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アリアは知らない  作者: taru
四章 リーシャ編
172/345

153悪鬼の3女傑

前話では時間がなく拙い文になって恥ずかしいです。

今日は少し余裕を(もっ)て執筆に当たりました。

 空には渡り鳥の(ごと)く第一騎士団の飛翔(ひしょう)板中隊が横切って()く。

 地上の警邏(けいら)も同じく()の騎士団が加わり、巡回は(いささ)か増えたと気付くものも居よう。

 今朝の大捕り物である。

 街の住人は午前中に戒厳令が緩められた関係も()って、口の(ゆる)んだ頃合いだろうと顔見知りの騎士を見付けては、興味津々に(こぞ)って事のあらましを()いたものだった。


 そんな事情も()ったのだろうか。

 縦令(たとえ)轟音(ごうおん)が鳴り響き衝撃波に体を震わせても、(つい)間諜(かんちょう)の潜伏先に騎士隊が押し入ったのだと、勝手に信じて疑わない。

 (あまつ)え、「昔はマリオン様って()うはっちゃけた騎士様が、しょっちゅう家屋(ごと)吹き飛ばしちまったもんだぞ。()れに比べりゃ()れくらいへっちゃらでい!」と言い出す始末。

 (なん)たる流言。(なん)たる風評。マリオンは近衛(このえ)騎士だから一般の捕り物などには参加しない(はず)であるが、郊外で暴走魔落を止めるのに40m四方を更地にしたとか、訓練で(たま)に第一騎士団の一個大隊を吹き飛ばして、治療所送りにしたとか()う逸話は存在するらしい。

 ()の時分は城壁の向こうから爆音が時より鳴り響いたりとかして、(うわさ)に拍車を掛けたのだろう。勿論(もちろん)、吹き飛ばされた方々も熱心に(うわさ)吹聴(ふいちょう)して広めたのだろうけれど。


 ハンナ様は皇太后陛下に、どうせ娘は地底湖の物見遊山(ものみゆさん)にでも来たのでしょうと、護衛が足りないのを懸念して送り出されたのである。

 城壁を越えると丁度(ちょうど)皇帝陛下の飛翔(ひしょう)機が着陸した(ところ)で、守護の飛翔(ひしょう)板を駆る近衛(このえ)騎士たちに止められるのは当り前である。素通りさせて()ればイザベラ辺りに苦言を呈して()(ところ)だろう。


「ハンナ様、イザベラ様からの伝言です。3女傑が(そろ)いましたので部下の方には前以(まえもっ)ての心構えをお勧め致しますとの事で御座(ござ)います」


「そんな……今や過去に心的障害を抱えるものの多くが、()れなりの地位に上り詰めてるのですよ。()の様な話を()いただけで腰砕けに()って、使い物に()ら無く()って仕舞(しま)い兼ねませんね……。()(かく)陛下の(もと)へ向かいましょう。貴女(あなた)たちは大丈夫ですよ……ね?」


 ハンナ様が振り向けば既に青い顔と()って()た。地底湖の小隊として選抜したものたちは、信頼できて武芸も立つ()りすぐりで()るものの、本当に信頼できる熟練のものたちは皇太后陛下の御側(おそば)に置いて()()るのだ。

 ()のものたちが見習い騎士の時分には、丁度(ちょうど)悪鬼の3女傑が色々()らかして、()の惨状後を実際に見たり(うわさ)尾鰭(おひれ)が付いた話を()いたりで、見掛けようものなら縮み上がってがくがく震えたものである。

 そして余りの()の存在に3人(そろ)って、ルトアニアへ向かう事を(はばか)ったと()(うわざ)(まで)()るくらいなのだ。


--


 来賓室にはハンナ様の小隊も(そろ)い、普段では中々()り得ない()りすぐりの強者(つわもの)たちが、(つど)(ひし)めき合う場と()って()る。

 まあ、(ひし)めいて()るのは主にタリス皇帝陛下とアリア殿下の周りに、近衛(このえ)騎士が密集して()るのが原因なのだが。

 そんな中にリーシャたちは座らされて()るのだから、緊張も一入(ひとしお)である。特にチェロルなどは一杯一杯(いっぱいいっぱい)であろう。


「ラクス、席が開いて()りますのですから、貴女(あなた)は座っても(よろ)しいのよ」


「――殿下、私にも近衛(このえ)騎士としての矜持(きょうじ)御座(ござ)りまする。何卒(なにとぞ)御理解を頂きたく存じまする――」


 そしてハンナ様の後ろでは顔を(いよいよ)蒼白(そうはく)にした近衛騎士たちと、緊張の面持ちでがちがちに固まったリルミールが立ち尽くして()るのである。


貴女(あなた)たちも座っては如何(いかが)ですか? リルミールはリーファ様からも口添えが()りましたので(わか)りますが、貴女(あなた)たちは意味など無いでしょう?」


「――ハンナ様、長年鍛えて()た足で地に着いて()りますからこそ、()の場に(おい)て冷静さを保てるので御座(ござ)いまする。座って仕舞(しま)ったら猫の腹見せどころでは居られません。何卒(なにとぞ)御理解を頂きたく存じまする――」


 何故(なぜ)かティロットが猫の腹見せと()う言葉の部分で、ぴくりと動揺したかに見えたが気の所為(せい)だろう。

 仕方無い、そんな感じで、ハンナ様は息を吐てから口を開く。


「タリス皇帝陛下、()の度は()の3女傑を(そろ)えて宮殿へも、(おもむ)かれるので御座(ござ)いましょうか?」


「んー、()れでも良いけれど大切なのは、()のリーシャンハイスに3人が(そろ)()ると()う話しが、十分に(うわざ)として広まる事ですよ! ()うすれば騎士らが緊張を(もっ)警邏(けいら)に努めて()れど、やけに騎士が多くて空や地を駆け回って()れど、誰もが勝手に想像(たくま)しくすらすらと説明してくれるのでは無いかな! ()の3人が(なん)仕出(しで)かしはしないかと、何時(いつ)でも後始末できるよう駆け回って()るとか、宮殿に居るのが辛くて皆が警邏(けいら)を理由に逃げ出して、騒動の()った街中に騎士が(あふ)れかえって()るとかね!」


 うん、あれはマリオン先生が(たま)に昔の話とかを語る時に見せる、死んだ魚の様な目だ。隣り合う2人も同じ様な目で()るから、()の3人が3女傑と()われるものたちなのだろうか。

 (ただ)、1人は二十歳そこそこと若過ぎる容姿で()るのだが。


(あい)分かりました。して()の度は矢張(やは)り地底湖へ(おもむ)かれるので御座(ござ)いましょうか? 皇太后陛下には知るものを軽々しく増やせませぬから、いらせられるのでしたら警護に()くよう仰せ付かって()りまする」


「ええ、勿論(もちろん)、参りますよー。()(ため)にも皆の恐怖を顧みず、()の3人が集まるように仕組んだのですから」



---

修正記録 2017-07-30 10:42


修正日を修正 2017-07-28 → 2017-07-29


幾つかのルビを追加


3人が()()る → 3人が(そろ)()


句読点を追加


「 (ただ)、1人は二十歳そこそこと若過ぎる容姿で()るのだが。」追加



---

修正記録 2017-07-29 10:15


省略送り仮名を前述に統一


句読点を変更


知るもの増やせませぬ → 知るものを軽々しく増やせませぬ


仰せつかって → 仰せ付かって

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