死に【水】の御業(みわざ)を駆使して鎮火せしめる事も()った。

 ()る時は空高くに転移して降りれなく()り、マリオンとライリッテの2人が岩に乗って(なん)とか迎えに行けた事も()った。

 時には街へ紛れ込んだタリス殿下が暴走魔落の話を()き付けて、郊外へと物見遊山に出掛けて仕舞(しま)い。慌てて追い掛けた3人が偶然暴走魔落の群れ(・・)出会(でくわ)して、(なん)とか()んとか鎮圧せしめたら、タリス殿下に「私にも残して()いてよー」と苦言を呈されたのは良き思い出だろう。

 結局の(ところ)()の3人も色々と()らかして()るのだが、可也(かなり)の量をタリス皇帝陛下が()らかした事件で占められて()るのは確かの様である。


--


「と()う事で地底湖へは飛翔(ひしょう)板に乗って向かいます」


 リーファ様は一通り説明を終えて息を()く。

 そしてマリオンたち3人の表情に気付き(なに)か言いたくて、うずうずして()たタリス皇帝陛下は説明が終わるや否や途端に口を切る。


「あら、()の様子だとマリオンたちは昔の事を思い出して()るのかしらー。今はリーシャちゃんが(つく)り上げて()れた六角多孔(たこう)飛翔(ひしょう)板が()るから、空へも容易に飛べるけれど昔は飛ぶのも大変だったのよー。()の床の大理石に乗って飛ぶ事を想像したら分かると思うけれど、気力の消費が凄い激しいしのよね! 流石に()の重量だと浮力もへったくれもないからねー」


「はあ……」


 リーシャは()められて若干顔が(ほころ)んで仕舞(しま)うが、マリオン先生の表情と床でてかてか光る大きめの天然大理石を、行き()り浮かせる想像なんてさせられて中途半端な返事をするのは仕方が無い。


()うね、一度、マリオンとライリッテが空(まで)迎えに来て()れた事が()って、()の時はライリッテが岩板を(つく)りマリオンが()れを飛ばしたのよねー」


「……はい」×2


「それで、おかしいのがね! 気力の消費を節約して親和系統に()る干渉を防ぐ(ため)にマリオンが肩車をしちゃって、肩に乗ったライリッテが岩の顕現で消費した気力の回復に努めたのねー。()れを見て私も少しは冷静に()れたのよね! 今思えば()の時、死に物狂いで【大気】の御業(みわざ)を使って落下速度を落とし、【瞬間転移】の御業(みわざ)で高度を維持して()たから【飛翔】の後天御業(みわざ)を授かったのよねー。リーファも頑張って【飛翔】取って()ない? 転移に便利よー」


「いえ、飛翔(ひしょう)板が()れば十分で御座(ござ)います。()れから陛下、2人の若かりし頃の恥ずかしい話を若い騎士たちの前で()さると、居た(たま)れなく()りますので程々にお願い(いた)します」


「えー、騎士が姫を救いに颯爽(さっそう)と現れるなんて御伽噺(おとぎばなし)みたいでしょう? 縦令(たとえ)、肩車をして()たとしてもねー」


「はあ、……()(かく)、リーシャ部材が無くてもできる作業は、()るのか?」


「あ……」

(なに)か知りませんけれど急ぎの部材なら持って()ましたよー。()の魔気動機関開発主任のリザエルって人? 中々()るわねー。今後発注が突然来そうな部材は、多めに作るよう口添えをして()たみたいだよー。午前中の発注も承認が下りる前に製造を開始して(あまつさ)え予備まで作らせたのは如何(いかが)かと思うけれどね!」

「……部材が(そろ)う様なので、降りたら()ぐに作業へ取り掛かります」


(いや)、場合に()っては護衛に加わって(もら)おうと思ってな」


「あら、ちゃんと完成する(まで)待つよー。()の子たちの作業が(とて)(とて)も早いのは知ってるんだから!」


 勿論(もちろん)、リーシャたち4人は(とて)(とて)も重圧が掛かって、顔を強張(こわば)らせ蒼白(そうはく)にして()るのである。



---

修正記録 2017-07-30 10:08


ルビを追加


地底湖には飛翔(ひしょう)板に → 地底湖へは飛翔(ひしょう)板に


岩の飛翔(ひしょう)板が → 六角多孔(たこう)飛翔(ひしょう)板が


「 リーシャは()められて若干顔が(ほころ)んで仕舞(しま)うが、マリオン先生の表情と床でてかてか光る大きめの天然大理石を、行き()り浮かせる想像なんてさせられて中途半端な返事をするのは仕方が無い。」追加

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ